"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2013-01-01から1年間の記事一覧

20131115 --742

「みかんくれ」 こたつのかどで わがこたつ #twnvday #twnovel posted at 00:21:19

20131115 --741

暗赤色の瞳が闇に浮かぶ。四本の足が周りを囲み、柔らかい体皮が覆い被さるように長く垂れていた。古くから住む妖怪で、主に人間を餌とする。魂まで抜き取る様子から土地の者は「魂脱」と呼び恐れていたが、調査した学者の聞き間違いから「こたつ」として世…

20131111 --740

時間の魔女よ。あなたは何故ここにやってきた? 運命という名の神の御手によるものか、はたまた己の意志か。時の流れの前に無力な俺を笑いにでもきたのか。大河の奔流にただその身を任せるしか術のない枯れ葉のような俺を。そんな目をするな。憐れむような、…

20131106 --739

気がつけば東の空がうっすら明るい。窓越しの夜空では星がその明かりを徐々に落とし始めていた。何だか寝つけないからと本を読み進めていたら夢中になってしまいこんな時間だ。苦笑しながらしおりを挟んで本を閉じ、ランプの火を消し、毛布の海に潜り込む。…

20131106 --738

金木犀を残して神無月が去る。その背中はどこか疲れていた。神様の引っ越しや災害で失われた命に対して必死に祈りを捧げたからだろう。残る霜月は鼻孔をくすぐる花の香りに安らぎを感じつつ、次に神無月と交代する時には晴れやかな顔でいてくれるといいと願…

20131024 --737

みんな失くした。気づけばこの手は何も掴んじゃいなかった。それを見て当たり前よと君は言った。自分から離れていったでしょう。恋人から、家族から、友達から、仲間から、世界から。そして貴方は一人になった、と。じゃあ君は何故そこにいるの? わたし? …

20131023 --736

この世界を滅ぼせと仰るなら、私は迷わず受けましょう。この世界を守れと仰るなら、私は喜んで受けましょう。この世界を愛せと仰るなら、私は暫し悩むでしょう。貴方以上に愛せるものなどないのですから。そして思いつきます。ああ、貴方ごと世界を愛せば良…

20131021 --735

蓮の花びらを一枚、二枚。めくる手が震えているのは、花の奥にある世界を思ってか。しかし決めたのだ。もう戻らぬ場所ならば、思いを残す者もなし、ただあるのは、我を虐げた小さな世界。さようなら、さようなら、わたしを愛さなかった世界。わたしが愛せな…

20131011 --734

巨大な柱に対して男は無言で斧を振るう。あと少し。あと少しでこの柱も倒れる。世界を支える十二の柱、最後の一柱が眼前のこれだ。全てに絶望した時、悪魔が彼の元に現われ、斧と柱のある場所を示す地図を渡した。ただし、それをどうこうするのも自由だ、と…

20131009 --733

世界を終わらせる音がする。それは父の声であり、母の声であり、祖父や祖母の声であった。「奇妙なことを言う」「おかしな子」そんな言葉が、これから広がったかも知れない彼の可能性を潰した。そして、成長した彼に向かって平然と言うのだ。「個性のカケラ…

20131009 --732

世界を終わらせる音がする。それは天使の吹くラッパ、教会の重厚な鐘の音。遍く大地に残酷なまでに美しく響き渡るが、聞く者にこれこそがコキュートスを吹く風と思わせ、心胆を等しく寒からしめた。──音が止んだ。始まる。人の全てを焼き尽くさんとす、天使…

20131001 --731

長月に伴われて、月の境目に文月と葉月がやってきた。「今年の夏はあまりにも暑かったので」ぼそっと文月が呟く。「北へ北へと進んでいたら、今度は寒くなってしまって」続けて葉月が言った。「いつの間にやら秋でした、と」長月が結んだ。神無月はため息混…

20130920 --730

徒に過ぎた時間の分だけ、貴方のぬくもりも遠ざかる。現在も、過去も未来も探したけれど、符丁ひとつ見つけられない。己の無力さに肩を落とすわたしの上を、満月が横切ろうとした。思わず掴もうと手を伸ばす。できやしないのに。だから。代わりに。わたしの…

20130920 --729

降り注ぐ光は差し伸べられた貴女の手のようだ。探し続け、待ち続けた幾年でできた溝を埋め尽くそうと、それは蒼白く寒々しいはずなのに、仄かに暖かみすら感じさせる。己が手で受けようとするも、やはりそれは掴めるものではなかったが。月見て流す涙は、地…

20130919 --728

あの人、わたしと同じように月を見上げてくれるかな。時間の流れが違うほど遠くでなければ、きっと今夜は素敵な満月、祈りを捧げたくなるほどの美しい月。本当はね、一緒に見上げたい。でも、わたし、あの人みたいに上手に世界を捲れなくて会いにいけないん…

20130919 --727

再び文字が盗まれた。「次は何を盗られた?」「わからぬ」「ひふみよ……5文字だな」「5文字!? 先程のも含めると6文字になるぞ!」「ひと度でこれほどの文字を盗めるとは何者の仕業か……」「ここで立ち止まって話しても何も探せぬ。とにかく進むぞ。ひと文字…

20130918 --726

文字が奪われた。何者によってかはわからない。ただ『それがない』ということのみ、その場にいた者達に伝わった。「参ったな」「え? ないと困るのか?」「当たり前だ。生活の折々で支障が出るぞ」「そうか。しょうがない。探しに行くか」かくして奪われた文…

20130906 --725

何も変わらない。求めるものはすべて過去の向こう。交わされたたくさんの言葉の中から、渇望するそれを掬い上げる。そのループ。だが繰り返し故に霞み、劣化していく。満ちることなく指の隙間からぽろぽろと零れ落ちる。耳の奥に残る言葉の数だけ報われる。…

20130814 --724

いいねこの缶詰 #twnovel #twnovel7 posted at 15:49:35 お題は「猫」。

20130722

川から引き上げられた少女は記憶喪失で何処の誰ともわからない。手がかりは唯一覚えているという詞無き歌。村人に請われて少女は歌う。えもいわれぬ旋律に皆心を奪われた。やがて歌い終えた少女は涙した。その歌こそ時止めの歌、聞く者の心を奪い時を止めて…

20130717 --723

笑顔が返る。そしてそれが全てだった。世界が急速に暗転していく。 #twnovel 「……」目を覚ました。頬を涙が伝う。言いようのない寂寥感が胸を支配する。あれは誰の夢だったのか。袖でぐいっと涙を拭った。同時に夢の記憶も拭われる。忘れていく。きっと、そ…

20130717 --722

「ありがとう。……ごめんね」「謝るくらいなら、最初から……」「うん、わかってる」「わかってない! あなたは何もわかってない! 違う、わたしの気持ちなんてどうでもいいの。そうじゃない。そうじゃなくて、あなたは、あなたの気持ちは……っ」「うん」「だっ…

20130717 --721

「やり直せばいい。何度だって生き直せばいい。驚くほど違わなくてもいいじゃない。ちょっとの変化だって。それでも。それでも、少なくともあなたがやり直そうとすることで救われる存在だっているのよ。あなたが1秒でも長く生きていてくれることで、報われる…

20130717 --720

「いっそ、ね。いっそ。最初から。全てなかったことにしてやり直したい。ここまでの道のり全部覆してしまいたい、なんて。願わなかったと言えば嘘になるかな。でもね、きっと、驚くほど違う未来、運命には辿り着けないと思うんだ。わたし、そこまで器用じゃ…

20130708 --719

「おお、罪深き者よ。汝は鍋の熱さを知らぬ。ただ冷えたパスタを知るのみ。居間のエアコンは、彼らのものである」「ただいま〜」「息子よ、いいところに。母さんがまた何か唱えてる……」「晩飯、何?」「暑いから冷製パスタでいいよってリクエストを」「……学…

20130701 --718

片手で傘を差しつつ水無月が来た。もう片方の手には閉じられた傘。月の入り口で雨宿り中の文月の為に持ってきたらしい。「今年の空はなかなかに気まぐれで」水無月は言う。「どこで降られるかわからなくて」それを受けて文月は笑う。「ありがとう。手紙を書…

20130630 --717

宵よいここそこ移りて住まい、宵よい子らと星見上げ。宵よい小枝燃して暖とり、宵よいころころ皆笑う。宵よいこの路続くはどこぞと、宵よい皓々月に問う。宵よいこうして好きずき生きて、宵よい木の葉の傘の下。宵よい今度はいずこに行くか、宵よいこの枝指…

20130624 --716

空には零れ落ちてきそうな満月が出ているらしいが、生憎の曇り空がそれの観測を許さず、あまつさえ雨まで降らせてくる始末。「つまらない」そう言って口を尖らせる君を見て、ふと思いついたことに苦笑する。目敏く見咎めた君が怪訝な顔を向けてくるが怒られ…

20130624 --715

天なる神の裁きに戦く我らは追悔し、うたた叫びをあげて空に問う。あまねく言葉──世界に溢れるそれは、大塊にたなびく旗を追懐し、覇者の名を冠する者に三度請うだろう。愛する者の形見に愚者は追惜すれど、一面に林立する墓石は傾き続ける赤銅色の陽光を無…

20130621 --714

その『意識』は、運命の大樹の枝先まであとひと節という場所に生まれた。結末という名の、枝先に生る実を掴むまでの距離はほんの僅か。選択できる事象も無いに等しい。彼らは、驚くべきことに、踵を返して枝を戻り始めた。どうしても諸事の始原を確かめなけ…