"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

禁忌の力

20141210 --783

「戻りなさい」声は告げた。「次に目覚めた時に君達はもうここを思い出せない。だがそれは正しい。忘れられるというのは人に与えられた特権だ」少年は瞬きをし、周囲を見渡してから言った。「仰る意味がよくわかりません。それにここには僕しか」言い終わる…

20141210 --782

その声は男であり女であり、老いた者を思わせながら幼くもあった。いくつかの問答をこなすと、声は次が最後の質問だと言った。「本当は何が欲しかったのだ」しばらく考え込んでから少女は答えた。「場所が欲しかった。生きる為の時間はあったから。ただわた…

20141210 --781

その声は男であり女であり、老いた者を思わせながら幼くもあった。いくつかの問答をこなすと、声は次が最後の質問だと言った。「本当は何が欲しかったのだ」しばらく考え込んでから少年は答えた。「時間が欲しかった。生きる為の場所はあったから。ただ僕に…

20141204 --780

世話役の研究員に連れてこられた部屋には自分よりも幼い女の子がいた。不意の登場に驚いたのか怖かったのかはわからないが、慌てて彼女に付き添っていた女性研究員の後ろに隠れ、そっとこちらの様子を窺ってくる。その一連の動作は、以前本で読んだ小動物の…

20141128 --779

実験を生き延びたのは2人。ひとりはある財閥本家の後継者だったが病弱を理由に継承権剥奪の上で遠縁に養子に出され、さらにそこからも厄介払いの如く今回の募集で研究所に放り込まれた7歳の少年。もうひとりは貧民街で口減らしに売りに出されていた、元の家…

20141126 --778

『霊子力が無限のエネルギーではないと判明した今、求められるのは如何に霊子の減少を抑えるか、または増やしていくかという打開策だ。効率の良い運用方法も求められるだろう。実験するに既存の法律が足枷となっているなら、財界から政府に圧力をかけさせろ…

20141126 --777

七歳までは神の内という古い言い伝えに奇跡的に辿りついたある科学者が、自説の裏づけの為に世界中から七歳以下の子供を何らかの方法で集めたのが半年前。長年共に過ごしてきたはずの助手をして「狂気に彩られた世にもおぞましき実験」と言わしめた人体実験…

20140226 --755

方法が確立するまでに失われた命の数は小国の人口に匹敵、もしくはそれ以上という噂もあった。それほどの犠牲を強いてなおやらなければならない『実験』とは。発案者は言う。「これは、近い将来必ず行き当たるエネルギー不足と人口減少に伴う文明的衰退から…

20140226 --754

実験は困難を極めた。まず被験者らから魂魄を剥がした時点で大多数が死亡、剥がした魂魄を分割した際にその半分が消滅。分割した魂魄の被験者への再移植及び定着時に至っては手順を誤って遊離させてしまった魂魄が定着成功した被験者の魂魄と融合してしまう…

20130312 --683

『「宇宙が収縮している? バカな、ビッグクランチが起こるにしろ、それは10の27乗年先のはずだ」』(先週発売された週刊誌掲載の匿名記事より抜粋。《政府の極秘回線による通話の盗聴内容を暴露する》という異色の問題記事。ちなみに現在このライターは行方…

20120612--564

霊子による発電の研究が進むと、発電量の増加をテーマにする企業や機関が多数現われた。代わりに、前時代から続いていた充電量や自然放電による減少を如何に抑えるかという電力の保管に関する研究はあまり重要視されなくなっていった。(『霊子力発電研究史…

20120612--563

祖父は朝から発電所にいる。発電所といっても、先日訪れた海のそばに建つあの建物群ではなく、街中にあるビルの一フロアだ。機械とケーブルで繋がったポータブルの血圧計で使うようなバンドを左上腕に巻いて半日程ベッドの上にいるだけで、この街なら約十日…

20120612--562

『ヤギやヒツジ、サルのクローンには魂が宿ったが、人間のクローンには魂が宿らなかった。』(──研究所の実験室の片隅に隠すようにしまわれていた、表紙に『極秘』『持出厳禁』の赤字印が捺してあるぶ厚いレポート。作成者の名前は、水でもかぶったのか滲ん…

20120610--561

『霊子は魂核のフォンテム機関より生じて魂体を満たす。マーキングした霊子の動きをトレースしてみたが、ある程度魂体を巡ったところでロストした。存在維持用のエネルギーを放出し切った霊子は機関に循環せずに消失するのが確認された。』(ヤマノフ博士の…

20120610--560

『魂は存在維持の為に霊子を生み出し続ける。何かを生み出すには相応の材料が必要なはずなのだが、不思議なことに霊子の器である魂の外殻はその霊子すら通り抜けられない構造体で形成されており、何かを吸収できるようにはなっていない。』(ヤマノフ博士の…

20120608 --559

『霊子力』。魂が存在維持の為に作り出すエネルギーをそう呼び出したのが誰かは、いかなる資料をあたっても見出すことができなかった。ただ、単細胞のような存在と言われてきた魂が実は計測できるギリギリの単位ほど細かい粒子の集まりだとわかってから言わ…

20120608 --558

文明を維持発展させる為に必要なエネルギーを生み出そうと様々な資源を食い続けた人類が大きなエネルギーを必要とした時にその手に掴んだ原子の力は、それが生み出すエネルギーの大きさも然ることながら、ひと度トラブルが起こった場合のリスクの大きさもこ…

20120608 --557

『魂』が科学的に証明されて早数十年。特殊なフィルターがなければ目視もかなわぬそれが莫大なエネルギーを持っていると知ると、人類はそのエネルギーの抽出法、現存システムへの編成術(編成不可能な場合は現存システムを変更しなければならないのでその対…

20120608 --556

海の近くにあるその建物群は『発電所』というらしい。夕方になって祖父の家に戻ると、僕は旧式の壁掛け端末を使って早速調べてみた。「発電所……。昔は、電気をあんな大きな建物で作ってたの?」「ああ、そうだよ。昔はあのくらい大きな建物じゃなければ、電…

20120608 --555

賑やかな街中を抜けると段々と家も店もなくなっていった。多忙な両親の許から祖父の家に預けられたその日、僕は祖父と海の近くに来てみた。そこには古い、錆びた鉄塔やあちこち崩れ落ちている大きな建物が散在していた。「おじいちゃんがまだお前くらいの時…