"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

SIDE-ROGER

20101014 --302

首都大門での『異変』を、野生の嗅覚とも言うべき感覚で知った者がいる。防衛隊舎で待機していた守護者見習いのロジェだ。「なんだこの闇くて怖い……」じんわりと手のひらに汗をかいている。ただごとではない。「てか、《大結界》が効いてない? どう考えても…

20091214 --219

一週間後、ルドルフ爺さんが無傷で戻ってきた。相変わらずの鉄人ぶりかと思ったら、どうやらそうじゃないらしい。「詳しくは帰ってから話す」荷物を置くと爺さんは早々に出ていった。政府高官に会うとか言ってたけど、いつもの依頼の完了報告とも何か違うよ…

20091212 --213

手柄? 立てられるに越したことない。けどそれって傷つく誰かが必ずいるんだよな。俺、そもそも誰かが傷つくところを見るのって苦手でさ。軍にいたり守護者見習いなんてやってるのに何言ってるってよく言われる。あ、でもルドルフ爺さんや他の守護者からはそ…

20091207 --198

夜中、予定より少し遅れて守護者フィガロが首都に到着した。俺は大門まで迎えに行き、隊舎へ戻る道すがら口頭で引継ぎを済ました。口頭で済んだのは大したことがなかったから。敢えて挙げるなら、見回り中に寄った酒場で酔っ払いが暴れていたくらいだ。何事…

20091204 --195

公孫樹並木が続く首都大門前。見事に黄色く染め上げられた葉が風に乗ってはらはら落ちてくる。それを背に受けながら、守護者ルドルフは大陸北部に向けて出発していった。俺は門のところでしばらく見送ったあと、防衛隊舎に向かう。よっしゃー! 俺は俺の仕事…

20091204 --194

《大結界》は目の粗い笊みたいなもんだ。魔物の大物(魔力が強いって意味で)には効果があるが小物は通してしまう。守護者の首都防衛任務とは首都内を見回る防衛隊の統括が主な役目で、実際に見回って歩くものではない。まあ俺は状況把握や勉強も兼ねてつい…

20091202 --190

「馬鹿者、あと半年は修行じゃ」……そんなとこだろうと思ったけどさ。明晩守護者の一人が首都に戻るから、それまでの繋ぎだと。たとえ繋ぎでも、一日任せられると判断されたことに一瞬心躍った。が、浮かれてもいられない。首都に住む200万の命を預かるんだ。…

20091128 --180

ただ、ルドルフ爺さんが出るとなると首都防衛の守護者が不在となってしまう(守護者には首都防衛任務ってのが持ち回りで有り、今は爺さんが担当中)。どうするのかと思ったら爺さんはなんと俺を首都防衛代行に指名した。興奮したのは言うまでもない。俺、遂…

20091128 --179

そんなある日、大陸北部の地下迷宮に住む魔物が近隣の街道で旅人を襲い、複数の犠牲者を出したという報告が入った。二日前に6人の狩人が退治に向かったが、犠牲者を増やしたに過ぎなかったらしい。他の守護者はそれぞれ依頼を遂行中だったので、ルドルフ爺さ…

20091127 --178

研修中でも政府や民間の依頼があればルドルフ爺さんは赴いた。実戦からも学べってことで何度か同行したが、おいおいこれは一人じゃ無理だろってことばかりだった。一応政府や他の級で手に負えない魔物退治がメインだけど、民族紛争の調停とか災害救助の指揮…

20091126 --176

ルドルフ爺さんとの半年はあっという間だった。起きてる間は全部修行。朝から晩まで基礎トレーニングやら組み手やら、更に剣術棒術様々な闘法を学んだ。もう爺さんにはどんだけ引き出しあるんだと心底思った。つか100近い爺さんの動きじゃねえって。……これが…

20091125 --175

確かに置き去りにされた感はあった。でもそれすらどうでもいいと思えるくらい充実した年月を過ごせたので、俺は両親を怨んではいない。何と言っても、守護者への道が拓けたんだしな。……俺が何かしらで動くたびに昔と変わらずビクッとなる二人を見て、無性に…

20091125 --174

ご両親に挨拶しに行く。そう言ってルドルフ爺さんは俺の親に会いに行った。無論俺も一緒さ。久し振りに見た両親は、いつの間にか俺より小さくなっていた。寄宿舎に俺と荷物を置き去りにしてから11年、ただの一度も帰省させず面会にも来なかったくらいだ。知…

20091123 --169

一人以上の守護者から推薦を受け、かつ半年から一年の研修期間の後に合否が下されるという方法もある。俺は大学院に進んだ時に第3級戦士の称号を授与されているので、無称号からの推薦よりは手続きが簡単に済むんだと。面倒な規則だのうって爺さん、あんたが…

20091123 --168

守護者になるって言ってもすぐになれるわけじゃない。第4級傭兵や第3級戦士あたりから始めて、課題をクリアしたり功績を挙げて第2級の騎士か狩人に昇級し、更に課題クリアや功績を積み上げてやっと第1級守護者に挑戦できる資格が得られるという気の長い話だ…

20091123 --167

ルドルフ爺さんは軍のお偉方に俺のことを聞いて腕試しに来たそうな。って守護者にならんかだとー!? 俺てんで敵わなかったじゃんか。それでもいいのか? って訊いたら、鍛え甲斐がありそうなのがわかったから誘ってるってさ。どうせ奇異の目で見られるなら…

20091122 --166

ルドルフ・モジュール。組み手のあとに爺さんはそう名乗った。俺は飲んでた水を派手に吹いたね。そしてむせた。ルドルフ・モジュールつったら守護者じゃねえか。しかも登録No.1、守護者総帥の鉄人ルドルフだ。そりゃ勝てねえよ。生きた伝説が目の前にいる。…

20091122 --165

負けた。もう負けに負けた。完膚なきまでってのはまさにあのことを言うんだな。ぽいっぽい投げ飛ばされてやんの。かっこ悪い。こっちは得物使ってんのに、徒手空拳の爺さんに勝てやしねえ。なんだこの爺さん。化物かよ。きっとあの時の俺は親が俺を見た時と…

20091122 --164

学校も俺の才能を抱え込み切れなかったらしい。飛び級で大学院まで行ったが、学問は俺的にどうでも良くて、軍の戦闘術――特に格闘系の演習にのめり込んだ。そこでも敵はいなかったがな。そんな退屈だった俺のところに、あの爺さんが来たんだ。その日は、俺の1…

20091122 --163

俺が類まれな才能を持ってるとわかると、親は喜ばなかった。化物を見るような目で俺を見るようになった。あれだな。イネビリアかと疑ってるんだろう。生憎と俺は普通の人間なんだが。って軍の寄宿舎付学校に行け、か。また体のいい厄介払いを。了解、これも…