"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

misc

20150311

頑張ろう? 何をだよ。大変だったね? 今も大変だ。これからどうするの? 俺が聞きたいわ。辛いのはあなただけじゃない? 言われるまでもない。あなたのそばにいるよ? は? 俺のそばにいてどうすんだよ。こうやって言葉を交わしていたい? なんで、なんでそ…

20150310 --785

表示試験は成功だ。たった一文字。たった一文字だが、それは『彼女』が自発的に発した言葉であった。よし。私の理論は間違っていなかった。プログラムとマシンのスペックはこれから如何様にも改善の余地があり、また新たな技術が補強してくれるはず。いける…

20150310 --784

《お》 #twnovel posted at 02:43:08

20141029 --775

「運命とは変えるものか、従うものか、逆らうものか、任せるものか。お前は、どれを選ぶ?」やけに大きく見える満月を背に、男が右手を差し出す。恐らく、この手を掴んだ瞬間から、動き出すのだ。ひとつしかないと思われた先が実はひとつではなく、無限に存…

20140607 --768

かの者は過去を糧に立つという。己がこれまで歩んできた枝に咲く花、実る何某を確かめ自信へと変える。たとえば、人は高く跳ぼうとする時、自然踏み込みを深くする。それと同じように、より強く立つ為に深く過去を浚う必要が(それが多大な痛みを伴なうとし…

20140604 --767

注連縄の手前で術師は忌々しそうにそれを見上げた。『向こう側』では封印札を全身に貼られた者が、壁に四肢を打ちつけられている。「何か用かね」壁の者は自身の状況など全く気にしていないといった風情で、いっそ楽しげに訊いてきた。「適応者──生贄でも、…

20140318 --760

「『ほう』ってなんだ?」本を開き、覚えて間もないという文字を指でなぞりつつ音読していたソレが問うてきた。「ほう? ああ、法か。人が集団で円滑に生活する為に作った約束みたいなもんだ」「生活の為の約束? なんと、人という生き物は約束がないと生き…

20131127 --743

ふと、キー打つ手をとめ、椅子から立ち上がった。静まりかえる夜の谷間、そっとベランダに出る。深呼吸をして肺の中の空気を入れ替えた。ひんやりとしたそれは体の隅々まで行き渡り、そしてこごった心すら濯ぐ。軽く伸びつつ空を見上げれば、火星を従えた月…

20131115 --742

「みかんくれ」 こたつのかどで わがこたつ #twnvday #twnovel posted at 00:21:19

20131115 --741

暗赤色の瞳が闇に浮かぶ。四本の足が周りを囲み、柔らかい体皮が覆い被さるように長く垂れていた。古くから住む妖怪で、主に人間を餌とする。魂まで抜き取る様子から土地の者は「魂脱」と呼び恐れていたが、調査した学者の聞き間違いから「こたつ」として世…

20131111 --740

時間の魔女よ。あなたは何故ここにやってきた? 運命という名の神の御手によるものか、はたまた己の意志か。時の流れの前に無力な俺を笑いにでもきたのか。大河の奔流にただその身を任せるしか術のない枯れ葉のような俺を。そんな目をするな。憐れむような、…

20131106 --739

気がつけば東の空がうっすら明るい。窓越しの夜空では星がその明かりを徐々に落とし始めていた。何だか寝つけないからと本を読み進めていたら夢中になってしまいこんな時間だ。苦笑しながらしおりを挟んで本を閉じ、ランプの火を消し、毛布の海に潜り込む。…

20131024 --737

みんな失くした。気づけばこの手は何も掴んじゃいなかった。それを見て当たり前よと君は言った。自分から離れていったでしょう。恋人から、家族から、友達から、仲間から、世界から。そして貴方は一人になった、と。じゃあ君は何故そこにいるの? わたし? …

20131023 --736

この世界を滅ぼせと仰るなら、私は迷わず受けましょう。この世界を守れと仰るなら、私は喜んで受けましょう。この世界を愛せと仰るなら、私は暫し悩むでしょう。貴方以上に愛せるものなどないのですから。そして思いつきます。ああ、貴方ごと世界を愛せば良…

20131021 --735

蓮の花びらを一枚、二枚。めくる手が震えているのは、花の奥にある世界を思ってか。しかし決めたのだ。もう戻らぬ場所ならば、思いを残す者もなし、ただあるのは、我を虐げた小さな世界。さようなら、さようなら、わたしを愛さなかった世界。わたしが愛せな…

20131011 --734

巨大な柱に対して男は無言で斧を振るう。あと少し。あと少しでこの柱も倒れる。世界を支える十二の柱、最後の一柱が眼前のこれだ。全てに絶望した時、悪魔が彼の元に現われ、斧と柱のある場所を示す地図を渡した。ただし、それをどうこうするのも自由だ、と…

20131009 --733

世界を終わらせる音がする。それは父の声であり、母の声であり、祖父や祖母の声であった。「奇妙なことを言う」「おかしな子」そんな言葉が、これから広がったかも知れない彼の可能性を潰した。そして、成長した彼に向かって平然と言うのだ。「個性のカケラ…

20131009 --732

世界を終わらせる音がする。それは天使の吹くラッパ、教会の重厚な鐘の音。遍く大地に残酷なまでに美しく響き渡るが、聞く者にこれこそがコキュートスを吹く風と思わせ、心胆を等しく寒からしめた。──音が止んだ。始まる。人の全てを焼き尽くさんとす、天使…

20130919 --727

再び文字が盗まれた。「次は何を盗られた?」「わからぬ」「ひふみよ……5文字だな」「5文字!? 先程のも含めると6文字になるぞ!」「ひと度でこれほどの文字を盗めるとは何者の仕業か……」「ここで立ち止まって話しても何も探せぬ。とにかく進むぞ。ひと文字…

20130918 --726

文字が奪われた。何者によってかはわからない。ただ『それがない』ということのみ、その場にいた者達に伝わった。「参ったな」「え? ないと困るのか?」「当たり前だ。生活の折々で支障が出るぞ」「そうか。しょうがない。探しに行くか」かくして奪われた文…

20130906 --725

何も変わらない。求めるものはすべて過去の向こう。交わされたたくさんの言葉の中から、渇望するそれを掬い上げる。そのループ。だが繰り返し故に霞み、劣化していく。満ちることなく指の隙間からぽろぽろと零れ落ちる。耳の奥に残る言葉の数だけ報われる。…

20130717 --723

笑顔が返る。そしてそれが全てだった。世界が急速に暗転していく。 #twnovel 「……」目を覚ました。頬を涙が伝う。言いようのない寂寥感が胸を支配する。あれは誰の夢だったのか。袖でぐいっと涙を拭った。同時に夢の記憶も拭われる。忘れていく。きっと、そ…

20130717 --722

「ありがとう。……ごめんね」「謝るくらいなら、最初から……」「うん、わかってる」「わかってない! あなたは何もわかってない! 違う、わたしの気持ちなんてどうでもいいの。そうじゃない。そうじゃなくて、あなたは、あなたの気持ちは……っ」「うん」「だっ…

20130717 --721

「やり直せばいい。何度だって生き直せばいい。驚くほど違わなくてもいいじゃない。ちょっとの変化だって。それでも。それでも、少なくともあなたがやり直そうとすることで救われる存在だっているのよ。あなたが1秒でも長く生きていてくれることで、報われる…

20130717 --720

「いっそ、ね。いっそ。最初から。全てなかったことにしてやり直したい。ここまでの道のり全部覆してしまいたい、なんて。願わなかったと言えば嘘になるかな。でもね、きっと、驚くほど違う未来、運命には辿り着けないと思うんだ。わたし、そこまで器用じゃ…

20130708 --719

「おお、罪深き者よ。汝は鍋の熱さを知らぬ。ただ冷えたパスタを知るのみ。居間のエアコンは、彼らのものである」「ただいま〜」「息子よ、いいところに。母さんがまた何か唱えてる……」「晩飯、何?」「暑いから冷製パスタでいいよってリクエストを」「……学…

20130630 --717

宵よいここそこ移りて住まい、宵よい子らと星見上げ。宵よい小枝燃して暖とり、宵よいころころ皆笑う。宵よいこの路続くはどこぞと、宵よい皓々月に問う。宵よいこうして好きずき生きて、宵よい木の葉の傘の下。宵よい今度はいずこに行くか、宵よいこの枝指…

20130624 --715

天なる神の裁きに戦く我らは追悔し、うたた叫びをあげて空に問う。あまねく言葉──世界に溢れるそれは、大塊にたなびく旗を追懐し、覇者の名を冠する者に三度請うだろう。愛する者の形見に愚者は追惜すれど、一面に林立する墓石は傾き続ける赤銅色の陽光を無…

20130617 --712

「素麺を食べるだけの人は幸いである。彼らは茹でる時の暑さを知らない。ただ冷たい麺を冷たい汁につけ、食べるだけである」「お、おい、鍋の前で母さんが何か諳んじ出したぞ」「わかんねえのかよ、父ちゃん。あれは父ちゃんが『今日は暑いから素麺でいいや…

20130615 --711

暗い店のそこかしこで男達が横に座る女達に迫る。「この位いいだろ、金払ってんだから」「こんなに愛してるのにわかってくれないのか。確かに俺は無職だけど」「仕事終わるまで待ってる。君、どこ住み? 送ってくよ」そんな男達に笑顔で応える着飾った女達の…