"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

20120912 --581

(……ああ、違う。言い訳なのだ。これも。結局は。綺麗事をいくら並べ立てようとも、根本的な部分にあるのはただの強くて単純な衝動だ。わたしは、ただ、あの人の顔が見たい。声が聞きたい。触れたいのだ。過去に行くことで、もう一度あの人を失うことになっ…

20120912 --580

ただ、過去に戻り、そこで何が起きていたかを見れば、もしかしたら抱えていく過去の重さを変えられるかもしれません。そういう意味では過去に戻ることは有意と言えるでしょう。……お願いします。連れて行ってください。わたしを、あの時、何があったのか確か…

20120912 --579

あなたはおっしゃった。これは絶対ではなくチャンスだ、と。やり直してもいいしやり直さなくてもいい、と。時間を自在に操る強大な力を持つあなた自身が、なのに、やり直しを選んでいない。それは、過去に戻ることが本当の意味でのやり直しではないと知って…

20120912 --578

いいえ、違います。それはやり直しではありません。たとえ過去に戻っても、それはその過去から続く未来が変わるだけで『今ここにいるわたし』には繋がらないのです。『わたし』の過去は既に確定しています。耐え難い過去だとしても、わたしは抱えて先に進ま…

20120903 --ボツ

いいえ。それは違います。過去は変えられません。たとえわたしが過去に戻って納得のいく結果を得たとしても、それはやり直しではありません。変えてしまった過去の先に、今ここにいるわたしはいないのです。でも、過去を見直すことで、納得して先に進むこと…

20120903 --577

わたしがここに、この瞬間に来たということは、絶望するあなたにやり直すチャンスが生まれたということ。ただね、これはチャンスであって絶対ではないの。やり直してもいいし、やり直さなくてもいい。辛い過去を抱えたまま生きるか、違う過去に上書きして生…

20120901 --576

来たか、九月。豊穣の女神に愛された月よ。熱狂の八月の次にやってきたお前から、爽やかな風が吹くことを期待しているよ。 #twnovelposted at 01:03:58

20120901 --575

蒼い月の下。海沿いの道の上。黒騎は、その歩を止めた。優しい潮騒に混じって、音ならぬ音、歌ならぬ歌が聞こえたからである。ほんの僅か、よくよく耳を澄まさねば捉えられそうにないそれは、しかし何らかの形を成す前に空に溶けていく。まるで手を伸べたと…

20120831 --574

蒼い月の下 くるくる踊る 波打ち際を 風と遊ぶ さあ歌いましょう 踊りましょう わたしを探すあの人に わたしが探すあの人に 同じ月の光が 同じ風の歌が 降り注ぎますように 届きますように 見つけられますように 蒼い月の下 くるくる踊る いつか聞いた あの…

20120814 --573

影よ、何故逃げる。何も取って食おうというわけじゃない。一度でいいから、お前に触れてみたいのだ。そら、もう手が触r――。――いけません、いけません、わたしに触れてはなりません。あなたが怖いからではありません。わたしに触れたらあなたは……あああっ。 …

20120814 --572

壁に映る己が影に遠き昔離ればなれになったあなたの面影を見た。懐かしき思いが暫し、しかしそれもすぐになかなか辿り着けぬ故の焦燥に取って代わる。窓辺から今宵偶然連なった三つ星を見上げ、僅かな期待を込めて祈る。愛しきあなたの、その傍らに、いつか―…

20120814 --571

彼の地より来たる、琴爪弾く吟遊詩人あり。浪々奏で蕩々歌う。目を瞠りしは其が影なり。歌に合わせて形変え、或る時は英雄が剣を振り、また或る時は男女の恋を悲しく物語る。まこと面白きものなりと、噂忽ち風に乗り、四方八方普く方角より人を呼び寄せた。 …

20120731 --570

往くか、七月よ。悲嘆と歓喜と熱狂を、世界中に降り注いだ七月よ。 #twnovelposted at 23:18:53

20120714 --569

思いは、地上に届かない花火の燃え残りのように。 #twnvday #twnovelposted at 23:35:10 今月のお題は「花火」でした。

20120701 --568

六月よ、いくら梅雨の季節だからといって、台風を連れてくるのは如何なる意図あってのことか。末日に夏越しの祓えで茅の輪をくぐり厄を祓ってみたが、はてさて今年後半、どうなるだろうな。前半ほどの波乱万丈はない、と切に願いたい。お、行くか。引き止め…

20120618 --567

村では憎悪怨嗟を忌み子に集め、延々虐げることで集めたものを子の中で純化させた。純化したものが子の体から溢れるかというところで都に献上。献上された忌み子は術を施された後、人柱として都の重要拠点に生きたまま埋められたという。「そう、今あんたが…

20120614 --566

お遣いからの帰り道。突然ざんざか雨の降る。古い社の軒下で暫くいさせて下さいと挨拶済ませて待ちぼうけ。いつの間にやらお隣に二本の足で立つ狐。おやもしかしてと包みからお揚げを一つ差し出すと、コンと一鳴きドロンと消えた。おやおや空を見上げると、…

20120614 --565

僕が生まれる前から家にいた猫のチビが今朝から姿を見せない。お母さんは、もう二十年も生きた子だから死期を悟って出てったのかもと寂しそうに言った。実は僕、昨日の夜、窓越しに機嫌良く歩く猫を見たんだ。チビに良く似た、ううん、きっとチビなんだけど…

20120612--564

霊子による発電の研究が進むと、発電量の増加をテーマにする企業や機関が多数現われた。代わりに、前時代から続いていた充電量や自然放電による減少を如何に抑えるかという電力の保管に関する研究はあまり重要視されなくなっていった。(『霊子力発電研究史…

20120612--563

祖父は朝から発電所にいる。発電所といっても、先日訪れた海のそばに建つあの建物群ではなく、街中にあるビルの一フロアだ。機械とケーブルで繋がったポータブルの血圧計で使うようなバンドを左上腕に巻いて半日程ベッドの上にいるだけで、この街なら約十日…

20120612--562

『ヤギやヒツジ、サルのクローンには魂が宿ったが、人間のクローンには魂が宿らなかった。』(──研究所の実験室の片隅に隠すようにしまわれていた、表紙に『極秘』『持出厳禁』の赤字印が捺してあるぶ厚いレポート。作成者の名前は、水でもかぶったのか滲ん…

20120610--561

『霊子は魂核のフォンテム機関より生じて魂体を満たす。マーキングした霊子の動きをトレースしてみたが、ある程度魂体を巡ったところでロストした。存在維持用のエネルギーを放出し切った霊子は機関に循環せずに消失するのが確認された。』(ヤマノフ博士の…

20120610--560

『魂は存在維持の為に霊子を生み出し続ける。何かを生み出すには相応の材料が必要なはずなのだが、不思議なことに霊子の器である魂の外殻はその霊子すら通り抜けられない構造体で形成されており、何かを吸収できるようにはなっていない。』(ヤマノフ博士の…

20120608 --559

『霊子力』。魂が存在維持の為に作り出すエネルギーをそう呼び出したのが誰かは、いかなる資料をあたっても見出すことができなかった。ただ、単細胞のような存在と言われてきた魂が実は計測できるギリギリの単位ほど細かい粒子の集まりだとわかってから言わ…

20120608 --558

文明を維持発展させる為に必要なエネルギーを生み出そうと様々な資源を食い続けた人類が大きなエネルギーを必要とした時にその手に掴んだ原子の力は、それが生み出すエネルギーの大きさも然ることながら、ひと度トラブルが起こった場合のリスクの大きさもこ…

20120608 --557

『魂』が科学的に証明されて早数十年。特殊なフィルターがなければ目視もかなわぬそれが莫大なエネルギーを持っていると知ると、人類はそのエネルギーの抽出法、現存システムへの編成術(編成不可能な場合は現存システムを変更しなければならないのでその対…

20120608 --556

海の近くにあるその建物群は『発電所』というらしい。夕方になって祖父の家に戻ると、僕は旧式の壁掛け端末を使って早速調べてみた。「発電所……。昔は、電気をあんな大きな建物で作ってたの?」「ああ、そうだよ。昔はあのくらい大きな建物じゃなければ、電…

20120608 --555

賑やかな街中を抜けると段々と家も店もなくなっていった。多忙な両親の許から祖父の家に預けられたその日、僕は祖父と海の近くに来てみた。そこには古い、錆びた鉄塔やあちこち崩れ落ちている大きな建物が散在していた。「おじいちゃんがまだお前くらいの時…