"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

20111026 --464

黒衣の騎士は、彼を見て驚き立ち尽くすユイの前に歩み寄り、片膝を地につけて彼女の手を取った。「お初にお目にかかる。我は、この者であってこの者ではない、別の時間と世界、可能性の海を彷徨うもの」一陣の風が駆け抜けた。しかしそれはユイの戸惑いを拭…

20111022 --463

歌は好きかですって? そんなこと考えもしなかったわ。だってわたしはわたし自身を歌う為の楽器だと思ってるんですもの。好きも嫌いも関係なく、奏でるだけよ。でも面白いわね。楽器はどう思って奏でるのかしら。うん、今からわたし歌うから、あなたが見て、…

20111013 --462

「信じてみたい可能性とは、今ここに向かっている足音の主か?」そう言いつつ黒衣の騎士は視線を外に転じた。こちらに駆け寄る小さな人影が窓越しに見える。その人影が辿り着く前にセンが窓を押し開けた。別段驚いた様子もない。彼女なら、間違いなく来るだ…

20111012 --461

「正解かどうかはわからない。しかしこの世界、この時間に、信じてみたい可能性がある。だから俺はここにいる」そう語るセンを黒衣の騎士はじっと見ている。まるでそこに希望を見出そうとしているかのようだ。「信じてみたい可能性」口の中で、黒衣の騎士は…

20111008 --460

ある男が管理する林檎の木、それは世間を騒がす実をつけ、そして正しく世界は驚嘆した。木はその後も沢山の実をつけたが、都度世界は注目し熱狂していった。大きくなった木を見上げ、男は次の世代に管理人のバトンを渡し去っていった。それが本意だったかど…

20111006 --459

黒白にゃんこは腕の中。大好きな人の腕の中。僕は泣けないから、精一杯鳴いた。いろんなことがあったよ。優しい人にもいっぱい会えた。大変なこともあったけど、それ以上に嬉しかったことがたくさんあった。迎えに来てくれてありがとう。大好き。……伝わった…

20111006 --458

黒白にゃんこは腕の中。たった今やってきた車の前。夢じゃない。夢じゃなかった。家が壊れたあと少し遠くに家族で避難。餌をくれてた近所の人から僕を見つけた連絡がきて、時間かかったけど迎えに来たって大好きな人が泣きながら教えてくれた。僕の声、僕の…

20111006 --457

黒白にゃんこは夢の中。ひと時ゆらゆら夢の中。まるで誰かの膝の上。そっと撫でてくれる手と、優しい歌声思い出す。歌に合わせてごろごろと喉を鳴らしてデュエットを。見上げれば大好きなあの人の笑顔。ああ、僕、忘れてないよ。ちゃんと覚えているよ。会い…

20111004 --456

黒白にゃんこは毛布の上。月光そそぐ木箱の中。冷たい夜空を半分の月が泳いでる。時折雲でかくれんぼ。大好きなあの人もかくれんぼしてるのかな。お月様ならわかるかな。僕の家まで照らしてくれたお月様、今度は僕を照らしてください。どうかあの人に、僕が…

20111004 --455

黒白にゃんこは木箱の上。北風冷たい空の下。風さん吹く吹く駆け足で。そんなに急いでどうするの? 秋をおいこし冬が来る? 不安なにゃんこの問いかけに北風答える、歌のよう。寒いさむーい冬来るよ。白いしろーい雪ふるよ。遠くとおくのお山から、びゅんび…

20111003 --454

黒白にゃんこは毛布の上。口が横向く木箱の中。ご飯をくれる近所の人が、そのままだったら寒かろと、毛布を敷いた小さな木箱の家をくれた。ここ数日急に寒くなってきたからね。この中に入って風邪を引かないようにしなよ? 頭をぐりぐり。にっこり笑い、ご近…

20111003 --453

黒白にゃんこは瓦礫の上。少しずつ人の往来増す道の前。声をかけてくれる人がいる。撫でてくれる人がいる。ありがとね。ありがとね。お礼に鳴いたり、すねこすり。だけど一緒には行けません。僕は待ってる人がいます。腕からするり。瓦礫に隠れる。すみませ…

20111001 --452

ユイが感じ取ったのは、彼女と同一の世界にいない、しかし確実にそこに『在る』と感じられるほどの強い意識。空間の許容量を超えた何かが他空間へ何らかの現象として顕現する事例は実は少なくない。が、一個体の意識が他空間に存在を知覚させるまで干渉する…

20110930 --451

黒衣の騎士がセンに向き直る。長い黒髪が揺れた。月光に照らされて、騎士の顔が顕わになる。そこには、相対するセンと同じ顔があった。まるで鏡でも見ているかのような。身に纏っているもの以外に差異が見当たらない。「汝の求めるものが、この世界の先にあ…

20110930 --450

「消滅は免れている。なれば、必ずどこかで存在し続けているということだ。……どんな形であれ」黒衣の騎士への言葉であるのに、センは自身にも言い聞かせているようだった。普段の彼ではありえないような、切なさを伴って。「故に、汝はここにいる、のか」黒…

20110930 --449

黒白にゃんこは土の上。近所の人がくれた餌の前。これからのことでしょんぼりしてても、あの人いなくてショックでも、おなかは勝手に減るらしい。お心遣いありがたく、まずは食べよう。むしゃむしゃと。今はいないだけかもしれない。そう思って待とう。大好…

20110930 --448

黒白にゃんこは土の上。空き地の隅の瓦礫横。まだ家あったあの頃に何度か見た人、前通る。僕に気づいて声かけてきた。まあまあ猫さん、今まで何処に行ってたの。おなかは空いてないかしら? けれど僕は返事せず、これからのこと考える。これから? 家もない…

20110929 --447

黒白にゃんこは瓦礫の上。埃巻き上げる風の中。空き地のいたるところに大きな車のタイヤ痕。壊れた何かを片づけた跡。瓦礫にわずかに見える傷。あれは僕がつけたもの。バリバリいたずら、とくとくお叱り。ああ、ああ、間違いない。ここは僕の家。壊れてしま…

20110928 --446

黒白にゃんこは道の上。瓦礫が残る空き地の前。振り返る。赤い三角屋根はあそこ。そして家の中から見えていたのはあの形。とすれば家はこの場所。向き直る。だけどここには家がない。あるのは少しの瓦礫。隅っこにまとめて置いてあるだけで。誰もいない。大…

20110926 --445

黒白にゃんこは屋根の上。赤い三角屋根の傍。この方角にあるはずと目印の屋根振り返る。そうだそうだ、こんな形に見えていた。ならばこのまままっすぐに進んでいけばあるはずさ。目の前の塀跳び越して、次の屋根に飛び移る。時々目印振り返り、進む方向を間…

20110926 --444

黒白にゃんこは屋根の上。赤い三角屋根の上。ここから家が見えるはず。どこだどこだと目を凝らす。瓦礫の残る空き地がある。半分崩れた家がある。そのまま残ってる家がある。僕の家はどこ? 僕の大好きなあの人はどこ? 身を乗り出して周囲を見渡す。大事な…

20110924 --443

黒白にゃんこは道の上。吹く風ゆるゆる草原の傍。台風過ぎたら朝晩涼し。いつかのご婦人呟いた、暑さ寒さも彼岸まで。これからじわじわ冬が来る。寒いは苦手。一匹も苦手。僕は大好きなあの人と一緒がいいなあ。迷っても立ち止まらない。進む。前へ。少しで…

20110924 --442

黒白にゃんこはガレージの上。風に雲舞う青空の下。赤い三角あのお屋根、家の窓から見えていた。ちゃんと帰ってこれてると自分を励まし歩み出す。ちりちりりん。眼下の道行く自転車のベル。がんばれにゃんこと励ました。音に背中を押されるようにドキドキし…

20110922 --441

黒白にゃんこは道の上。台風一過の空の下。倉庫で一晩雨宿り、恩は忘れずネズミ捕り。風はまだまだ強いけど、水たまりもまだ広いけど、嵐は必ず終わるんだ。だから会えるよ大好きな人。だから帰るよ僕の家。いつか終わるよこの旅も。進みながら僕は知る。風…

20110922 --440

黒白にゃんこは棚の上。雨風凌げる倉庫の中。塀の上を走っていたら、倉庫の中からおじさんが呼ぶ。おさまるまでの雨宿り、この中だったら安全だからと棚に毛布を敷いてくれた。連れて帰ってやりたいが仮の住まいじゃ飼えないと、しょんぼり謝るおじさんにお…

20110920 --439

黒白にゃんこは塀の上、天使の梯子の遥か下。今日は雨晴れ忙しい。雨が降ったと思ったらお日様かっと顔を出す。雲がぐんぐん空泳ぎ、天から光がいく筋も。じめじめ空気がおひげにいたずら、風の匂いがいつもと違う。これからひどい嵐が来るよとにゃんこの上…

20110920 --438

黒白にゃんこはベンチの上、どこかの庭の東屋の中。気づけばセミの声は消え、秋の虫が歌い出す。今日は雨でいまいちだけど、きっと晴れたら大合唱。お星様を観客にしていっせいに歌うんだろう。その時は一緒に歌おかな。思いを馳せながら、にゃんこは次の晴…

20110918 --437

首都防衛隊舎にいた誰よりも早く、ユイは桜月館での異変を察知した。感じられる気は、ひとつはセンのもの。しかしてもうひとつ。(……もうひとつ?)訝しく思いながらもより詳しく探る為に神経を研ぎ澄ませた瞬間、彼女の心に押し寄せたのは絶望に限りなく近…

20110918 --436

黒白にゃんこは堤防の上。夏みたいな陽気の空の下。雨から一転お日様さんさん。だけど明日のお天気はまたもや怪しいようだから、せっせせっせと距離稼ぐ。にゃんこの横を車が抜いていく。中から男の子が手を振ってくれた。僕は尻尾をぶんぶんと振り返す。帰…

20110917 --435

黒白にゃんこは箱の中。道路脇に積まれている瓦礫の上。雨まだ止まず、しばらく足止め。きっともう少し。僕の家まであと少し。この辺も多分僕が知ってる街。だけどあれからあちこちに瓦礫があって何かが腐った匂いが風に乗る。これでも片づいたほうらしいけ…