"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

20130118 --651

お前さんが生まれ育った国、そうそう、西方のあの大国な。つい先日王様が亡くなって、王太子の、長男だっけ? 王位を継承したんだと。だけど、まあひどい悪政っぷりで、見る間に国力落としてるって噂がな、昨日うちに来た行商が伝えてくれたんだよ。っておい…

20130118 --650

やっちゃったと思った。無意識に人の心を読むのは悪い癖だ。シスターにも何度そのことで叱られたか。ああ、またいつも通り、気味悪がられて避けられてしまうのかな。「んなことねえよ」いつの間にか肩に置かれていた大きな手が離れた。「読まれないよう俺が…

20130118 --649

どうでもいい噂と、いい噂、悪い噂があるとする。伝達速度を比べると、どうでもいい噂は遅い。そしていい噂と悪い噂は速い。更にそのどちらが速いかってぇと、やはり悪いほうに軍配が上がる。理由は容易に想像できるわな。……おう、察しが良いのは助かるよ。…

20130114 --648

「足手まとい、ですか」俺のあとに続く幼子がポツリと呟いた。おい、俺は声に出して言ってねえぞ。「すみません、迷惑ですよね、わたし」振り返る。世の画家達が見たら思わず筆をとるに違いないと思わせるほどの、見事なしょんぼりとした表情の幼子が立って…

20130114 --647

「大人しくしろ!」「難しいです」「何故だ!?」「僕、子供ですし……。大人らしくは難しいです」「ちがーう! 大人しくだ! お! と! な! し! く! ああもう大人しくしろって!」「さっきから駄々こねて叫んでいる大人の貴方のほうが子供みたいです」 #tw…

20130105 --646

歩み寄る幼子に冷徹な視線を落とす。師匠は何故斯様な足手まといにしかならぬ者を連れて行けと命じられたのか。幼子が無垢な目でこちらを見返す。苦手、なのだ。自分のこれまでを見透かされているようで。……ああ、そういうことか。「つまりこれも修行の内っ…

20121231 --645

お、出発の準備ができたか。今年のすべてをまとめ上げるのは大変だっただろう。まあそんなに長くはないが、時間までここで休むといい。今年はどんな年だった? 良かったかね? 悪かったかね? ……答えは来年に託す、か。うまいことを言うな。ふむ、じゃ、さよ…

20121231 --644

ボクの本能欲望煩悩♪ ボケて本当浴場Oh No♪ 夜中に鳴るのは鐘108つ♪ おなかが鳴るからカレーナンいくつ?♪ 積み上げられたの鏡餅♪ 罪挙げられたの鏡持ち♪ 嬉しくなるのはお年玉♪ 嬉しくないのはオトシマエ♪ 最後に一言来年も宜しくそうしてボクは布団敷く♪ #…

20121225 --643

ジェーニャはスコーチャが持つ星飾りを見ました。そしてにっこりと笑って言いました。「とびっきりの、素敵な贈り物をありがとう!」星飾りはお日様の光を受けて、まるでウィンクするかのように、キラッと輝きました。 『精霊の贈り物』おしまい #twnovel po…

20121225 --642

サンタが運んでくるのはプレゼントのはずだった。しかし今、彼らが見上げる空から降ってくるのはプレゼンの資料。何事かが打ち出された連続紙がまるで某妖怪のように優雅に風と踊っている。サンタじゃなかった。あれは。サタンのような笑みを浮かべた、無慈…

20121224 --641

構わん。わしはサンタじゃ。世界中のいたるところにいる子供にプレゼントを配るのが宿命。たとえこの身が消滅しようとも、大人達の心に『サンタ』は宿る。何を躊躇う必要があろうか。さあ、わしの願いを叶えよ! それがサンタであるわしに対する、神が齎すべ…

20121224 --640

周りで聞いていた複数の子供から次々に同意の声があがりました。大人達も頷いて言いました。「みんな知っていたよ。口にこそ出さなかったが、ジェーニャが寂しい気持ちを抑えて、遊びたい気持ちも堪えて、泣き言も漏らさずにいたことを。精霊はそれをお見逃…

20121223 --639

今日、地球最後のサンタが死んだ。 #twnovel posted at 23:49:39

20121223 --638

「そしてそのきっかけを作ったジェーニャは、お父様が海で行方不明になってから今日まで、一生懸命にお母様のお手伝いをしてきたわ。朝の新聞配達をやって家計を助けてもいたよね。それは確かに人助けみたいな目立つことではないけれど、わたしはえらいな、…

20121222 --637

「お星様は、ふたりのことをちゃんと見ていたのね」と話に入ってきたのはこれまで黙って聞いていたナフカでした。ジェーニャとスコーチャは意味がわからず、首をかしげました。「勇気を出してスコーチャは病院からたくさんの人を救い出した。これはもう、誰…

20121221 --636

「実際に勇気を出して助けたのはスコーチャだ。だから、お星様はスコーチャのものだよ」それを聞いたスコーチャは今にも泣きそうです。ジェーニャは困ったように笑いました。「でも、言ってくれてありがとう。それを聞いて、僕はやっぱりスコーチャがもらっ…

20121220 --635

それを聞いて周囲もジェーニャも驚きました。驚きつつもジェーニャはゆっくり首を横に振りました。「ううん。それを言ったら僕だって同じようなものだよ、スコーチャ。あの抜け道の前で思いついたはいいものの、怖くて怖くて。迷ってた時に君が来たんだ。そ…

20121219 --634

「本当は……、ジェーニャ、本当は、これは君がもらうべきものじゃないのかい? 僕じゃなく。だって僕は、君が抜け道から助けにいこうとしたのを止めて代わりに行ったに過ぎない。あの時、抜け道の入り口で君を見つけなかったら、僕は病院に助けになんていかず…

20121218 --633

カーテン越しに太陽光が射す。鳥の鳴き声が聞こえる。朝だ。やっと目が覚めたのだ。長い時間が経ったかに思えたが、しかしそれも一晩の夢に過ぎないというわけか。苦笑する。床に落ちている原稿用紙に気づくと、その苦笑は凍りついた。そこに書かれていたの…

20121218 --632

花瓶で強かに殴られても目を覚まさなかったのだ。これが成功するとも限らない。が、このまま夢の世界を無為に彷徨い続けるよりは。黒い軸を逆手に持ち、ペン先を勢いよく左手の親指、指先と爪の間に差し込んだ。かつて経験したことのない痛みに絶叫が迸る。…

20121218 --631

騙されるな、とは。数々の夢から目覚め、あるいは迷い込んだその最奥にうずくまる自分達から言われたあの言葉。「終わらない夢」本当か? 本当に終わらないのか? 朝が来れば目が覚める。己の声に目を覚ます。痛みで目を覚ます。──痛み? その時視界に入った…

20121218 --630

それが自分だと気づくまで数秒もかからなかった。思い出した。確か、原稿用紙に気をとられて誰かに殴られたんだ。あれは自分だったのか。ん? どうして忘れていた? 違和感。まさか、ここが綻びか? 倒れた自分を横目に原稿用紙を手にする。書かれていたのは…

20121218 --629

散々走って自室に戻ってきた。あの原稿用紙にヒントがある。覚めない夢から覚める方法が書いてある。数回前の目覚めの時に記したはずのそれを確かめる為に、やっとここまで戻ってきた。ドアを開けると誰かが原稿用紙に近づく。やめろっ。思わず足もとにあっ…

20121218 --628

床の冷たさが不快で目が覚めた。真っ暗な部屋だ。だが匂いでわかる。ここは自室。うう、痛い……。まだ頭が痛い。誰かに殴られたあと、そのまま放置されたようだな。殴られた場所をひとさすりして、這うように壁に向かい、明かりのスイッチを入れた。案の定机…

20121218 --627

ところが、おめでとうと言われたにも関わらず、スコーチャは浮かない顔です。「どうしたの? スコーチャ。お星様もらえたのに嬉しくないのかい?」思わぬ反応にジェーニャはきょとんとして、そう尋ねました。ぎゅっと口の結んだスコーチャは、しばらく黙った…

20121217 --626

「お前が目を覚まさない限り、わたし達は増え続け、これも増え続ける」一人が遺体を指差し言った。「そして、わかっているだろうけど、これも夢。終わらないかもしれない夢。気づけなければ延々深みに嵌まり、やがてループする。綻びを作れ。そしてそこから…

20121217 --625

「ジェーニャ」ひしと抱き合う親子に近づく、背の高い少年がいました。その両腕に大きな星飾りを抱えています。スコーチャでした。「ああ、おめでとう、スコーチャ。……やっぱり、スコーチャが星飾りをもらったんだね」お父さんから離れたジェーニャは涙を拭…

20121217 --624

倉庫の片隅に小さく、息を潜めて座る。周囲を見渡せば俯いているたくさんの人達が同じように座り、その各々の側に大きな布に巻かれた何かが横たわっている。遺体だ。俯いている人をよくよく見れば、それが自分だとわかる。全員自分。では恐らくあの布の中に…

20121217 --623

階段を駆け上がっていた。遠くに誰かの悲鳴。息を切らしつつ最後の一段を上り終えた自分が見たのは、今まさに倒れそうになっている自分だった。必死に腕を伸ばす。何とかその肩を捉えた、その瞬間、ばちんと静電気でも起きたかのような音と痛みが指先に走る…

20121216 --622

廊下を歩いていた。あと数歩で自室というところで、その自室から上がる悲鳴のような声に驚く。聞き覚えのある──というか自分の声ではないか。駆け寄ろうと一歩踏み出したら急激な眠気に襲われふらついた。刹那、誰かが自分を支える。それが誰かを確かめる間…