"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

精霊の贈り物

20121225 --643

ジェーニャはスコーチャが持つ星飾りを見ました。そしてにっこりと笑って言いました。「とびっきりの、素敵な贈り物をありがとう!」星飾りはお日様の光を受けて、まるでウィンクするかのように、キラッと輝きました。 『精霊の贈り物』おしまい #twnovel po…

20121224 --640

周りで聞いていた複数の子供から次々に同意の声があがりました。大人達も頷いて言いました。「みんな知っていたよ。口にこそ出さなかったが、ジェーニャが寂しい気持ちを抑えて、遊びたい気持ちも堪えて、泣き言も漏らさずにいたことを。精霊はそれをお見逃…

20121223 --638

「そしてそのきっかけを作ったジェーニャは、お父様が海で行方不明になってから今日まで、一生懸命にお母様のお手伝いをしてきたわ。朝の新聞配達をやって家計を助けてもいたよね。それは確かに人助けみたいな目立つことではないけれど、わたしはえらいな、…

20121222 --637

「お星様は、ふたりのことをちゃんと見ていたのね」と話に入ってきたのはこれまで黙って聞いていたナフカでした。ジェーニャとスコーチャは意味がわからず、首をかしげました。「勇気を出してスコーチャは病院からたくさんの人を救い出した。これはもう、誰…

20121221 --636

「実際に勇気を出して助けたのはスコーチャだ。だから、お星様はスコーチャのものだよ」それを聞いたスコーチャは今にも泣きそうです。ジェーニャは困ったように笑いました。「でも、言ってくれてありがとう。それを聞いて、僕はやっぱりスコーチャがもらっ…

20121220 --635

それを聞いて周囲もジェーニャも驚きました。驚きつつもジェーニャはゆっくり首を横に振りました。「ううん。それを言ったら僕だって同じようなものだよ、スコーチャ。あの抜け道の前で思いついたはいいものの、怖くて怖くて。迷ってた時に君が来たんだ。そ…

20121219 --634

「本当は……、ジェーニャ、本当は、これは君がもらうべきものじゃないのかい? 僕じゃなく。だって僕は、君が抜け道から助けにいこうとしたのを止めて代わりに行ったに過ぎない。あの時、抜け道の入り口で君を見つけなかったら、僕は病院に助けになんていかず…

20121218 --627

ところが、おめでとうと言われたにも関わらず、スコーチャは浮かない顔です。「どうしたの? スコーチャ。お星様もらえたのに嬉しくないのかい?」思わぬ反応にジェーニャはきょとんとして、そう尋ねました。ぎゅっと口の結んだスコーチャは、しばらく黙った…

20121217 --625

「ジェーニャ」ひしと抱き合う親子に近づく、背の高い少年がいました。その両腕に大きな星飾りを抱えています。スコーチャでした。「ああ、おめでとう、スコーチャ。……やっぱり、スコーチャが星飾りをもらったんだね」お父さんから離れたジェーニャは涙を拭…

20121216 --619

そこに再びのどよめきです。ジェーニャのお母さんが数人の大人とやってきました。ジェーニャを呼びにきたナフカと同じく、港の工場にいるお母さんを呼びに行った人がいたのです。着くや否や、涙まじりの大きな声でお父さんの名前を呼び、抱きしめました。強…

20121215 --618

目が覚めてからもしばらくは事故のショックで話すことも体を動かすこともできず、身元がわかるまでに長い時間がかかったそうです。「随分と心配をかけたな。大変だったろう」お父さんはジェーニャの頭をくしゃくしゃと撫でました。「ううん、僕は大丈夫。僕…

20121214 --615

「お父さん、今までどこにいたの?」泣きながらジェーニャは聞きました。「外国だよ。ここからずっと遠くにある国だ。船から落ちた後に気を失って詳しいことはよくわからないんだが、どうやら海流に乗って遠くに流されたらしい。浮かんでいたところを外国の…

20121213 --614

「ただいま、ジェーニャ」お父さんはにっこり笑って言いました。まるでそれが合図のように、ジェーニャの目から大粒の涙がぽろぽろと零れます。「おいおい、男の子が泣いちゃダメじゃないか……っていうのも無理があるか」お父さんは苦笑しながらジェーニャに…

20121212 --613

ジェーニャの目ははちきれんばかりにまん丸になっています。驚き過ぎて瞬きもできません。行方不明になって約5ヶ月、何の音沙汰もなく、周囲の大人も亡くなったと思っていました。それなのに、突然目の前に現れたのです。「お、お父さん?」小声でそう呼びか…

20121211 --612

いざなわれるように、割れた人波の奥に進みます。そこには男の人が立っていました。ジェーニャはとても驚いて思わず立ち止まってしまいました。何故なら、そこに立っていたのはお父さんだったからです。夏に海で行方不明になって、大人達がどれだけ探しても…

20121210 --611

広場にいる子供も大人も皆、ツリーの根元近くに集まって何かを囲んでいました。「ジェーニャを連れてきたわよっ!」そこにたどり着くやいなや、ナフカは大きな声で言いました。集まっていた人達が一斉にこちらを向きます。そしてざわめきと共に、人波がさっ…

20121209 --610

中央広場が見えてきました。たくさんの声が風に乗って聞こえてきます。星飾りが落ちるのを待っていた子供達と片づけにきた大人達の声でしょう。落ちてから大分経つはずなのに子供達はまだ多くいるようです。それに大人達も、片づけに集まっているにしては作…

20121208 --609

普段はおっとりしているナフカがこれだけ慌てるなんて、中央広場では一体何が起きているのでしょう。(よっぽどのことが起きたに違いない)ジェーニャは素直にツリーを見に行かなかったことを悔やみました。とはいえ今は急ぐだけです。雪に時々足をとられつ…

20121207 --608

この慌てぶり、帽子を取りに行く隙はなさそうです。「わ、わかったよ」急かすナフカを背に玄関の鍵をかけました。「急いで!」ナフカはジェーニャの手を引いて走り出しました。ジェーニャはそのあまりの迫力に圧倒されてしまい、何故急ぐのか、何があるのか…

20121206 --607

聞き覚えのあるナフカの、これまで聞いたこともないような慌てた声に驚きながら、ジェーニャは急いで扉を開けました。そこには全速力で走ってきたらしい真っ赤な頬をしたナフカが立っていました。「ど、どうしたの? ナフカ」「今すぐ来て! 一緒に! ツリー…

20111231 --495

ジェーニャは薪ストーブの空気口を閉じて火を消し、外出の準備を始めました。あとは帽子をかぶればいいというところで、玄関のほうから騒がしい声が聞こえてきたなと思う間もなく激しくドアがノックされました。「ジェーニャ! ジェーニャ、いる!? いたら…

20111231 --494

火の始末と戸締りにだけ気をつけてくれれば遊びに出ても構わないからねとジェーニャに言い残して、お母さんは出かけました。「困ったなぁ」今日はお母さんの役に立とうと決めていたのに。「……ツリーのところに行こうかな。おじさん達が片づけているはず。そ…

20111228 --493

朝食の片づけをしていると遠くで歓声が上がりました。星飾りが落ちたのでしょう。(ほらね、僕じゃなかった)とその時、来客の対応をしていたお母さんが慌てた様子で外出の用意を始めました。「急な注文が入って工場の人手が足りないそうなのよ。母さん今か…

20111221 --492

「ジェーニャ、広場に行きましょ」近所のナフカがジェーニャを迎えにきましたが、ジェーニャは食卓の上に朝食用のお皿を並べながら首を横に振ります。「僕は行かないよ、ナフカ。今日は、お母さんの手伝いをするって決めたんだ。でも、誘ってくれてありがと…

20111221 --491

夜明けと呼ぶにはまだ暗い空の下。子供達が次々と起き始めます。着替えると朝食も食べずに家から飛び出し、目的地に向かって走ります。勿論、目指しているのは中央広場のツリーです。そこここの家から同様に出てきた子供達とかけ合う「おはよう」の声が、街…

20111220 --490

(そうだ。明日は起きたらお母さんの手伝いをしよう。そのほうがきっとお母さんも嬉しいに違いない。うん、そうしよう)緩やかに忍び寄る眠気に身を任せながら、ジェーニャは起きてからのことをぼんやりと考えました。(ずっと働きづめだったお母さんの役に…

20111214 --489

夜、ジェーニャはベッドの中から窓越しに空を見上げました。今夜は雲も風もなく、冷たい空気のせいもあって、星々が一層美しく輝いています。(僕のところにお星様は落ちてこないさ。だってこの一年、それだけの事をしてないもの。お頭に明日も新聞配達しま…

20111213 --487

「……今年はスコーチャだろうねぇ」話し合いの最後に出てくるのは決まってその名前でした。三月にあった大火事の時に、いつもは悪戯で使っているという抜け道を使って、炎に囲まれた病院から大勢の人を逃がした男の子です(もちろん悪戯についてはしっかりお…

20101226 --331

同じ頃、ツリーの下に子供達が数人集まって、今年は誰のところにお星様が落ちてくるかの予想を興奮気味に語り合っています。今年も何人かの候補がいます。話し合ってる子供達は、どうやら自分が拾えるかよりも立てた予想が当たっているかどうかのほうが気に…

20101225 --330

「明日の朝は休んでいい。クリスマスなのにご苦労だったね」新聞配達のお頭が夕方やってきてジェーニャに2日分の給料を渡して言いました。本来なら明日も朝配達があるはずなのですが。「明日星飾りが落ちるだろう? あれが落ちるのも朝早い。新聞を配ってた…