"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

20140213 --753

造られたもの。選ばれたもの。見放されたもの。愛されなかったもの。崇め奉られた末に不浄として虐げられた、その身を器として捧げた運命のこどもたち。引き離されそうになった時、残されるはずだったひとりがもうひとりを連れて逃げた。お前らの勝手な都合…

20140211 --752

雪で世界は白く染まった。今なお空から舞い降りるそれは非情なまでに美しい。そんな中、ぼくたちは歩く。聞こえるのは雪を踏みしめる音ときみのむせび泣く声だけ。他には何も聞こえない。雪は音もなく降るのだなと思った。繋いだ手の温もりが、この世界が幻…

20140204 --751

甘い香りがうっすらと、風に乗って流れてきた。振り向くとそこには梅の枝を抱えた睦月が立っている。「待たせたね、如月」言いつつ襷と共に枝を渡された。「沢山咲いてるけど蕾もあるから、そっちで咲かせて欲しいと思って」「そっか、了解」まだしばらくは…

20140101 --750

鐘の音が大晦日の夜に響き渡る。ようやく年越しの準備を終え、扉の前に辿り着いた。あとは引き継ぐだけだ。やれやれと胸を撫で下ろす。振り返れば今年も色々あった。だけど、辛いことも楽しいことも全部、きちんと来年に届けたい。さ、時間だ。そして師走は…

20131210 --749

画商が店の奥から一枚、絵を出してきた。画布の真ん中に大きいな白円。その周りを黒の絵の具が厚く塗られている。見覚えのあるタッチだ。六枚目だ、と画商は言う。五枚の連作ではなかったのか。「これはだいぶ後、画家が死ぬ直前に描いたらしい」題は《また…

20131210 --748

三枚目と四枚目。縁取る白線が右回りに一本ずつ増えていく。題すらない。五枚目。縁取りは左辺に達し黒を囲んだ。この五枚の絵(と呼んでいいかは別問題として)は連作で、《混沌》は《原始世界》に包み込まれているということを言いたいのだろうか。題は《…

20131209 --747

二枚目。画布の大部分は一枚目と変わらず黒で塗り潰されている。違うのは上辺。端から端まで指ひと関節分ほどの幅の塗り残し……いや、白の絵の具が塗られている。こちらは筆で均一な塗り方だ。作者名はこれにもない。また題名らしきひと言が添えられている。…

20131209 --746

「大切な人が、昔、あるいは今、もしかしたら未来に消えたの」遠い目をして黒髪の少女は言う。「自分以外の誰かの為に戦って、傷ついて、何があっても絶対諦めない、そんな人。わたし、捜してるの」掌の鍵が怪しく輝き出す。「ここには……いないね」言葉だけ…

20131206 --745

一枚目。画布は黒で塗り潰されている。面は均一ではなく、パレットナイフで所どころ厚く、または波打つように絵の具が乗せてあり、それが影を落としてより一層暗い部分を作り出していた。作者名はない。ただ、題名らしきものがひと言添えられている。《混沌…

20131206 --744

どうにも寒いと思ったら夜半には雪が降り出した。軒下で時間を潰していると、息せき切って駆けつける者がひとり。「遅れてすまない、霜月」随分と待ったが、待ち人が彼たる所以を思えば仕方あるまい。「忙しいところ悪いね。あと少し、君に任せたよ」そう言…

20131127 --743

ふと、キー打つ手をとめ、椅子から立ち上がった。静まりかえる夜の谷間、そっとベランダに出る。深呼吸をして肺の中の空気を入れ替えた。ひんやりとしたそれは体の隅々まで行き渡り、そしてこごった心すら濯ぐ。軽く伸びつつ空を見上げれば、火星を従えた月…