"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

お題でポン

20110405 --344

世界の果て、断崖の桜の前に、剣を持った魔道師がいた。すらりと鞘から抜き、掲げ持つ。「今一人の勇者が旅立とうとしている。その行く先には数多くの困難が待ち受けているだろう。汝が加護を賜りたい」桜の奇跡を宿したその剣が、やがて蒼穹の聖剣として伝…

20100528 --264

世界の果て、断崖の桜が今年も咲いた。季節もなさそうな場所なのに、それでも毎年時期が来れば美しいたくさんの花をつけるのだ。幹や枝、花びらを見ても平凡なものと変わらない。だがこの桜は特別だ。ここに種が辿り着き、育ち、咲く。それはまさに奇跡以外…

20100411 --248

ごろり。地に転がったのは今まで彼と戦っていた男――イネビリアの頭。長刀一閃。恐らく男は斬られたことにすら気づいていまい。戦いの一部始終を見ていた女は腰を抜かして地べたに座り込んでいる。怖い。村を襲ったイネビリアよりも圧倒的な強さの彼が。――守…

20091226 --242

通ってる高校に、いつもヨレヨレの白衣を着ている科学の老教師がいる。年末は同僚の教師も不思議がるほど忙しくしているようで、どこか胡散臭く思っていた。クリスマスイブ、教師宅をこっそり見張っていた俺は驚いた。家から出てきた男は間違いなく教師なん…

20091224 --239

その豪華客船は不意の高波で航行不能に陥っていた。「さあ? 助かるんじゃないですか?」食堂の女中はめんどくさそうに言った。さっきから何度も訊かれてうんざりしているのだ。無責任だろうって? どうでもいいの。手遅れなのよ。船体に穴が開いたってさっ…

20091224 --238

先生の鼻毛はいつもちょっと出ている。いくら切っても必ず1本出てるんだ。しかも、何故か先生の気持ちを反映して、飛び出し具合でサディスティックな気分かどうかがわかる。あー勢い飛び出してるな。そりゃそうか。この2日間胃が痛くなりそうな勢いでワルツ…

20091221 --233

俺のキャンピングカーは何故か白のガルウィング。両側の扉を開くとまるで天使のようだ。そんな車で向かったのは小高い丘。今日は木星と月のランデブーが見られるとラジオで流れていたから。さてと見上げてみれば、木星と月がかなり熱々な感じだった。……なん…

20091220 --232

賢者は毎夜悪夢にうなされた。世界の未来を、人間の運命を憂うがゆえに。愚者はいたって平穏だった。世界の未来どころか自分の明日すら知らぬ、人間の運命などなるようにしかならぬと思うゆえに。だが愚者は賢者が羨ましかった。うなされるのは、何かを知っ…

20091219 --231

今度この長屋に越してきた女は、前に住んでいた所で男に酷い目に遭わされたらしい。「それでか」大家の言葉に八丁堀が頷く。普段は挨拶もしてくる彼女が、きつい視線で睨んできたわけだ。「ただ、飼っている鳥が可愛かったから声をかけたんだが」不意のこと…

20091218 --230

今日、俺のデビュー曲がショップに並ぶ。まだまだ新人の俺のCDは、きっとそうそう良い位置に置いてはもらえないだろう。だけど……見てろよ。いつか世界中が俺のCDで満たされるくらい売れてやる。俺の魂の叫びを世界中に届けるんだ。さあ世界よ、俺の歌に戦慄…

20091217 --229

昔、森は生きていた。年と共に植生を徐々に変え、生えては伸び、伸びては枯れ、鳥が運んだ種が森のどこかでまた生えてを気の長い周期で行なっていた。今のように斜面一つ山一つに同一種を植えては切りの繰り返しではない。本当の森には変化がある。そしてそ…

20091217 --228

あの夜景が好きと言った元彼女は、別の男と付き合い出したら違う夜景が好きと言っているらしい。畜生、男と共に好みも乗り換えか。昼飯食おうと飯屋で定食頼んだら、おばちゃんが元気がない奴は野菜食えとキャベツを山盛りにしてくれた。……味がしない。いや…

20091217 --227

「知ってるのですか? 眠りの森は普通の森ではありません」「知ってるよ、精霊術師以外の人間は1時間程度しかいられないんだろ。大丈夫」「安易に大丈夫など……。怖い人ですね」「どうしてそう心配してくれるんだ」「だってわたし……いえ、貴方が森から帰って…

20091217 --226

黒衣の君、駆ける。一騎のみで、戦場を縦横無尽に、駆ける。右手には黒い刃の太刀を、左手で巧みに馬を操る。敵陣を、駆け抜けた。刀身が黒い閃光となって敵を薙ぐ。その動きに躊躇など微塵も感じられない。駆け抜けた後にはただひたすらの屍屍屍。一騎当千…

20091216 --224

貴族の男が道に座り込んでいる。「てこでも動かんぞ。ここでお春を待つ!」見れば手に食べ物を沢山持っているではないか。お付きのブリティッシュ・メイドが言う。「旦那様。春さんは先日外国の親戚の方に貰われたと」「来る! お春は約束を守る子だ」「だか…

20091216 --223

ここは魔法学校。触媒魔法の授業中だ。とある生徒が隣の生徒と話している。「昨日思いついた魔法を先生に話したら『触媒には直接触ると凍る卵と千人刺した棘を持つ薔薇が必要ですね』って言われたんだ。どこにあるかな?」「お前それは『その魔法は実行不可…

20091215 --222

彼がそのスーツに袖を通す時、それは執行人として依頼が来た時だ。夜明け前の空のような冴えた蒼い色は執行の場においては恐怖と解放の象徴として畏れられている。最期に見る色は美しいものであれ。彼なりの、それは祈りなのだ。そして彼は今日も大鎌を持ち…

20091215 --221

「博物誌なら現実に在るものだけ載せるべきだ」と抗議しに来た人がいた。存在を確認できないものを載せるなど常識的におかしい、と。「伝承があるじゃないですか」プリニウスはさらりと言った。「存在を確認できないものにも、『伝承』があります。私はそれ…

20091215 --220

新大陸が発見された。一通り調査が終了すると、政府主導で移民団が形成された。初回の移民団が入植して半年。掘っても掘っても出てくる大小様々な石。土より石のほうが多いんじゃないか、こんな所本当に開墾できるのかと呪いたくなる。が、全ては子供達の為…

20091214 --218

それにしても随分と遠くまで来たのね。そう、ここにいたの。確かにこんなに見事な花が咲いていたら足を止めたくなるかな。満足そうね? これまでの道程が実りあるものだったのかしら。ええ、迎えに来たの。おかえりなさい、貴方。――そして天使は桜の下で横た…

20091213 --217

空は、環境破壊に起因する現象から地表を守る為に、随分前に機械で覆われてしまった。空が覆われた後、環境省に勤める主が自分に近づかなくなったことに獣は気がついていた。空が飛べないのは悲しいけど、それを気にして主の態度が変わったことのほうが余程…

20091213 --216

故郷の戦乱が嫌で逃げ出して数十年。ギター片手に平和を歌いつつ放浪した。そして辿り着いた断崖。先には何もない。世界の果てだった。大きな木が一本。沢山の花が咲いている。見とれていると上から声をかけられた。白い天使が舞い降りてくる。そうか。ここ…

20091213 --215

世界の果てに枝垂桜がある。いつどこから種が飛んできたかわからないが、世界を渡り歩く男が二百年前に偶然立ち寄った時には既に大きく枝を張り花をつけていたとのことなので、樹齢は相当なものだろう。そして今年もまた沢山の花を咲かせ、そよぐ風に花びら…

20091212 --214

最高裁にまでもつれ込んだ非常に厄介な案件だったが、長年の苦労が実って原告側の完全勝訴になった。勝った喜びは苦労も何も吹き飛ばした。事務所に戻る途中のコンビニで買ったガリガリ君が当たりだったのも良かった。今日の俺キてる。何かキてる。「♪」弁護…

20091211 --212

山向こうの町へ行くのに森を抜ける近道を選んだ。獣道と見紛う細く険しい道を進んできたが、どうやら迷ったらしい。急がねば。夜までに森を抜けねば、妖精が目を覚ましてしまう。妖精とは言うが奴らに可愛いさなどない。手に手にナイフを持つ、殺人が趣味と…

20091211 --211

姫は人気者じゃの。美しい者はそれだけで周りに人が集まってくる。羨ましい限り。妾の顔は……どうしてこうも広大なのじゃ。更に歳も歳、いつ倒れるかわからぬ。ん? そんな歳なのに姫が羨ましいのかじゃと? 女はいつまでも女じゃよ。実の夫にも必要とされぬ…

20091211 --210

森の奥にある女戦士の家に俺は世話になっていた。女は城の政争に巻き込まれた為ここに隠れ住んでいるらしい。そして俺はというと記憶がない。女が言うに、森の中で何故か純度100%の香辛料の袋を持って倒れていたそうだ。記憶が戻ったら帰れと言われた。しか…

20091210 --209

美しい少女は毎晩見る悪夢に悩んでいた。それは友人の一言が原因。「夜中に合わせ鏡の間に立つと両思いになれる」無論彼女は聞いたその夜に試したのだが、実はそれは合わせ鏡の奥に住む夢魔を呼び寄せる方法だったのだ。「わたしそんなこと言ったっけ〜?」…

20091209 --207

「うわあっ」塔を守る黄金竜のブレスが俺を襲う。あまりの吹き荒れっぷりに吹き飛んだ。挙句、壁を突き破って遥か下の地面へ。……動けない。HP0。ゲームオーバー。「くそー」視覚ユニットを顔から外し、親友を睨む。「お前が作ったゲーム、世界観はいいけど敵…

20091209 --206

「マスター、どこですか……?」戦場で彷徨うこと一週間。城から魔法に使う触媒を運んできた妖精は、未だ主と合流できずにいた。主の魔力が枯渇せぬ限り妖精は何も食べずともある程度生きていられるが、その魔力もさっきから感じられない。妖精の頭の中では嫌…