"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

20091209 --208

何故歌うのかですって? わたしが歌うのはそれが神様が与えてくださった運命だからよ。昔「夢破れて」を歌って夢を叶えた人がいたよね。あの人も歌う事を運命づけられていたの。ただそれに気づくのが遅かっただけ。わたしは違うわ。運命に最初から気づいてた…

20091209 --207

「うわあっ」塔を守る黄金竜のブレスが俺を襲う。あまりの吹き荒れっぷりに吹き飛んだ。挙句、壁を突き破って遥か下の地面へ。……動けない。HP0。ゲームオーバー。「くそー」視覚ユニットを顔から外し、親友を睨む。「お前が作ったゲーム、世界観はいいけど敵…

20091209 --206

「マスター、どこですか……?」戦場で彷徨うこと一週間。城から魔法に使う触媒を運んできた妖精は、未だ主と合流できずにいた。主の魔力が枯渇せぬ限り妖精は何も食べずともある程度生きていられるが、その魔力もさっきから感じられない。妖精の頭の中では嫌…

20091209 --205

鯨は眠かった。人間が自分達の生活レベル維持の為に海底に手を出して数十年。昼夜止まぬ工事の音が海を伝って鯨を寝かさない。そんな鯨が悩む海より遥か遠くの大陸では果てしない道を夜行バスが走る。乗車前に買った焼き芋を頬張る青年は、まだ見ぬ海上の新…

20091209 --204

世界の底を留めているねじがある。7つの封印と言い換えればああと思う人もいるだろう。一つ注意しておく。終末のラッパが鳴る時に外される予定の、あのねじの名前を呼んではいけない。そんなことをしたら終末の時を待たずしてねじは壊れ、この世界は崩れ去っ…

20091209 --203

わたしね、やっと気づいたの。わたしは貴方に守られてたんだな、いつも笑っていられるようにしてくれてたんだなって。やっとね、やっと気づいたの。だから伝えようって思って。ありがとうって伝えようと思って。それで。なのに、これは、何? 貴方は何故、そ…

20091209 --202

映画で流れていた可愛い新曲が気に入ったので、CDを買ってきた。CD買うなんていつ振りだろ。ここ最近不況のせいで曲が売れなくて困ってるって聞くけど、わたし的には不況じゃなくて「買ってまで聞きたい、聞き込みたい曲」が全然リリースされないってのが原…

20091208 --201

持ってきたラジオはイヤホン端子が壊れかけていて時々聞こえない。話のオチが聞こえ難くて悔しいったらありゃしない。ここは天界の辺境地域を繋ぐ神々の夜行バスの中である。変わり者の天使が所有する、装飾が激しいまるでヴィジュアル系のような魔導書を受…

20091207 --200

わたしは待つ。様々な思考が泥のように混融する心の底から、言葉が浮かび上がる瞬間を。努々油断ならない。語るべき言葉が浮かぶ瞬間に前兆などないからだ。浮かび上がった言葉をパズルのように組み合わせ、かちりと嵌まったところで放流する。わたしの #twn…

20091207 --199

「俺ら、最近の若いモンはってよく言われるけどさ、そう言う大人こそ自分棚上げだよな」「だな。昨日電車で婆さん乗ってきたんで席譲るのに立ったら、明らかにその婆さんより元気なババアが婆さん追い越して座りに来たぞ」「最近の古いモンはロクでもねえな…

20091207 --198

夜中、予定より少し遅れて守護者フィガロが首都に到着した。俺は大門まで迎えに行き、隊舎へ戻る道すがら口頭で引継ぎを済ました。口頭で済んだのは大したことがなかったから。敢えて挙げるなら、見回り中に寄った酒場で酔っ払いが暴れていたくらいだ。何事…

20091206 --197

冷たい朝の風で紅葉が一枚二枚と散っていく。くるくると回りながらあちこちに落ちてくる様は幻想的で、時間が許すならいつまでも見ていたいと思わせるほどだった。季節の移り変わりを知らせる何かは、どうしてこうも人の心を動かすのだろう。ユイはその手に…

20091205 --196

暗闇を押し退け、朝焼けが街を照らす。やがて太陽が顔を見せて夜の終わりを告げた。気象予言士によると今は晴れているが昼にはまとまった雨が降るらしい。(葉が全部落ちちゃうかも。きれいなのにな)孤児院の窓から公孫樹並木の下を行く首都防衛隊を見つつ…

20091204 --195

公孫樹並木が続く首都大門前。見事に黄色く染め上げられた葉が風に乗ってはらはら落ちてくる。それを背に受けながら、守護者ルドルフは大陸北部に向けて出発していった。俺は門のところでしばらく見送ったあと、防衛隊舎に向かう。よっしゃー! 俺は俺の仕事…

20091204 --194

《大結界》は目の粗い笊みたいなもんだ。魔物の大物(魔力が強いって意味で)には効果があるが小物は通してしまう。守護者の首都防衛任務とは首都内を見回る防衛隊の統括が主な役目で、実際に見回って歩くものではない。まあ俺は状況把握や勉強も兼ねてつい…

20091203 --193

「すきよ」少女の言葉に俺は面食らった。ついでに持ってるものを落とした。手が震え、足に力が入らなくなった。衝撃。まさにドンッときた。すげえきた。胸にあたたかいものが溢れ出て来る。「隙よ」胸から生えたナイフを見て、俺は「駄洒落かよっ」とツッコ…

20091203 --192

ある程度の幸せならば、何の冒険をせずとも享受できただろう。だがわたしは知ってしまった。望むものが大きければ大きいほど、それを掴む為のリスクも増すのだと。そしてわたしは知ってしまった。わたしが望むものを。どれほどこの手を血に染めようと、手に…

20091203 --191

あの人は いつかわたしに 追いつくかしら あの人は いつかわたしと 再会するのかしら 流れ行く「時」の中で 無限に分かれていく「世界」の中で どうか 伝わりますように わたしはここにいます あなたを探しています あなたを――愛しています どうか 伝わりま…

20091202 --190

「馬鹿者、あと半年は修行じゃ」……そんなとこだろうと思ったけどさ。明晩守護者の一人が首都に戻るから、それまでの繋ぎだと。たとえ繋ぎでも、一日任せられると判断されたことに一瞬心躍った。が、浮かれてもいられない。首都に住む200万の命を預かるんだ。…

20091201 --189

月の美しい夜は、何故だか血が騒ぐ。TLに流れる言葉に、自らが紡ぐ言葉に、それを見出そうとしてしまう。頭の中で辞書がフル回転だ。月光を浴びながらどこで駄洒落るか必死に探す自分。そしてそれでも駄洒落ついのべの投下を決行しちゃう自分に、結構なこと…

20091201 --188

そこは美しい月の夜しか行けない場所。訪れた男女は一様にうっとりと月を見上げて時を過ごすという。秘湯「月混浴」。観月の名所に湧く温泉で、今宵もたくさんの男女が月を見上げている。さあさ、お盆に銚子と盃を持って参りましたよ。いっちょ浸かりながら…

20091201 --187

歌いたい。歌いたいの。わたしには歌しかないの。空を自由に飛べる翼も、海を自由に泳げる尾鰭も、わたしは持っていない。あるのは声。歌う為の声。歌だけがわたしをわたしと証明してくれる。どこにいても、歌うことができれば、それはわたし。だから歌わせ…

20091130 --186

人を殺して逃げました。頭を持って逃げました。人目を憚る愛を交わしたあの人の、頭を持って逃げました。これでもうあの人はわたしだけを見てくれます。「愛しています」頭を抱きしめながらわたしが愛を囁くと「ああ、俺もだよ」と、あの人は頭だけになって…

20091130 --185

「ママ聞いて! すごいことに気づいた!」台所で洗い物をしていると興奮気味に娘がやってきた。「ほほう、聞こうじゃないか」「『いくらはいくら?』!」「!」「『いくらはいくら?』だってーw」一人でウケている。神様、これはいつもわたしが駄洒落ついの…

20091130 --184

「人を殺して逃げました。大好きな人を殺して逃げました。僕だけを見て欲しかったから。僕だけを好きでいて欲しかったから」無表情で男はそう言った。「では、殺したことで彼女はあなただけを好きになってくれましたか?」検察官の問いを聞いた途端、男は泣…

20091129 --183

「あなたの重大ニュースは何ですか? 教えてください」「6年生の時に、学校にいたのに捜索願いだされそうになったことかなあ? 親に連絡せずに残ってたのがまずかったみたい」「それは大変でしたね。で、重大ニュースは何ですか?」「え? 今のだよ。十代ニ…

20091129 --182

狭い部屋で、僕はまだ見ぬ地に思いを馳せた。そこは花の都と呼ばれており、街中が一年中花で彩られているという。綺麗なんだろうなあ。《目的地上空です》機械の無機質な声。予定通り僕は釦を押した。爆撃機から沢山の焼夷弾が投下される。花も街も、全てが…

20091129 --181

人を殺して逃げました。人を殺すのはルール違反ですが私にはその人が人に思えませんでした。何故ならご主人様が大事にされている犬のポチを笑いながら虐めたのです。「参ったなあ」警部は唸る。最近、メイドロボが独自の判断でルールを破る事件が頻発してお…

20091128 --180

ただ、ルドルフ爺さんが出るとなると首都防衛の守護者が不在となってしまう(守護者には首都防衛任務ってのが持ち回りで有り、今は爺さんが担当中)。どうするのかと思ったら爺さんはなんと俺を首都防衛代行に指名した。興奮したのは言うまでもない。俺、遂…

20091128 --179

そんなある日、大陸北部の地下迷宮に住む魔物が近隣の街道で旅人を襲い、複数の犠牲者を出したという報告が入った。二日前に6人の狩人が退治に向かったが、犠牲者を増やしたに過ぎなかったらしい。他の守護者はそれぞれ依頼を遂行中だったので、ルドルフ爺さ…