"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

20091001 --13

「でも」炬燵は言う。「今年床暖房になったってことは、電熱絨毯の出番はあれ1回きりか」溜飲が下がった面持ちで炬燵は満足そうだ。しかしその満足も蜜柑の言葉で掻き消される。「いや、2階はまだ床暖房じゃないから電熱絨毯は現役で使ってもらえてるよ」 #t…

20091001 --12

去年、俺の下に突然電熱絨毯の奴がやってきた。あいつは容赦なく俺の脚を炙った。俺は意味もわからずその拷問に耐えた。なのに俺はスイッチを入れてもらえなかった。奥方が「炬燵ついてると上の蜜柑がすぐ悪くなるのよ」とご主人に言っていたのを思い出した…

20091001 --11

炬燵は叫んだ。「よっしゃ! 冬だ! 俺の時代! 燃えるぜえ! 真っ赤に燃えるぜえ!」しかし設置された炬燵、一向にスイッチを入れてもらえず困惑する。天板に乗る蜜柑はそんな炬燵に言った。「この家、今年から床暖房になったんだ」炬燵の気迫は空回りに終…

20090930 --10

一人、炬燵に入って蜜柑の皮を剥く。(そういや昔はばあちゃんがチラシでゴミ入れ作ってたな。カブトに似た折り方で)手近の紙で折ってみるも途中までしか思い出せず、むうと唸りつつ背後のゴミ箱に捨てた。今年は実家に帰るか。ばあちゃん達と紅白見ながら…

20090930 --9

二人の守護者が連邦図書館の壁に貼られた新聞の前から立ち去る。数瞬置き、黒のワンピースを身に纏う長い金髪の少女が、本を抱えながらその場にやってきた。壁の新聞を見やり、「『全てから守る』。ロジェ様も十分情熱的ですのに」呟き、ふわりと笑った。守…

20090930 --8

《独りにはさせぬ……》「ふむ、センの『I love youを己の言葉で意訳せよ』はそれか。お前ってなかなか情熱的なんだな」いつの間にか肩に乗っているロジェの手を払い、センは溜め息混じりに言った。「人の心を勝手に読むな。接触読心能力者」「気にすんな。飲…

20090929 --7

大奏正が操る笛は、普段は「雨笛」と呼ばれているが、正しくは「篠つく雨笛」と言う。調廷の初代奏皇がこの地を奏神より与えられた際、最初に踏み入れた地にて光る竹を見つけ、それを以て作らせた。一息吹けば激しい雨を呼ぶ。また、邪悪なるものを洗い流す…

20090928 --6

しばし文章を書く世界から離れていたせいだろうか、日記を書いてもレポを書いても何を書いても自分の文章の崩れが気に食わなくて仕方がなかった。何気なくtwitterを始め、 #twnovel に出会い、追いかけている内にその奥深さを知り、触発される物が得られたの…

20090927 --5

初めて体を売ったのは十歳の時。さる金持ちが好みの瞳の色だから売ってくれと親に大金を積んだから。体が持つ情報全てをDBに登録し、待つこと一時間。わたしの前には一対の瞳が置かれた。バイバイわたしの瞳(コピー)。そういえばあの瞳、何年使ってもらえ…

20090926 --4

月光路。月輝く夜、ごく稀に月と海を光の道が繋ぐ。月界の船が月とこの世界とを行き来する時に顕れるらしい。今宵、上弦の月よりのびたる光に乗り、一艘の船がゆぅらり下りてきた。村外れの入り江でそれを見た青年は後に語る。まさか己がその船で月に向かう…

20090926 --3

影に気をつけられよ。特に新月の夜、雲一つ無き星界の光にて伸びる影に。影の中より出でし腕に掴まれたら最後、常夜国まで一直線。二度と人としてこの世に戻れぬ。なに? 何故儂がそれを知り得たか、と? 常夜国に堕ちた者の末を知れば分かる。さあ来るが良…

20090925 --2

「狂弦曰く、奏都では相手にならぬ。大奏正を連れて来い、と」伝令の青ざめた顔が現場の壮絶さを物語る。近頃都を騒がす、文字通り不協和音にて人を殺める狂弦の頻出は奏院の奥におわす弦皇の耳にも届く大事に発展していた。伝令の言葉を受け、大奏正は傍ら…

20090925 --1

川で助けられた少女には記憶が殆どなかった。唯一覚えていたのは詞無き歌。空に溶け風誘うように響く旋律に、皆心奪われ聞き入った。歌い終え、少女は涙した。聞く者全てが息絶えていたのだ。少女が唯一覚えていた歌こそ、時止めの歌。聞く者の時を止め死を…