"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

20150311

頑張ろう? 何をだよ。大変だったね? 今も大変だ。これからどうするの? 俺が聞きたいわ。辛いのはあなただけじゃない? 言われるまでもない。あなたのそばにいるよ? は? 俺のそばにいてどうすんだよ。こうやって言葉を交わしていたい? なんで、なんでそ…

20150310 --785

表示試験は成功だ。たった一文字。たった一文字だが、それは『彼女』が自発的に発した言葉であった。よし。私の理論は間違っていなかった。プログラムとマシンのスペックはこれから如何様にも改善の余地があり、また新たな技術が補強してくれるはず。いける…

20150310 --784

《お》 #twnovel posted at 02:43:08

20141210 --783

「戻りなさい」声は告げた。「次に目覚めた時に君達はもうここを思い出せない。だがそれは正しい。忘れられるというのは人に与えられた特権だ」少年は瞬きをし、周囲を見渡してから言った。「仰る意味がよくわかりません。それにここには僕しか」言い終わる…

20141210 --782

その声は男であり女であり、老いた者を思わせながら幼くもあった。いくつかの問答をこなすと、声は次が最後の質問だと言った。「本当は何が欲しかったのだ」しばらく考え込んでから少女は答えた。「場所が欲しかった。生きる為の時間はあったから。ただわた…

20141210 --781

その声は男であり女であり、老いた者を思わせながら幼くもあった。いくつかの問答をこなすと、声は次が最後の質問だと言った。「本当は何が欲しかったのだ」しばらく考え込んでから少年は答えた。「時間が欲しかった。生きる為の場所はあったから。ただ僕に…

20141204 --780

世話役の研究員に連れてこられた部屋には自分よりも幼い女の子がいた。不意の登場に驚いたのか怖かったのかはわからないが、慌てて彼女に付き添っていた女性研究員の後ろに隠れ、そっとこちらの様子を窺ってくる。その一連の動作は、以前本で読んだ小動物の…

20141128 --779

実験を生き延びたのは2人。ひとりはある財閥本家の後継者だったが病弱を理由に継承権剥奪の上で遠縁に養子に出され、さらにそこからも厄介払いの如く今回の募集で研究所に放り込まれた7歳の少年。もうひとりは貧民街で口減らしに売りに出されていた、元の家…

20141126 --778

『霊子力が無限のエネルギーではないと判明した今、求められるのは如何に霊子の減少を抑えるか、または増やしていくかという打開策だ。効率の良い運用方法も求められるだろう。実験するに既存の法律が足枷となっているなら、財界から政府に圧力をかけさせろ…

20141126 --777

七歳までは神の内という古い言い伝えに奇跡的に辿りついたある科学者が、自説の裏づけの為に世界中から七歳以下の子供を何らかの方法で集めたのが半年前。長年共に過ごしてきたはずの助手をして「狂気に彩られた世にもおぞましき実験」と言わしめた人体実験…

20141029 --776

月夜に歌えばしらじらと。雨に歌えばはらはらと。雪に歌えばゆらゆらと。夕陽に歌えばあかあかと。風に歌えばさらさらと。雲に歌えばもくもくと。星に歌えばきらきらと。今日も歌声心地よく、終わらぬ道をただふたり。 #twnovel posted at 18:07:05

20141029 --775

「運命とは変えるものか、従うものか、逆らうものか、任せるものか。お前は、どれを選ぶ?」やけに大きく見える満月を背に、男が右手を差し出す。恐らく、この手を掴んだ瞬間から、動き出すのだ。ひとつしかないと思われた先が実はひとつではなく、無限に存…

20141026 --774

厚い雲が月光を阻んでいた。周囲を照らすのは従者が持つランプの明かりだけ。この湿度では雨がいつ降ってもおかしくない。雨除けの皮衣を背後の荷物から出しながら、騎乗の娘は遠くに聞こえる梟の鳴き声に耳を澄ます。首都を出立してからもう六日か。目指す…

20141025 --773

運命とは苛烈でしょうか。未来とは暗澹ですか。誰の上にも、どこにいようとも光は注がれるはずなのに、何故我々にそれは与えられないのですか。望むことすら罪ですか。心の中で求めることも許されず絶望を啜り無力を糧に生きろ、と。そんなもののどこが生き…

20141025 --772

わたしは月に祈る。その光が照らす先にいるはずの貴方が、道に迷うことのないように、と。運命という重い足枷によりこの夜の底から動けないわたしの許に、鎖を断ち切る剣を携えた貴方が、無事に辿り着けますように、と。わたしは月に願う。それがすべての、…

20140623 --771

獲物に向かって急降下する妖鳥に横殴りの突風が襲いかかる。いや、実際には風など吹いていなかった。そう感じさせる何かが起きたのだ。驚いた妖鳥は体勢を整えようと羽ばたいた──羽ばたこうとした。軽過ぎる手応えに周囲を見渡す。なんと右翼が付け根から失…

20140615 --770

彼らのはるか頭上で妖鳥は緩やかな弧を描く。豪雨や雷鳴もむしろ自らを引き立てる演出と思っていそうな、優雅ささえ見出せる飛び方だ。人間二人と馬二頭、その気になればひと呑みで終わる。あとは気分とタイミングの一致を待つだけだった。そして、その「時…

20140610 --769

緋岩街道上空に立ちこめる暗雲は彼らの上に容赦なく雨を叩きつけた。轟く雷鳴にかぶさるように、何某か、生き物の鳴き声が耳に届く。空腹が過ぎると山をも飲み込むと言われている伝説の、隊商も遭遇したら運の悪さを呪うしかないといわれる巨大な妖鳥が近づ…

20140607 --768

かの者は過去を糧に立つという。己がこれまで歩んできた枝に咲く花、実る何某を確かめ自信へと変える。たとえば、人は高く跳ぼうとする時、自然踏み込みを深くする。それと同じように、より強く立つ為に深く過去を浚う必要が(それが多大な痛みを伴なうとし…

20140604 --767

注連縄の手前で術師は忌々しそうにそれを見上げた。『向こう側』では封印札を全身に貼られた者が、壁に四肢を打ちつけられている。「何か用かね」壁の者は自身の状況など全く気にしていないといった風情で、いっそ楽しげに訊いてきた。「適応者──生贄でも、…

20140517 --766

『緋岩は彼岸と悲願に通ず』。街道手前にある街での、古老の語りを思い出す。この街道では魔物の襲撃によって死ぬ者が多く、金がなくて隊商に入れぬ単独または少人数での移動を余儀なくされる者らは生還の悲願を胸に街道を走らねばならない。これはそれを由…

20140517 --765

それは恐らく彼らに「それがある」と気づかれる前からそこにいた。街道の先。米粒のような騎影。距離がまったく縮まないところから進行方向は同じ。時折見失うものの気がつけばまた前を行くので進む速度もほぼ同じなのだろう。しかし、この緋岩街道を一騎で…

20140517 --764

緋岩街道西端を行く、大荷物を載せた二頭の馬と、それを牽く二名の男。現在、目的地まで約四日の位置、魔物多きこの地を無謀にも隊商を組まず、寝る間も惜しんで夜すら進む。急ぎ歩を進める彼らの遥か前方、暁光がほのかに朝の到来を匂わせる、そんな道の上…

20140504 --763

世界の果て、断崖の桜。新緑に彩られた枝の下、散った花びらがさながら小さな土饅頭のようにこんもりと積もっている。──いや、花びらだけでこうはなるまい。実際そこには、何かがあるのだ。やがて時が経ち、花びらの朽ちると共に土に還り、ついには桜の糧と…

20140423 --762

太陽が西の空を駆け下り、世界は音もなく暗闇の衣を纏った。闇の濃くなるに伴い、ひとつふたつと星が点り、東の空を振り返れば象牙色の月が顔を覗かせる。夜である。物語なら、乙女が窓辺で空を見上げて心寄せる者を思い描き、少年が未知の世界への憧れを夢…

20140414 --761

世界の果て、断崖の桜の根元。黒髪の子供が二人、手を繋いだ状態で仰向けに倒れている。上から降る花びらが彼らをじわじわと覆い隠していく。彼らはピクリとも動かない。面差しのよく似た、男女の、まだ十にも満たぬだろう二人。その痩せこけた頬に、ひらり…

20140318 --760

「『ほう』ってなんだ?」本を開き、覚えて間もないという文字を指でなぞりつつ音読していたソレが問うてきた。「ほう? ああ、法か。人が集団で円滑に生活する為に作った約束みたいなもんだ」「生活の為の約束? なんと、人という生き物は約束がないと生き…

20140304 --759

流した涙が宝石に変わる妖精は、頭部だけになり、瓦礫の下に埋もれても、涙を流して宝石を生み続けた。そのスピードはどんどん増していく。宝石は瓦礫を押しのけ、逆に瓦礫を飲み込み、そして通りに溢れ、川のように流れた。やがて街を飲み込み、海に達し、…

20140304 --758

流した涙が宝石に変わる妖精は、死してなお宝石を生んだ。美しい宝石は高値で売れた。業者は当初それを喜んだが、しばらくして困り果てる。涙が止まらないのだ。当然、宝石は増え続ける。やがて首を隠した倉庫が、宝石の重みで倒壊してしまった。採取が間に…

20140304 --757

流した涙が宝石に変わる妖精は、どんな拷問にも耐えるようになり、遂に泣かなくなった。それに怒り狂った業者は勢い首を刎ねた。妖精は絶命したが、床に転がった頭部はその目をカッと見開いたままで、何故か大粒の涙を零し始めた。生み出される宝石は今まで…