"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

20130920 --730

徒に過ぎた時間の分だけ、貴方のぬくもりも遠ざかる。現在も、過去も未来も探したけれど、符丁ひとつ見つけられない。己の無力さに肩を落とすわたしの上を、満月が横切ろうとした。思わず掴もうと手を伸ばす。できやしないのに。だから。代わりに。わたしの…

20130920 --729

降り注ぐ光は差し伸べられた貴女の手のようだ。探し続け、待ち続けた幾年でできた溝を埋め尽くそうと、それは蒼白く寒々しいはずなのに、仄かに暖かみすら感じさせる。己が手で受けようとするも、やはりそれは掴めるものではなかったが。月見て流す涙は、地…

20130919 --728

あの人、わたしと同じように月を見上げてくれるかな。時間の流れが違うほど遠くでなければ、きっと今夜は素敵な満月、祈りを捧げたくなるほどの美しい月。本当はね、一緒に見上げたい。でも、わたし、あの人みたいに上手に世界を捲れなくて会いにいけないん…

20130919 --727

再び文字が盗まれた。「次は何を盗られた?」「わからぬ」「ひふみよ……5文字だな」「5文字!? 先程のも含めると6文字になるぞ!」「ひと度でこれほどの文字を盗めるとは何者の仕業か……」「ここで立ち止まって話しても何も探せぬ。とにかく進むぞ。ひと文字…

20130918 --726

文字が奪われた。何者によってかはわからない。ただ『それがない』ということのみ、その場にいた者達に伝わった。「参ったな」「え? ないと困るのか?」「当たり前だ。生活の折々で支障が出るぞ」「そうか。しょうがない。探しに行くか」かくして奪われた文…

20130906 --725

何も変わらない。求めるものはすべて過去の向こう。交わされたたくさんの言葉の中から、渇望するそれを掬い上げる。そのループ。だが繰り返し故に霞み、劣化していく。満ちることなく指の隙間からぽろぽろと零れ落ちる。耳の奥に残る言葉の数だけ報われる。…

20130814 --724

いいねこの缶詰 #twnovel #twnovel7 posted at 15:49:35 お題は「猫」。

20130722

川から引き上げられた少女は記憶喪失で何処の誰ともわからない。手がかりは唯一覚えているという詞無き歌。村人に請われて少女は歌う。えもいわれぬ旋律に皆心を奪われた。やがて歌い終えた少女は涙した。その歌こそ時止めの歌、聞く者の心を奪い時を止めて…

20130717 --723

笑顔が返る。そしてそれが全てだった。世界が急速に暗転していく。 #twnovel 「……」目を覚ました。頬を涙が伝う。言いようのない寂寥感が胸を支配する。あれは誰の夢だったのか。袖でぐいっと涙を拭った。同時に夢の記憶も拭われる。忘れていく。きっと、そ…

20130717 --722

「ありがとう。……ごめんね」「謝るくらいなら、最初から……」「うん、わかってる」「わかってない! あなたは何もわかってない! 違う、わたしの気持ちなんてどうでもいいの。そうじゃない。そうじゃなくて、あなたは、あなたの気持ちは……っ」「うん」「だっ…

20130717 --721

「やり直せばいい。何度だって生き直せばいい。驚くほど違わなくてもいいじゃない。ちょっとの変化だって。それでも。それでも、少なくともあなたがやり直そうとすることで救われる存在だっているのよ。あなたが1秒でも長く生きていてくれることで、報われる…

20130717 --720

「いっそ、ね。いっそ。最初から。全てなかったことにしてやり直したい。ここまでの道のり全部覆してしまいたい、なんて。願わなかったと言えば嘘になるかな。でもね、きっと、驚くほど違う未来、運命には辿り着けないと思うんだ。わたし、そこまで器用じゃ…

20130708 --719

「おお、罪深き者よ。汝は鍋の熱さを知らぬ。ただ冷えたパスタを知るのみ。居間のエアコンは、彼らのものである」「ただいま〜」「息子よ、いいところに。母さんがまた何か唱えてる……」「晩飯、何?」「暑いから冷製パスタでいいよってリクエストを」「……学…

20130701 --718

片手で傘を差しつつ水無月が来た。もう片方の手には閉じられた傘。月の入り口で雨宿り中の文月の為に持ってきたらしい。「今年の空はなかなかに気まぐれで」水無月は言う。「どこで降られるかわからなくて」それを受けて文月は笑う。「ありがとう。手紙を書…

20130630 --717

宵よいここそこ移りて住まい、宵よい子らと星見上げ。宵よい小枝燃して暖とり、宵よいころころ皆笑う。宵よいこの路続くはどこぞと、宵よい皓々月に問う。宵よいこうして好きずき生きて、宵よい木の葉の傘の下。宵よい今度はいずこに行くか、宵よいこの枝指…

20130624 --716

空には零れ落ちてきそうな満月が出ているらしいが、生憎の曇り空がそれの観測を許さず、あまつさえ雨まで降らせてくる始末。「つまらない」そう言って口を尖らせる君を見て、ふと思いついたことに苦笑する。目敏く見咎めた君が怪訝な顔を向けてくるが怒られ…

20130624 --715

天なる神の裁きに戦く我らは追悔し、うたた叫びをあげて空に問う。あまねく言葉──世界に溢れるそれは、大塊にたなびく旗を追懐し、覇者の名を冠する者に三度請うだろう。愛する者の形見に愚者は追惜すれど、一面に林立する墓石は傾き続ける赤銅色の陽光を無…

20130621 --714

その『意識』は、運命の大樹の枝先まであとひと節という場所に生まれた。結末という名の、枝先に生る実を掴むまでの距離はほんの僅か。選択できる事象も無いに等しい。彼らは、驚くべきことに、踵を返して枝を戻り始めた。どうしても諸事の始原を確かめなけ…

20130621 --713

その『意識』は、運命の大樹の、枝先まであとひと節という場所に生まれた。結末──枝先に生る果実を掴むまでの距離はほんの僅か。選択できる事象も無いに等しい。それでも彼らは進んだ。たとえ幼子が吹くしゃぼん玉ほどの刹那の時だとしても、見届けたいもの…

20130617 --712

「素麺を食べるだけの人は幸いである。彼らは茹でる時の暑さを知らない。ただ冷たい麺を冷たい汁につけ、食べるだけである」「お、おい、鍋の前で母さんが何か諳んじ出したぞ」「わかんねえのかよ、父ちゃん。あれは父ちゃんが『今日は暑いから素麺でいいや…

20130615 --711

暗い店のそこかしこで男達が横に座る女達に迫る。「この位いいだろ、金払ってんだから」「こんなに愛してるのにわかってくれないのか。確かに俺は無職だけど」「仕事終わるまで待ってる。君、どこ住み? 送ってくよ」そんな男達に笑顔で応える着飾った女達の…

20130614 --710

カップを覗くと、コーヒーとミルクが交互にぐるぐると渦を巻いている。やがて境界線は混ざり、溶け合い、新たな色に変わっていく。「わたし達みたいよね」唐突の呟きに隣で読書中の貴方が不思議そうに視線をこちらに向けた。わたしは笑って言う。「これから…

20130614 --709

気がつけばそこは始まりの場所。散々迷ってあちこちに行けども、結局はここに戻ってくる。どんなに足掻いてもどこにも辿り着けないのなら、最初から動かなければいい。動くだけ無駄じゃないか。だが。しかし。そう思いつつも、どうしても、歩き出す。手を伸…

20130607 --708

桜の勢い、いよいよ北端に辿り着き、それと時を同じくして、皐月が去り行く、春を連れて。「また来年、綺麗な花が咲きますように。祈りの言葉を木々に宿らせましょう」そう言い残し。水無月はそれを見て、入れ違うように夏と来る。その足もとを彩る紫陽花に…

20130514 --707

迷えば失い、惑えば飲み込まれる。そこには普遍的な正しさなどなく、強引にでも掴み取り、躊躇なく辿り着いた者だけに絶対の選択の中から望むものを得るチャンスが与えられる。そう、与えられるのはチャンスのみなのだ。最後の最後まで全ては不確定。運命は…

20130513 --706

あなたの歌を聞いて元気が出ましたって言われることがある。でもね、きっと、元々その人の中に『元気になりたい』っていう願いがあって。それが歌を切欠に表面に出てくるんじゃないかしら。あ、もちろんそう言われることが嫌じゃないの。逆よ、逆。とても嬉…

20130505 --705

卯月が皐月に襷を託す。儚い花の咲くのを添えて。「今年は少し、暖かくなるのに時間がかかるかもしれない」と卯月が言えば「でもきっと遅れた分だけ素敵な季節になるはずよ」そう言って皐月は朗らかに笑う。とはいえ暦はもうすぐ夏。北方も早く過ごしやすく…

20130425 --704

それは命を賭してまで叶えるべき願いではない、と? 何を言うか。それに如何なる価値があるかを定めるは汝ではなく我なり。理解できぬのなら口を噤んで下がっているがいい。笑いたければ我が消え去りし後に高らかに嘲りたまえ。存分にな。ただ今は、どうか今…

20130425 --703

明確な目的地も定まらぬまま、徒に時間は過ぎ、歩く距離ばかりが増えていく。登るは険峻、降るは峡谷、往くは永久なる運命の枝。あとどれだけ進めば、望むものに手が届くのだろうか。あとどれだけ進めば、かの者の髪の先を、この手で掴めるのだろうか。風に…

20130412 --702

時間魔法か。多少なら使える。だが、あの『時の魔女』のように誰かを今と違う特定の時間に送るなどといった緻密なことはできない。周到な準備をすれば別だが、咄嗟にできるのはせいぜい自分の手の届く範囲の時間を操る程度だ。時間軸を飛ぶには力が足りぬ。…