"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

緋岩街道

20140623 --771

獲物に向かって急降下する妖鳥に横殴りの突風が襲いかかる。いや、実際には風など吹いていなかった。そう感じさせる何かが起きたのだ。驚いた妖鳥は体勢を整えようと羽ばたいた──羽ばたこうとした。軽過ぎる手応えに周囲を見渡す。なんと右翼が付け根から失…

20140615 --770

彼らのはるか頭上で妖鳥は緩やかな弧を描く。豪雨や雷鳴もむしろ自らを引き立てる演出と思っていそうな、優雅ささえ見出せる飛び方だ。人間二人と馬二頭、その気になればひと呑みで終わる。あとは気分とタイミングの一致を待つだけだった。そして、その「時…

20140610 --769

緋岩街道上空に立ちこめる暗雲は彼らの上に容赦なく雨を叩きつけた。轟く雷鳴にかぶさるように、何某か、生き物の鳴き声が耳に届く。空腹が過ぎると山をも飲み込むと言われている伝説の、隊商も遭遇したら運の悪さを呪うしかないといわれる巨大な妖鳥が近づ…

20140517 --766

『緋岩は彼岸と悲願に通ず』。街道手前にある街での、古老の語りを思い出す。この街道では魔物の襲撃によって死ぬ者が多く、金がなくて隊商に入れぬ単独または少人数での移動を余儀なくされる者らは生還の悲願を胸に街道を走らねばならない。これはそれを由…

20140517 --765

それは恐らく彼らに「それがある」と気づかれる前からそこにいた。街道の先。米粒のような騎影。距離がまったく縮まないところから進行方向は同じ。時折見失うものの気がつけばまた前を行くので進む速度もほぼ同じなのだろう。しかし、この緋岩街道を一騎で…

20140517 --764

緋岩街道西端を行く、大荷物を載せた二頭の馬と、それを牽く二名の男。現在、目的地まで約四日の位置、魔物多きこの地を無謀にも隊商を組まず、寝る間も惜しんで夜すら進む。急ぎ歩を進める彼らの遥か前方、暁光がほのかに朝の到来を匂わせる、そんな道の上…