"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2013-01-01から1年間の記事一覧

20130621 --713

その『意識』は、運命の大樹の、枝先まであとひと節という場所に生まれた。結末──枝先に生る果実を掴むまでの距離はほんの僅か。選択できる事象も無いに等しい。それでも彼らは進んだ。たとえ幼子が吹くしゃぼん玉ほどの刹那の時だとしても、見届けたいもの…

20130617 --712

「素麺を食べるだけの人は幸いである。彼らは茹でる時の暑さを知らない。ただ冷たい麺を冷たい汁につけ、食べるだけである」「お、おい、鍋の前で母さんが何か諳んじ出したぞ」「わかんねえのかよ、父ちゃん。あれは父ちゃんが『今日は暑いから素麺でいいや…

20130615 --711

暗い店のそこかしこで男達が横に座る女達に迫る。「この位いいだろ、金払ってんだから」「こんなに愛してるのにわかってくれないのか。確かに俺は無職だけど」「仕事終わるまで待ってる。君、どこ住み? 送ってくよ」そんな男達に笑顔で応える着飾った女達の…

20130614 --710

カップを覗くと、コーヒーとミルクが交互にぐるぐると渦を巻いている。やがて境界線は混ざり、溶け合い、新たな色に変わっていく。「わたし達みたいよね」唐突の呟きに隣で読書中の貴方が不思議そうに視線をこちらに向けた。わたしは笑って言う。「これから…

20130614 --709

気がつけばそこは始まりの場所。散々迷ってあちこちに行けども、結局はここに戻ってくる。どんなに足掻いてもどこにも辿り着けないのなら、最初から動かなければいい。動くだけ無駄じゃないか。だが。しかし。そう思いつつも、どうしても、歩き出す。手を伸…

20130607 --708

桜の勢い、いよいよ北端に辿り着き、それと時を同じくして、皐月が去り行く、春を連れて。「また来年、綺麗な花が咲きますように。祈りの言葉を木々に宿らせましょう」そう言い残し。水無月はそれを見て、入れ違うように夏と来る。その足もとを彩る紫陽花に…

20130514 --707

迷えば失い、惑えば飲み込まれる。そこには普遍的な正しさなどなく、強引にでも掴み取り、躊躇なく辿り着いた者だけに絶対の選択の中から望むものを得るチャンスが与えられる。そう、与えられるのはチャンスのみなのだ。最後の最後まで全ては不確定。運命は…

20130513 --706

あなたの歌を聞いて元気が出ましたって言われることがある。でもね、きっと、元々その人の中に『元気になりたい』っていう願いがあって。それが歌を切欠に表面に出てくるんじゃないかしら。あ、もちろんそう言われることが嫌じゃないの。逆よ、逆。とても嬉…

20130505 --705

卯月が皐月に襷を託す。儚い花の咲くのを添えて。「今年は少し、暖かくなるのに時間がかかるかもしれない」と卯月が言えば「でもきっと遅れた分だけ素敵な季節になるはずよ」そう言って皐月は朗らかに笑う。とはいえ暦はもうすぐ夏。北方も早く過ごしやすく…

20130425 --704

それは命を賭してまで叶えるべき願いではない、と? 何を言うか。それに如何なる価値があるかを定めるは汝ではなく我なり。理解できぬのなら口を噤んで下がっているがいい。笑いたければ我が消え去りし後に高らかに嘲りたまえ。存分にな。ただ今は、どうか今…

20130425 --703

明確な目的地も定まらぬまま、徒に時間は過ぎ、歩く距離ばかりが増えていく。登るは険峻、降るは峡谷、往くは永久なる運命の枝。あとどれだけ進めば、望むものに手が届くのだろうか。あとどれだけ進めば、かの者の髪の先を、この手で掴めるのだろうか。風に…

20130412 --702

時間魔法か。多少なら使える。だが、あの『時の魔女』のように誰かを今と違う特定の時間に送るなどといった緻密なことはできない。周到な準備をすれば別だが、咄嗟にできるのはせいぜい自分の手の届く範囲の時間を操る程度だ。時間軸を飛ぶには力が足りぬ。…

20130412 --701

ギターとヴァイオリンの音を纏い、女は踊る。名うてのダンサー、ではない。恐らくより優れた者は確実にいる。踊り自体はその程度のものだ。だが、その一心不乱に踊る様は、燃え上がるような真紅に色づいた薔薇を思い起こさせる情熱さを持ち、それを以って観…

20130412 --700

夕暮れ。世界が鮮やかな橙色に染まった。水平線に沈みゆく太陽を背に男がひとり立っている。まるで絵画のような風景が背後に広がっているのに、気に留めた様子はない。波が彼の踝までを何度も洗うが、それすらも意識の外のようだった。彼は待っていた。冬の…

20130410 --699

終わらぬ思いも終わらぬ命もないのだと、受け入れられるまでどれほど心を強くせねばならぬのか。まだまだ手放すつもりもなかったものを、もしかしたらひょっとしてと、油断すれば心押し潰さんとする深い疑念と暗い恐怖に、一体いつまで耐え忍べば良い? 確か…

20130410 --698

手放すまいとみっともなく縋りつく。構うものか。失うことに比べたら、恥辱など毛ほどの影響もない。時間よ、奪いたもうな。絶望よ、道をあけよ。光よ、指し示したまえ。答えはいずこにやあらむ。奇跡はいずこにやあらむ。泣けば良いか。叫べば良いか。見つ…

20130410 --697

わたくしは恐ろしいのだ。失いたくないと心底願ったもののはずなのに、いつしか色も褪せ、遠く離れ、煩わしくなっていくことが。そして、失ってしまうことが。行くな行くな。まだ行くな。まだこの手の中に。まだこの心の中に。何故もっと強く、もっと強く、…

20130410 --696

永遠に続くものなどないのだと、時間は理想ではなく現実を無慈悲に突きつける。失いたくないものを易々と奪い去っていく。覚悟も何も決められずにいるこの瞬間にも、それは、確実に、着実に、近づいてくる。見えているはずなのに見えぬものが、突然世界を覆…

20130402 --695

不意の暖かさに桜は目を覚まし、冬を追い立てるかの如く弥生の平地を足早に駆けた。漸う卯月が追いつけど、辺りは既に花びらを手放し、新緑が顔をのぞかせる。枝に身を寄す小鳥が歌う。新たに始まる一年に、これから出会う一縁に、期待と希望と祝福を。 #twn…

20130330-31

おお、今こそ汝を抱きしめん…… #twnovelOFF #twnovel posted at 17:57:04 空に引かれた飛行機雲を見ながら、川魚入りのきしめんを音を立ててすする。ああ、うまいな。美味しく物が食べられるというのは、それだけで幸福と呼べるのではないだろうか。 #twnove…

20130330 --694

風が吹くたび視界を埋め尽くす桜の花びら。手を差し出せばすぐに何枚も積もる、それほどの花吹雪。先を歩くあなたの腕を慌てて追いかけて掴んだのは、不意に花びらに遮られた視界のせい。あなたは一瞬驚いた顔をして、それから、ふわりと、笑った。「大丈夫…

20130326 --693

世界の果て、断崖の桜が月明かりに美しく照らし出されている。「今年は、やけに早いな」「桜は満月に向かって咲くと申しますれば……」「ん? ああ、明日は満月なのか。いやそれにしても一回りほど早いじゃないか」とある主従が枝垂桜を見上げながら、他愛もな…

20130323 --692

描き出されたのは空を覆いつくすかと見紛うほどの巨大な魔法陣。彼らがその存在に気づいた時には、もう遅かった。「まさかっ、発動にはあと、少なくとも三日はかかると」恐慌状態の敵軍を見下ろしながら、塔の頂上で彼女は呟いた。「見くびられたものだな。…

20130321 --691

忌々しくも、今、居間にいます。イマジンじゃねえよ、単なるヒマジンだよ。 #twnvday #twnovel posted at 22:31:45 「今」っていうお題候補があったんだったかな。 - うん、イマイチ #twnvday7 posted at 22:33:35

20130319 --690

諦めろ。呼べど叫べど、誰も来やしない。見張りも格子もない代わりにどこにも繋がっていないのだから。ここは夜の牢獄。月と星だけが知らぬ顔して通り過ぎていく。もうじき、朝になる。昼日中生きるを許されぬ我らは、あの山から一条でも太陽の光が差したら…

20130319 --689

おかしなものだね。拒絶してきたのは君のほうじゃないか。今更なんだい? 己の意のままにならぬ、そぐわぬと言って去っていったのは君だ。どうして再びここに現われて、一緒に歩こうと言うのだね? ほう。覚えていない、とな。それはまた随分と都合のいい記…

20130319 --688

救いがない? そんなの当たり前だ。あらかじめ誰かが準備してそこかしこに仕掛けでもしない限り、打開などできるものか。孤独な者には無縁の言葉だよ。ああ、例外もいることにはいるが、それを知ってどうする? ひとりきりでも揺るがずにいられるなんて、お…

20130319 --687

叶わぬ思いに身を焦がし、望むものに手を伸ばせども一向に掴めず、挙句、絶望の果てに墜ちる先が地獄なのだとしたら、今まさに生きているこの世界そのものが、わたしにとっての地獄。願い? 希望? そんなものは慟哭と共にとうの昔に消え去った。今ここには…

20130315 --686

出会わなければ、いいえ、あなたという存在を一切知らずにいられたならば、こんなに焦がれることもなかっただろうに。無明の闇を漂い、彷徨い続けながら、それでも刹那の邂逅を求めて、這い蹲り、足掻き、繰り返す。何度も何度も。それに一体何の意味がある…

20130314 --685

羨んではいけない。羨んではいけない。だけど、なんで、いつも傍にいられるんだ。途方もないような時間の果てにようやく辿り着けたと思ったらまたすぐ離れていく僕とは違って。ああ、まただ。また離れていく。後ろ髪を引かれる思いで、終わらない孤独な旅は…