"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

20111231 --495

ジェーニャは薪ストーブの空気口を閉じて火を消し、外出の準備を始めました。あとは帽子をかぶればいいというところで、玄関のほうから騒がしい声が聞こえてきたなと思う間もなく激しくドアがノックされました。「ジェーニャ! ジェーニャ、いる!? いたら…

20111231 --494

火の始末と戸締りにだけ気をつけてくれれば遊びに出ても構わないからねとジェーニャに言い残して、お母さんは出かけました。「困ったなぁ」今日はお母さんの役に立とうと決めていたのに。「……ツリーのところに行こうかな。おじさん達が片づけているはず。そ…

20111228 --493

朝食の片づけをしていると遠くで歓声が上がりました。星飾りが落ちたのでしょう。(ほらね、僕じゃなかった)とその時、来客の対応をしていたお母さんが慌てた様子で外出の用意を始めました。「急な注文が入って工場の人手が足りないそうなのよ。母さん今か…

20111221 --492

「ジェーニャ、広場に行きましょ」近所のナフカがジェーニャを迎えにきましたが、ジェーニャは食卓の上に朝食用のお皿を並べながら首を横に振ります。「僕は行かないよ、ナフカ。今日は、お母さんの手伝いをするって決めたんだ。でも、誘ってくれてありがと…

20111221 --491

夜明けと呼ぶにはまだ暗い空の下。子供達が次々と起き始めます。着替えると朝食も食べずに家から飛び出し、目的地に向かって走ります。勿論、目指しているのは中央広場のツリーです。そこここの家から同様に出てきた子供達とかけ合う「おはよう」の声が、街…

20111220 --490

(そうだ。明日は起きたらお母さんの手伝いをしよう。そのほうがきっとお母さんも嬉しいに違いない。うん、そうしよう)緩やかに忍び寄る眠気に身を任せながら、ジェーニャは起きてからのことをぼんやりと考えました。(ずっと働きづめだったお母さんの役に…

20111214 --489

夜、ジェーニャはベッドの中から窓越しに空を見上げました。今夜は雲も風もなく、冷たい空気のせいもあって、星々が一層美しく輝いています。(僕のところにお星様は落ちてこないさ。だってこの一年、それだけの事をしてないもの。お頭に明日も新聞配達しま…

20111214 --488

目を覚ませばそこは葉も花もなき大樹の根元。嗚呼。またここに戻ってきてしまった。全ての源、運命の振り出し。再び手に握られし賽は如何なる差異を齎すのか。恐れずに、絶望すら飲み込んで再度進み出せる者は幸いだ。そういう者だけが望む場所、願いに手が…

20111213 --487

「……今年はスコーチャだろうねぇ」話し合いの最後に出てくるのは決まってその名前でした。三月にあった大火事の時に、いつもは悪戯で使っているという抜け道を使って、炎に囲まれた病院から大勢の人を逃がした男の子です(もちろん悪戯についてはしっかりお…

20111211 --486

雲間の月光がまだらに地面を染める。馬上で月を見上げる男が時折漏らす鬼気を、注意深く観察する。いっそ狂気に流されたほうが楽だと彼はここに来る途中で言った。彼をしてそう言わしめる苦痛とは。想像だにできない何かを抱えている彼を、少し離れたところ…

20111210 --485

じわりじわりと、影が月を蝕む。それは心底の奥の奥に眠る、本来の彼を象徴するかのような狂気を揺さぶる。何度これに耐えてきたかはもう数えようがない。が、何度耐えてきても一向に慣れない。毎回ぎりぎりのところで耐えている。──センは雲の間から顔を出…

20111207 --484

貴女がいなければ、息もできない。 #twnovelposted at 22:02:46

20111205 --483

風の強い夜だった。どこかにオカリナでも吹く誰かがいるのか、物悲しげな旋律が聞こえてくる。いつまでも鳴り止まないのを不思議に思い夕餉の後に宿の主に尋ねると、あれは山の中腹にある笛岩という幾つか穴の開いた大岩にこの時期特有の強風が吹きつけるこ…

20111204 --482

天も地も遥か彼方。星のまたたきすら阻まれ届かない、それほどの風の奔流。その中を漂う。流れる。川をくだる一葉のように、ひと時たりとも留まらず、ただひたすらに流されていく。来し方行く末もわからないようなそこで、『彼女』は、誰に聞かせようとして…

20111204 --481

ロジェは黒衣の騎士の依頼を聞いた。「──以上だ。可能か?」「……ああ」内容を心の内で反復した後、答える。「その依頼、俺の全ての力を以って必ず遂行しよう」その返事に黒衣の騎士は頷いた。「宜しく頼む。しかして、報酬だが」そう言うと彼は手を差し出し…

20111130 --480

「あれだな、『マジすか』と『ミニスカ』って似てるよな」「唐突だな、おい。でもそれ『すか』しか合ってねえじゃねえか」「そして用法の例は……」「おい突っ込みはスルーか」「……よし、これだ。うん。用法の例として『今日はーマジスカートだしー』を提示し…