"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

junction

20120903 --577

わたしがここに、この瞬間に来たということは、絶望するあなたにやり直すチャンスが生まれたということ。ただね、これはチャンスであって絶対ではないの。やり直してもいいし、やり直さなくてもいい。辛い過去を抱えたまま生きるか、違う過去に上書きして生…

20120501 --540

時間とは「時間軸の法則によって定められた一方に、一定の速度で絶え間なく流れる(例外有り)概念」だ。よく川や風の流れに譬えられている。時を渡る際に未来に進むが易く過去に戻るが難い理由? 川や風の中で流れに沿って進むのと、それに逆らおうとする様…

20111204 --482

天も地も遥か彼方。星のまたたきすら阻まれ届かない、それほどの風の奔流。その中を漂う。流れる。川をくだる一葉のように、ひと時たりとも留まらず、ただひたすらに流されていく。来し方行く末もわからないようなそこで、『彼女』は、誰に聞かせようとして…

20110413 --347

世界の果て、断崖の桜から音もなく花びらが散る。「次は実が落ちる頃に来るか」老いた男は花びらを一枚手のひらに受け、大事そうに懐にしまった。『場』の痕跡さえあれば、あの男女がくれた世界を渡る力で、いつでもここに来ることができる。「奇跡の桜の子…

20110412 --346

世界の果て、断崖の桜の前に老いた男が佇む。そこへ世界を渡る男がやってきた。「見事なもんだ」桜から視線を外し、老人は男に向き直って言った。「さて、別の世界のおまえさんたちから頼まれていることがある。教えた桜に満足できたら、おまえさんの助けに…

20110405 --345

世界の果て、断崖の桜の前に老いた男がやってきた。「これか」愛おしむように目を細める。都で桜を作り続けてきた男のもとに訪れた旅の男女が、一夜の宿の礼にと話してくれた。聞いたらいても立ってもいられず、家を後継者に託して放浪十年。──遂に辿り着い…

20110403 --343

「そしてルドルフ、あんたがスカウトしてきた坊やだけど。覚えておいでかい? 図書館の非公開分館、最下層に保管されていた肖像画。坊やそっくりというより本人としか表現しようのないあれさ。うちの弟子がこないだやっと描かれた時代の判定を終えた。……約一…

20110402 --342

「あの娘はイネビリアじゃないよ」いつかの老婆が、総帥執務室に入るなり告げた。『偉大なる魔女』守護者No.2カロリーナ・アンブラはルドルフが勧めるよりも先にそばにある古びたソファに座った。「もっと……厄介なもんさ」三百歳を超えると噂される魔女が大…

20110101 --332

「歴史があるというのは、即ち価値があるってことだ。そこに在り続けることで積もり積もった『時』は何物にも代え難い」「ロジェ様、そう言って執務室の掃除をサボらないでください」「はい、スミマセン」「ほらそこ! 時ではなく埃が積もり積もってますよ!…

20101015 --304

騎士が馬から降り、ルドルフと対峙する。「さて。儂らはお前さんを何と呼べばいい?」暫しの沈黙の後、騎士は答えた。「セン、と。……祖母もそう呼んだ」その返事にルドルフは満足そうに頷き、右手を差し出した。「ようこそ、セン」今、ひとつの旅が終わり、…

20101014 --303

首都大門から程近いところに、その孤児院はあった。いつぞや公孫樹並木を眺めていた孤児が蹲って震えている。(怖い……!)心に流れ込んでくる強大な鬼気。大門からだ。何かが大門にいる。耐え切れず、遂に昏倒した。世話役のシスターが慌てて駆け寄る。「ど…

20101014 --302

首都大門での『異変』を、野生の嗅覚とも言うべき感覚で知った者がいる。防衛隊舎で待機していた守護者見習いのロジェだ。「なんだこの闇くて怖い……」じんわりと手のひらに汗をかいている。ただごとではない。「てか、《大結界》が効いてない? どう考えても…

20101014 --301

漆黒の騎馬が首都大門に辿り着いた。迎えるは守護者総帥ルドルフ・モジュール以下5人の守護者だ。「よく来てくれた」ルドルフが声をかける。「この地が、お前さんの旅の終着点となることを祈っておるよ」騎士からの返事はない。ただ、代わりのように、一陣の…

20100927 --298

「その詩は……?」引き込まれる、不思議な雰囲気の詩だ。「昔聞いたまじないだ。効くかどうかは今まで試したことがないからわからない。出発は早いんだろう? もう部屋に戻れ」主は相変わらずの無表情だが、その言葉に乗っている優しさがありがたかった。「は…

20100927 --297

主は両手を胸前で合わせた。そしておもむろに何事かを唱え始める。「『はじまりの風は東から気ままに 北には厳しさの水が流れ 恵みの炎、南を渡る 一日の終わりを西の大地より得ん 我らは夜の底にひと時の安らぎを求め、うずくまる 月よ 願わくば、夢魔より…

20100927 --296

庭で夜風にあたってると、この館の主がやってきた。「眠れないのか」「……ええ」初の単独作戦を明朝に控え、緊張で目が冴えてしまいもう寝ないで出発と思っていたと告げる。「体調管理も作戦の内だ。そして守護者に失敗は許されない」厳しい言葉。だけど、表…

20100905 --292

《楽園》を出ても予知夢を見てしまう。変えられない未来、逆らえぬ運命。それはわたし自身にも言えること。「姫……」連れ出してくれた愛しい人が心配そうに声をかけてくる。それを見て悲しくてわたしは泣いた。ごめんなさい。見えてしまったんです。明日、わ…

20100903 --291

毎夜夢にうなされる彼女。悲鳴と共に目覚め、窓辺に立ち、星空を見上げ溜息。震える肩に置くのは俺の手。「姫、また予t「わたしはもう姫ではありませんっ」俺の言葉を制した彼女の目には大粒の涙。予知夢を見る《楽園》の姫巫女。連れ出したのは間違いなの…

20100508 --263

終着点、すなわち運命の大樹の枝先。辿り着きたかったのはここではない。どこまで戻る? どの枝を進む? まったく同じ結末はない。気の遠くなるほど繰り返せば、望む結末に辿り着けると信じて、もう一回、もう一回。次に進む枝こそが正解でありますように。…

20100508 --262

指先から感じる、充足。欠けていた魂が徐々に補完されていくのがわかる。待て、待ってくれ。俺はずっと**を探していたが、ひとつに戻りたいからじゃない。やめてくれ。俺は**と共に在りたいだけなんだ。完全に融合してしまったら、今度こそ、俺は今度こそ独…

20091213 --215

世界の果てに枝垂桜がある。いつどこから種が飛んできたかわからないが、世界を渡り歩く男が二百年前に偶然立ち寄った時には既に大きく枝を張り花をつけていたとのことなので、樹齢は相当なものだろう。そして今年もまた沢山の花を咲かせ、そよぐ風に花びら…

20091205 --196

暗闇を押し退け、朝焼けが街を照らす。やがて太陽が顔を見せて夜の終わりを告げた。気象予言士によると今は晴れているが昼にはまとまった雨が降るらしい。(葉が全部落ちちゃうかも。きれいなのにな)孤児院の窓から公孫樹並木の下を行く首都防衛隊を見つつ…

20091115 --150

「人として生きんか」その言葉はイネビリアの予期せぬものだった。「お前さんと儂の違いがどこにあろうか。育ての親の死を看取りその葬儀にまで心を配る誠実さが、人のものでなくてなんであろうか。ただお前さんは持って生まれた魂が周りと違っていた、それ…

20091115 --149

唐突な提案に、さしものイネビリアも驚いている。「守護者になれば過去に現われたイネビリアの情報を得るのも容易い。お前さんの話にあったイネビリアの情報があるかもしれん。そして守護者独自の特権も色々ある。……いやそんなことよりもな」ルドルフは一旦…

20091115 --148

少なくともこのイネビリアと自分との違いは、宿す魂だけではないか。そう思えてならなかった。(もったいない)話をすればするほど彼の人間くささが見てとれて、傲慢かもしれないが、このままにしておくのはもったいない気がした。「守護者にならんか?」思…

20091115 --147

ルドルフははっとなった。目の前のイネビリアに対して覚えていた違和感。それは彼の言葉を濁す態度。迷い、躊躇し、言葉を選んで話す彼の仕草が、人間そのものだったからだ。ルドルフが今まで対峙してきた数人のイネビリアに、そういう逡巡するような者は誰…

20091115 --146

イネビリアは終始誠実な態度でルドルフと話した。ただ、答えたくないこともあるようで、時折言葉を濁した。言えないことは誰にだってあるものだと、ルドルフも無理には聞かなかった。そこで気づく。いつの間にか彼をイネビリアとしてではなく、ひとりの人間…

20091114 --145

何故話がしたいと言ったのか。興味や好奇心という単語も当てはまるのだが、その時ルドルフの心を最も占めていたのは、目の前にいるイネビリアから覚える違和感だった。その闇い魂もビリビリと迫る鬼気も、間違いなく彼が人間ではなくイネビリアであることを…

20091113 --144

「礼を言われるようなことでもないんだが」ルドルフはぽりぽりと頭を掻いた。「では、失礼する」「あ、待ってくれ」辞そうとしたところを呼び止められ、今度はこちらが怪訝な顔をする番だった。「少し話がしたい。……構わんか?」イネビリアと話がしたいとは…

20091113 --143

驚くのも無理はない。彼の「時」は正しく流れ、俺の「時」はある程度のところで止まった。《人の内に生きる闇》イネビリアとは、しかしそういうものなのだ。人のようでいて、人とは違う。「……知ったのが数年前だったので、それまで2度も会っていたのに礼も言…