"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

20120315 --532

花が降る。雲厚き空より花が降る。風が吹けばあっけなく、あれよあれよと飛ばされて、吹かねば吹かぬで思う通りに進めない。あな愛おしやと手に取れば音なく崩れ、運良く地面に落ちたとて、融けて消え往く悲しき運命。冬の名残のぼたん雪。春が来るまであと…

20120314 --531

花を咲かせるか、花を散らせるか、それが問題だ。 #twnovel #twnvdayposted at 01:06:52 今月のお題は「花」。

20120310 --530

あれからもう一年……いや、まだ一年だな。諦めなければ、立っているその場所がいつでもスタート地点になる。俺はこの一年でそれを知った。去年書いた日記を見直す。そこには俺の決意が色濃く残っていた。家に帰る。故郷に帰る。そして俺は俺の生活を取り戻す…

20120309 --529

目を開けた。見慣れた天井。閉められたカーテンとカーテンの間から陽光が射し込んでいる。「夢、か」夢というには、あの男の声がやけに耳に残っているが……。夢であったことに安堵し、さあ着替えようとして、ふと、寝衣の袖を見る。誰かに?まれたかのように、…

20120309 --528

ぎゅっと目を閉じた。口を開けた。肺が息を吸い込む。声となって外界に再び放たれた。「嫌だ! まだ昼の世界にいたい! 帰りたい!」声に重なるように多数の悲鳴がそこかしこで上がる。暗転。暗闇。 #twnovelposted at 02:59:41

20120309 --527

瞬間、体が動かなくなる。恐怖のせいか人形の力かは、今となってはわからない。「僕達の仲間になってよ」今度は心にではない。耳のすぐ傍で、心胆寒からしめるような低い男の声が、鼓膜を震えさせた。更に背後に蠢くたくさんの人形の気配を感じる。恐怖は。…

20120309 --526

そして再び、袖を引かれた。 #twnovelposted at 02:51:29

20120309 --525

そこにあったのは決してきれいな状態の人形ではなかったように思う。よくよく思い返せば、彼らは埃をかぶり、手入れもほとんどされていなかった。それは何故か。工房と思われたあの部屋は、もしかしたら、彼らを作った場所ではなく、彼らを閉じ込めていた部…

20120309 --524

「ここにいようよ。夜の世界に。太陽も昇らない。誰も来ない。でも、僕達がいるから寂しくないよ。僕達と一緒にいるときっと楽しいよ」抑揚のない、まるで棒読みの台詞を聞かされているようだった。ドアはまだ開く気配がない。このままでは捕まってしまう。…

20120309 --523

本能が、ここにいてはまずいと警鐘を鳴らす。少年の人形が更に近づいているのがわかった。先ほどの虚ろな表情は恐らく鬼のような憤怒に変貌しているに違いない。振り向かずともわかる。そんな気配が背中に刺さるように感じられるからだ。逃げなければ。逃げ…

20120309 --522

ガチャガチャガチャ。ドアノブを回すがドアはびくともしない。違うのか。これが出口じゃないのか。「ねえ、どうして嫌がるの? 寂しいよ。一緒にここにいてよ」ひたひたと足音が背に迫る。必死にドアノブを回し、ドアを押す。そうこうしている内に他の人形も…

20120309 --521

人形が動いているだけでも恐ろしいというのに、そんな提案までされてしまっては、私が「一刻も早くこの場から逃げ出さなければ」と思うのも当然だ。ひぃっと思わず声を上げ、袖を?む手を振り払い、部屋の出口を探す。真鍮のドアノブが就いた木製の扉がそばに…

20120309 --520

人形だった。背は私の半分といったところか。貴族然とした、しかし長年放置されていたような薄汚れた服を纏った、少し巻き毛の黒髪が目を引く少年。虚ろな青い瞳がわたしを見ていた。「僕達の仲間になってよ」口は動いていない。それは、どうやら心に直接語…

20120309 --519

その部屋には大小様々な人形があった。工具も確認できたから、工房なのかもしれない。カーテンが窓を覆っている為に、室内は常に薄暗かった。いつの間にこんな部屋に迷い込んでしまったのか。しんと静まり返った部屋の中で、自分だけが生者だと自覚した時、…

20120226 --518

一歩踏み出す。途端、轟音と共に少女の両側に石壁が姿を現わした。高い。手を伸ばしても到底上辺には届かぬ。見るからに堅牢そうで多少の衝撃では傷一筋もつくまい。次から次へと出現した壁は瞬く間に地平線まで続き、一本の道を作り出した。ここを進めと言…

20120225 --517

果てしなく広がっているのは曇り空である。厚い雲の向こうから何かが光を落としているが、今何時かはわからない。見渡せば地平線は遥か先に横たわっており、間には拳大の石が散見するのみの荒野。生き物の気配はない。ど真ん中に立ち尽くす少女を除いて。ま…