"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

twnovel

20140303 --756

流した涙が宝石に変わる妖精は殺された青年の家にいた。見つけたのは闇で稀少生物を扱う業者だった。業者は妖精を連れ帰り、凄惨な仕打ちをしてその涙を得た。苦悶の果てに流す涙はより良い宝石に変わるのだ。「匿ってた奴は馬鹿だな。宝石売った金で用心棒…

20140226 --755

方法が確立するまでに失われた命の数は小国の人口に匹敵、もしくはそれ以上という噂もあった。それほどの犠牲を強いてなおやらなければならない『実験』とは。発案者は言う。「これは、近い将来必ず行き当たるエネルギー不足と人口減少に伴う文明的衰退から…

20140226 --754

実験は困難を極めた。まず被験者らから魂魄を剥がした時点で大多数が死亡、剥がした魂魄を分割した際にその半分が消滅。分割した魂魄の被験者への再移植及び定着時に至っては手順を誤って遊離させてしまった魂魄が定着成功した被験者の魂魄と融合してしまう…

20140213 --753

造られたもの。選ばれたもの。見放されたもの。愛されなかったもの。崇め奉られた末に不浄として虐げられた、その身を器として捧げた運命のこどもたち。引き離されそうになった時、残されるはずだったひとりがもうひとりを連れて逃げた。お前らの勝手な都合…

20140211 --752

雪で世界は白く染まった。今なお空から舞い降りるそれは非情なまでに美しい。そんな中、ぼくたちは歩く。聞こえるのは雪を踏みしめる音ときみのむせび泣く声だけ。他には何も聞こえない。雪は音もなく降るのだなと思った。繋いだ手の温もりが、この世界が幻…

20140204 --751

甘い香りがうっすらと、風に乗って流れてきた。振り向くとそこには梅の枝を抱えた睦月が立っている。「待たせたね、如月」言いつつ襷と共に枝を渡された。「沢山咲いてるけど蕾もあるから、そっちで咲かせて欲しいと思って」「そっか、了解」まだしばらくは…

20140101 --750

鐘の音が大晦日の夜に響き渡る。ようやく年越しの準備を終え、扉の前に辿り着いた。あとは引き継ぐだけだ。やれやれと胸を撫で下ろす。振り返れば今年も色々あった。だけど、辛いことも楽しいことも全部、きちんと来年に届けたい。さ、時間だ。そして師走は…

20131210 --749

画商が店の奥から一枚、絵を出してきた。画布の真ん中に大きいな白円。その周りを黒の絵の具が厚く塗られている。見覚えのあるタッチだ。六枚目だ、と画商は言う。五枚の連作ではなかったのか。「これはだいぶ後、画家が死ぬ直前に描いたらしい」題は《また…

20131210 --748

三枚目と四枚目。縁取る白線が右回りに一本ずつ増えていく。題すらない。五枚目。縁取りは左辺に達し黒を囲んだ。この五枚の絵(と呼んでいいかは別問題として)は連作で、《混沌》は《原始世界》に包み込まれているということを言いたいのだろうか。題は《…

20131209 --747

二枚目。画布の大部分は一枚目と変わらず黒で塗り潰されている。違うのは上辺。端から端まで指ひと関節分ほどの幅の塗り残し……いや、白の絵の具が塗られている。こちらは筆で均一な塗り方だ。作者名はこれにもない。また題名らしきひと言が添えられている。…

20131209 --746

「大切な人が、昔、あるいは今、もしかしたら未来に消えたの」遠い目をして黒髪の少女は言う。「自分以外の誰かの為に戦って、傷ついて、何があっても絶対諦めない、そんな人。わたし、捜してるの」掌の鍵が怪しく輝き出す。「ここには……いないね」言葉だけ…

20131206 --745

一枚目。画布は黒で塗り潰されている。面は均一ではなく、パレットナイフで所どころ厚く、または波打つように絵の具が乗せてあり、それが影を落としてより一層暗い部分を作り出していた。作者名はない。ただ、題名らしきものがひと言添えられている。《混沌…

20131206 --744

どうにも寒いと思ったら夜半には雪が降り出した。軒下で時間を潰していると、息せき切って駆けつける者がひとり。「遅れてすまない、霜月」随分と待ったが、待ち人が彼たる所以を思えば仕方あるまい。「忙しいところ悪いね。あと少し、君に任せたよ」そう言…

20131127 --743

ふと、キー打つ手をとめ、椅子から立ち上がった。静まりかえる夜の谷間、そっとベランダに出る。深呼吸をして肺の中の空気を入れ替えた。ひんやりとしたそれは体の隅々まで行き渡り、そしてこごった心すら濯ぐ。軽く伸びつつ空を見上げれば、火星を従えた月…

20131115 --742

「みかんくれ」 こたつのかどで わがこたつ #twnvday #twnovel posted at 00:21:19

20131115 --741

暗赤色の瞳が闇に浮かぶ。四本の足が周りを囲み、柔らかい体皮が覆い被さるように長く垂れていた。古くから住む妖怪で、主に人間を餌とする。魂まで抜き取る様子から土地の者は「魂脱」と呼び恐れていたが、調査した学者の聞き間違いから「こたつ」として世…

20131111 --740

時間の魔女よ。あなたは何故ここにやってきた? 運命という名の神の御手によるものか、はたまた己の意志か。時の流れの前に無力な俺を笑いにでもきたのか。大河の奔流にただその身を任せるしか術のない枯れ葉のような俺を。そんな目をするな。憐れむような、…

20131106 --739

気がつけば東の空がうっすら明るい。窓越しの夜空では星がその明かりを徐々に落とし始めていた。何だか寝つけないからと本を読み進めていたら夢中になってしまいこんな時間だ。苦笑しながらしおりを挟んで本を閉じ、ランプの火を消し、毛布の海に潜り込む。…

20131106 --738

金木犀を残して神無月が去る。その背中はどこか疲れていた。神様の引っ越しや災害で失われた命に対して必死に祈りを捧げたからだろう。残る霜月は鼻孔をくすぐる花の香りに安らぎを感じつつ、次に神無月と交代する時には晴れやかな顔でいてくれるといいと願…

20131024 --737

みんな失くした。気づけばこの手は何も掴んじゃいなかった。それを見て当たり前よと君は言った。自分から離れていったでしょう。恋人から、家族から、友達から、仲間から、世界から。そして貴方は一人になった、と。じゃあ君は何故そこにいるの? わたし? …

20131023 --736

この世界を滅ぼせと仰るなら、私は迷わず受けましょう。この世界を守れと仰るなら、私は喜んで受けましょう。この世界を愛せと仰るなら、私は暫し悩むでしょう。貴方以上に愛せるものなどないのですから。そして思いつきます。ああ、貴方ごと世界を愛せば良…

20131021 --735

蓮の花びらを一枚、二枚。めくる手が震えているのは、花の奥にある世界を思ってか。しかし決めたのだ。もう戻らぬ場所ならば、思いを残す者もなし、ただあるのは、我を虐げた小さな世界。さようなら、さようなら、わたしを愛さなかった世界。わたしが愛せな…

20131011 --734

巨大な柱に対して男は無言で斧を振るう。あと少し。あと少しでこの柱も倒れる。世界を支える十二の柱、最後の一柱が眼前のこれだ。全てに絶望した時、悪魔が彼の元に現われ、斧と柱のある場所を示す地図を渡した。ただし、それをどうこうするのも自由だ、と…

20131009 --733

世界を終わらせる音がする。それは父の声であり、母の声であり、祖父や祖母の声であった。「奇妙なことを言う」「おかしな子」そんな言葉が、これから広がったかも知れない彼の可能性を潰した。そして、成長した彼に向かって平然と言うのだ。「個性のカケラ…

20131009 --732

世界を終わらせる音がする。それは天使の吹くラッパ、教会の重厚な鐘の音。遍く大地に残酷なまでに美しく響き渡るが、聞く者にこれこそがコキュートスを吹く風と思わせ、心胆を等しく寒からしめた。──音が止んだ。始まる。人の全てを焼き尽くさんとす、天使…

20131001 --731

長月に伴われて、月の境目に文月と葉月がやってきた。「今年の夏はあまりにも暑かったので」ぼそっと文月が呟く。「北へ北へと進んでいたら、今度は寒くなってしまって」続けて葉月が言った。「いつの間にやら秋でした、と」長月が結んだ。神無月はため息混…

20130920 --730

徒に過ぎた時間の分だけ、貴方のぬくもりも遠ざかる。現在も、過去も未来も探したけれど、符丁ひとつ見つけられない。己の無力さに肩を落とすわたしの上を、満月が横切ろうとした。思わず掴もうと手を伸ばす。できやしないのに。だから。代わりに。わたしの…

20130920 --729

降り注ぐ光は差し伸べられた貴女の手のようだ。探し続け、待ち続けた幾年でできた溝を埋め尽くそうと、それは蒼白く寒々しいはずなのに、仄かに暖かみすら感じさせる。己が手で受けようとするも、やはりそれは掴めるものではなかったが。月見て流す涙は、地…

20130919 --728

あの人、わたしと同じように月を見上げてくれるかな。時間の流れが違うほど遠くでなければ、きっと今夜は素敵な満月、祈りを捧げたくなるほどの美しい月。本当はね、一緒に見上げたい。でも、わたし、あの人みたいに上手に世界を捲れなくて会いにいけないん…

20130919 --727

再び文字が盗まれた。「次は何を盗られた?」「わからぬ」「ひふみよ……5文字だな」「5文字!? 先程のも含めると6文字になるぞ!」「ひと度でこれほどの文字を盗めるとは何者の仕業か……」「ここで立ち止まって話しても何も探せぬ。とにかく進むぞ。ひと文字…