"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2010-10-14から1日間の記事一覧

20101014 --303

首都大門から程近いところに、その孤児院はあった。いつぞや公孫樹並木を眺めていた孤児が蹲って震えている。(怖い……!)心に流れ込んでくる強大な鬼気。大門からだ。何かが大門にいる。耐え切れず、遂に昏倒した。世話役のシスターが慌てて駆け寄る。「ど…

20101014 --302

首都大門での『異変』を、野生の嗅覚とも言うべき感覚で知った者がいる。防衛隊舎で待機していた守護者見習いのロジェだ。「なんだこの闇くて怖い……」じんわりと手のひらに汗をかいている。ただごとではない。「てか、《大結界》が効いてない? どう考えても…

20101014 --301

漆黒の騎馬が首都大門に辿り着いた。迎えるは守護者総帥ルドルフ・モジュール以下5人の守護者だ。「よく来てくれた」ルドルフが声をかける。「この地が、お前さんの旅の終着点となることを祈っておるよ」騎士からの返事はない。ただ、代わりのように、一陣の…

20101004 --300

公然わいせつの現行犯で男が捕まった。往来の激しい駅前に、裸にマントいち枚で現われ、駆けつけた警察官に即逮捕された。取り調べに対して男は言う。「俺はなにも悪いことをしちゃいない!」恰幅のいい腹を撫で、鼻の下のヒゲをぴんと直す。「裸の王様のコ…

20101001 --299

英雄よ、忘るることなかれ。汝が英雄たるは足下にうず高く積み上げられた屍のおかげだということを。その地位は何千何万の屍の上に築かれたものだということを。それを忘れ驕らば、やがて汝がいずこかの英雄の足下に横たわる屍となろう。 #twnovelposted at …

20100927 --298

「その詩は……?」引き込まれる、不思議な雰囲気の詩だ。「昔聞いたまじないだ。効くかどうかは今まで試したことがないからわからない。出発は早いんだろう? もう部屋に戻れ」主は相変わらずの無表情だが、その言葉に乗っている優しさがありがたかった。「は…

20100927 --297

主は両手を胸前で合わせた。そしておもむろに何事かを唱え始める。「『はじまりの風は東から気ままに 北には厳しさの水が流れ 恵みの炎、南を渡る 一日の終わりを西の大地より得ん 我らは夜の底にひと時の安らぎを求め、うずくまる 月よ 願わくば、夢魔より…

20100927 --296

庭で夜風にあたってると、この館の主がやってきた。「眠れないのか」「……ええ」初の単独作戦を明朝に控え、緊張で目が冴えてしまいもう寝ないで出発と思っていたと告げる。「体調管理も作戦の内だ。そして守護者に失敗は許されない」厳しい言葉。だけど、表…

20100918 --295

戸惑わないわけがない。自分の中にあるのに届かないなんて。迷わないわけがない。自分では埋められないものをそれでも埋めようとして、方法が思いつかないのだから。そして唖然としないわけがない。そんな僕のこころに容易に手が届き、方法をさらりと言って…

20100912 --294

「原始大綱の例外世界実験が始まったな」「神が複数存在する世界、うまくいくでしょうか」「大綱の直接適用はその世界が持つ力を極限に低下させ、寿命を早めてしまう。大綱を多数の神に分けて代行させ、世界の力を摩耗させずに条項の執行ができれば、永年運…

20100912 --293

原始世界より混沌に現る神一柱。くるりと回って神ニ柱。混沌消えて天と地に。地の神回って神四柱。四方に向かって方位を宣す。天の神回って神ニ柱。天駆け巡る昼の神と夜の神。四方の神回って神十六柱。あらゆる生き物の基となる。回り続けて八百万。やがて…

20100905 --292

《楽園》を出ても予知夢を見てしまう。変えられない未来、逆らえぬ運命。それはわたし自身にも言えること。「姫……」連れ出してくれた愛しい人が心配そうに声をかけてくる。それを見て悲しくてわたしは泣いた。ごめんなさい。見えてしまったんです。明日、わ…

20100903 --291

毎夜夢にうなされる彼女。悲鳴と共に目覚め、窓辺に立ち、星空を見上げ溜息。震える肩に置くのは俺の手。「姫、また予t「わたしはもう姫ではありませんっ」俺の言葉を制した彼女の目には大粒の涙。予知夢を見る《楽園》の姫巫女。連れ出したのは間違いなの…

20100824 --290

夜、俺はやっと家に戻ってこれた。自分の足で戻りたかったが、そうもいかなかったのが心残りといえば心残り。しかし俺は今あいつと一緒にいる。この上ない幸福とはこういうことだろうか。俺の背中にあいつが語りかけてくる。「どこにもいかねえよ」お前がい…

20100824 --289

夜、わたしたちは一緒にいる。がつがつとご飯を食べる貴方、爪とぎで存分に爪をとぐ貴方を見て、わたしの心は安堵でいっぱい。「もうどこにも行っちゃやだよ」ぐぐっとのびる背中に呟くと、貴方は振り向いて「にゃあ」と鳴いた。 #twnovelposted at 11:47:44

20100824 --288

わたしの前にダンボール箱がある。封はされていないが蓋は閉められていて中が見えない。と、がさごそと音がした。声をかける。応じるようにがさごそ。そして声。間違いない。わたしは蓋を開けた。「にゃああああ!」飛び出してきたのは1匹の雄猫。ずっと探し…

20100824 --287

朝、わたしは支度して家を飛び出した。やっと会える。逸る気持ちを抑えつつ病院に向かった。たった数ヶ月離れていただけと、今なら思える。過ごしてきた一瞬一瞬はまるで永遠のように感じたのに、振り返れば短いものだと思えるから不思議だ。 #twnovelposted…

20100824 --286

昼、周囲の雰囲気が変わったのに気づいた。何だ、何がどうなったんだ。俺はこのままここにいていいのか。あいつに会いたい。あいつに会いたいんだ。そう思って壁を叩いたら、不意に視界を明るい光が包み込んだ。そして──。 #twnovelposted at 11:10:33

20100824 --285

朝、俺は相変わらず狭い部屋に入れられたままだ。くそ、何時の間に寝ちまったんだ。あいつの声が聞こえたんだ。やっと会えると思ったのに……。医者は昨日と同じ。待ってろと言う。俺はもう大丈夫なんだ。行かせてくれ。待っているより会いに行きたいんだ。ど…

20100810 --284

朝、連絡があった。昼、とるものもとりあえず飛び出した。夜、たどり着いた。無事だとわかった。今日は一旦帰って、明日改めて迎えに来ます。 #twnovelposted at 20:04:03

20100731 --283

朝、連絡が入り、昼に飛び出す。夜、目的地に着いた。ここにいるのね。 #twnovelposted at 15:17:23

20100731 --282

夜、ふてくされて寝ていたら、かすかに聞き覚えのある声が聞こえてきた。この声! この声! この声! 聞き間違うはずのない、あいつの声だ。来たのか、ここに。だから、医者は待てと? まだ少し信じられない気持ちもあって、自分からは動けない。本当に? 本…

20100731 --281

昼、管がはずされた。出られるのか? いや、そうじゃなかった。院内の別の場所に移されただけだった。朝いた場所より狭い。おい、どういうことなんだ。俺はもう大丈夫だ。出してくれ。まだ寝てろってどう言うことなんだ。待ってろって? 何をだ。何を待てっ…

20100731 --280

朝、目が覚めた。頭の中がだいぶすっきりしている。体の調子も良さそうだ。だが医者も看護士もまだ休んでいろと言う。それじゃ困るんだ。あいつのところに帰るんだ。そう言っても宥めるように優しく笑いかけてくるだけだった。頼む。帰りたいんだ。もう少し…

20100731 --279

夜、少し起きて長く寝るを繰り返していたらもう夜だ。見上げた窓から丸い月が見える。いつここから出られるんだろう。あいつのところに早く帰りたい。帰ってやらねば。きっと寂しがってる。俺をずっと待ってる。早くここを……。早くここを出て、また歩き出さ…

20100731 --278

昼、どうにか視界が鮮明になってきた。最初に視界に入ったのは管だ。高いところから垂れ下がっている管が体に刺さっていた。液体が体に流れ込んでいる。痛くないのはこれのせいらしい。そこで俺はここが病院だとようやく思い至った。行き倒れていた俺を誰か…

20100731 --277

朝、嗅ぎ慣れぬ匂いに気づいて薄く目を開けたが、視界がぼやけていてここがどこかはわからない。あいつのところに帰りたくてずっと走ってきた。ずっと歩いてきた。最後はもう這いずるように前に進んだ。体中が軋むように痛かった。しかしなんだろう。今、痛…