"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

20121216 --621

ベッドの上だった。視界いっぱいに広がる見慣れた天井。はっとして頭を触る。痛くない。殴られた痕もない。慌てて起きる。机の上を見遣るが何もない。夢か。と、そこで違和感を覚えて床を見る。誰かが倒れていた。まさか。自分が倒れている。驚いて声を上げ…

20121216 --620

自室に戻ると、窓際の机の上に原稿用紙が数枚置かれていた。先程までなかったはずだ。傍らには黒軸に金のペン先の万年筆が無造作に転がっている。何が書かれているのか確かめようとしたところで鈍い音が響いた。頭に強かな痛みが走る。勢い、どうっと床に倒…

20121216 --619

そこに再びのどよめきです。ジェーニャのお母さんが数人の大人とやってきました。ジェーニャを呼びにきたナフカと同じく、港の工場にいるお母さんを呼びに行った人がいたのです。着くや否や、涙まじりの大きな声でお父さんの名前を呼び、抱きしめました。強…

20121215 --618

目が覚めてからもしばらくは事故のショックで話すことも体を動かすこともできず、身元がわかるまでに長い時間がかかったそうです。「随分と心配をかけたな。大変だったろう」お父さんはジェーニャの頭をくしゃくしゃと撫でました。「ううん、僕は大丈夫。僕…

20121214 --617

ドラゴンのレリーフも美しい銅鑼がごーんと鳴ったんじゃよ。 #twnvday #twnovel posted at 00:56:31

20121214 --616

試験官は差し出された紙を受け取ると一瞬視線をそれに落とした。「白紙、ですね」確認する。「はい」当の受験生はこともなげに頷いた。「何も見えませんでしたので」受験生の持つ水晶玉がきらりと光った。首都魔法院占術者採用試験の合格者が決まった瞬間だ…

20121214 --615

「お父さん、今までどこにいたの?」泣きながらジェーニャは聞きました。「外国だよ。ここからずっと遠くにある国だ。船から落ちた後に気を失って詳しいことはよくわからないんだが、どうやら海流に乗って遠くに流されたらしい。浮かんでいたところを外国の…

20121213 --614

「ただいま、ジェーニャ」お父さんはにっこり笑って言いました。まるでそれが合図のように、ジェーニャの目から大粒の涙がぽろぽろと零れます。「おいおい、男の子が泣いちゃダメじゃないか……っていうのも無理があるか」お父さんは苦笑しながらジェーニャに…

20121212 --613

ジェーニャの目ははちきれんばかりにまん丸になっています。驚き過ぎて瞬きもできません。行方不明になって約5ヶ月、何の音沙汰もなく、周囲の大人も亡くなったと思っていました。それなのに、突然目の前に現れたのです。「お、お父さん?」小声でそう呼びか…

20121211 --612

いざなわれるように、割れた人波の奥に進みます。そこには男の人が立っていました。ジェーニャはとても驚いて思わず立ち止まってしまいました。何故なら、そこに立っていたのはお父さんだったからです。夏に海で行方不明になって、大人達がどれだけ探しても…

20121210 --611

広場にいる子供も大人も皆、ツリーの根元近くに集まって何かを囲んでいました。「ジェーニャを連れてきたわよっ!」そこにたどり着くやいなや、ナフカは大きな声で言いました。集まっていた人達が一斉にこちらを向きます。そしてざわめきと共に、人波がさっ…

20121209 --610

中央広場が見えてきました。たくさんの声が風に乗って聞こえてきます。星飾りが落ちるのを待っていた子供達と片づけにきた大人達の声でしょう。落ちてから大分経つはずなのに子供達はまだ多くいるようです。それに大人達も、片づけに集まっているにしては作…

20121208 --609

普段はおっとりしているナフカがこれだけ慌てるなんて、中央広場では一体何が起きているのでしょう。(よっぽどのことが起きたに違いない)ジェーニャは素直にツリーを見に行かなかったことを悔やみました。とはいえ今は急ぐだけです。雪に時々足をとられつ…

20121207 --608

この慌てぶり、帽子を取りに行く隙はなさそうです。「わ、わかったよ」急かすナフカを背に玄関の鍵をかけました。「急いで!」ナフカはジェーニャの手を引いて走り出しました。ジェーニャはそのあまりの迫力に圧倒されてしまい、何故急ぐのか、何があるのか…

20121206 --607

聞き覚えのあるナフカの、これまで聞いたこともないような慌てた声に驚きながら、ジェーニャは急いで扉を開けました。そこには全速力で走ってきたらしい真っ赤な頬をしたナフカが立っていました。「ど、どうしたの? ナフカ」「今すぐ来て! 一緒に! ツリー…

20121130 --606

「メーデー! メーデー! メーデー! こちらは11月、11月、11月! メーデー! 11月! 位置は30日。24時間以内に12月が来る! いつの間にか周囲は2013年に制圧されてしまった。至急救助されたし! 搭乗人数は地球1個分! メーデー! 11月。オーバー」 #twnove…

20121116 --605

さぁて。討ち損じがなければ今目の前にいる敵がラス1。あれを倒せば一件落着ハッピーエンド。だけど装備の損耗激しく、ついでに疲れ過ぎてもう腕上がらないし足も前に出ない。こりゃバッドエンドかねー? この戦線、さすがにひとりでの維持は無理だったかな…

20121115 --604

或る者は願う。幻でもいい、幻でもいいから会いたいのだ、と。また或る者は願う。話せぬのなら、触れられぬのなら幻などいらぬ、と。今宵新月、空は雲に覆われ星の光もない闇夜。馬を走らせ往く黒衣の騎士の前に、音もなく舞い降りたそれは、はたして幻か、…

20121115 --603

神よ許し給え。たとえ幻であろうと、いや幻とわかっていながらも、かつて死に別れた愛しき者を前にして平静を保てぬ愚かな我を許し給え。わかっている。わかっているのだ。これが悪魔を祓いに来た我を阻まんが為の罠なのだと。だが、しかし。……しか……し……。 …

20121031 --602

Trick or treat! はっはっはっ。まさか自分が言われるとは思ってなかったって? 甘いぞ、10月。これをやらなきゃ今月は終われんよ。お、そろそろ11月と交代だな。仕事上がったら聞かせろよ。何って? お前出雲行ったんだろ? 神様合コン、どうだったんだよ。…

20121025 --601

幼なじみで家も近所同士。あまりにも近くにいて、むしろ家族よりも話しているようなこいつと、まさか高校生になってから付き合うことになろうとはなぁ。ガキの頃の俺に聞かせてやりたいわ。「……っ、いってぇ!」脛蹴りやがった!「人が喋ってる時はこっちを…

20121024 --600

心が手に入らないなら、せめて貴方の姿だけでも、この目で盗んでしまおうか。 #twnovel posted at 01:01:31 記念すべき600がこれかー。とちょっと驚く。

20121023 --599

時は深夜。生き物は皆夢の中。空に浮かぶは上弦の月。雲の合間から時折顔を見せては街道の遥か先に横たわる山脈をほのかに映し出す。この季節にしては生温い風が草木を撫でて枯葉を巻き上げる様はまるで心底に潜む不安を掻き立てるかのようだ。そんな道の上…

20121018 --598

インストーラー。俄かに信じられなかったが、実際に見てしまったからには信じざるを得まい。人格、記憶、容姿まで他人に植えつける能力者の存在を。「植えつける、では語弊が生じるな」今まさに目の前で奇跡のような業を見せた男はやや不満げに言った。「こ…

20121017 --597

その日記には非常に事細かく筆者の人生が書き込まれていた。夢中になって読ませる何かがその文章にはあり、気がつけば一気に読み終えていた。顔を上げた読者の顔つきは、読む前とまるで別人のようで――いや、別人だった。傍らに飾られた、日記の筆者の写真と…

20121017 --596

「――我ら放浪の民、故に帰る家あらじ。土の上で生まれ、土の恵みで生き、土の上で死に、土の中に帰る。ただそれだけの者なり。今ここにひとりの同胞が土に帰らんとす。ああ、大地よ。その腕の中にて安らかに眠らせたまえ。そしてやがて生まれくる新たなる命…

20121014 --595

酒器一式を男の傍に置くと、待月堂の堂主は一礼してその場を辞した。いつもなら部屋の隅に控えて世話をするのだが、今宵の訪問者はひとりを望んだ。新月間近の夜、空には雲が広がり、所々で星が瞬くのが見えた。風は、遠くの薄を僅かに揺らした。 #twnovel #…

20121012 --594

進む草原、海はまだ見えず。遠くに連なるは山。道は途切れ途切れ見ゆれども、何処へ着くも知らぬ。見上げれば空、雲の棚引く。切れ間には星が流れ。空の向こう星の向こう、思い馳せるは彼の地。懐かしや我が故郷秋津島。神々の祝ぐ豊穣の地。風吹けば戦ぐは…

20121012 --593

光も届かないような深海。潮流がわたしをどこかへ連れていく。ああ、そういえば、どうしてわたしはここに来たんだっけ? 何気ない日常の中で、笑い、願い、叫び、そして? わからないな。わからない。覚えてない。多分、必死だったから。さーて、これからど…

20121012 --592

沈んでいく。ゆらゆら。ゆらゆら。気がつけば水面は遥か頭上に。光はうっすら、沈むわたしにどうにかこうにか届くくらい。それはまるで、ぎりぎりまで手を伸ばしてくるような必死さで。ゆらゆら。ゆらゆら。沈んでいく。ああ、とうとう光の指先も離れていっ…