"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

ループする夢と原稿用紙

20121218 --633

カーテン越しに太陽光が射す。鳥の鳴き声が聞こえる。朝だ。やっと目が覚めたのだ。長い時間が経ったかに思えたが、しかしそれも一晩の夢に過ぎないというわけか。苦笑する。床に落ちている原稿用紙に気づくと、その苦笑は凍りついた。そこに書かれていたの…

20121218 --632

花瓶で強かに殴られても目を覚まさなかったのだ。これが成功するとも限らない。が、このまま夢の世界を無為に彷徨い続けるよりは。黒い軸を逆手に持ち、ペン先を勢いよく左手の親指、指先と爪の間に差し込んだ。かつて経験したことのない痛みに絶叫が迸る。…

20121218 --631

騙されるな、とは。数々の夢から目覚め、あるいは迷い込んだその最奥にうずくまる自分達から言われたあの言葉。「終わらない夢」本当か? 本当に終わらないのか? 朝が来れば目が覚める。己の声に目を覚ます。痛みで目を覚ます。──痛み? その時視界に入った…

20121218 --630

それが自分だと気づくまで数秒もかからなかった。思い出した。確か、原稿用紙に気をとられて誰かに殴られたんだ。あれは自分だったのか。ん? どうして忘れていた? 違和感。まさか、ここが綻びか? 倒れた自分を横目に原稿用紙を手にする。書かれていたのは…

20121218 --629

散々走って自室に戻ってきた。あの原稿用紙にヒントがある。覚めない夢から覚める方法が書いてある。数回前の目覚めの時に記したはずのそれを確かめる為に、やっとここまで戻ってきた。ドアを開けると誰かが原稿用紙に近づく。やめろっ。思わず足もとにあっ…

20121218 --628

床の冷たさが不快で目が覚めた。真っ暗な部屋だ。だが匂いでわかる。ここは自室。うう、痛い……。まだ頭が痛い。誰かに殴られたあと、そのまま放置されたようだな。殴られた場所をひとさすりして、這うように壁に向かい、明かりのスイッチを入れた。案の定机…

20121217 --626

「お前が目を覚まさない限り、わたし達は増え続け、これも増え続ける」一人が遺体を指差し言った。「そして、わかっているだろうけど、これも夢。終わらないかもしれない夢。気づけなければ延々深みに嵌まり、やがてループする。綻びを作れ。そしてそこから…

20121217 --624

倉庫の片隅に小さく、息を潜めて座る。周囲を見渡せば俯いているたくさんの人達が同じように座り、その各々の側に大きな布に巻かれた何かが横たわっている。遺体だ。俯いている人をよくよく見れば、それが自分だとわかる。全員自分。では恐らくあの布の中に…

20121217 --623

階段を駆け上がっていた。遠くに誰かの悲鳴。息を切らしつつ最後の一段を上り終えた自分が見たのは、今まさに倒れそうになっている自分だった。必死に腕を伸ばす。何とかその肩を捉えた、その瞬間、ばちんと静電気でも起きたかのような音と痛みが指先に走る…

20121216 --622

廊下を歩いていた。あと数歩で自室というところで、その自室から上がる悲鳴のような声に驚く。聞き覚えのある──というか自分の声ではないか。駆け寄ろうと一歩踏み出したら急激な眠気に襲われふらついた。刹那、誰かが自分を支える。それが誰かを確かめる間…

20121216 --621

ベッドの上だった。視界いっぱいに広がる見慣れた天井。はっとして頭を触る。痛くない。殴られた痕もない。慌てて起きる。机の上を見遣るが何もない。夢か。と、そこで違和感を覚えて床を見る。誰かが倒れていた。まさか。自分が倒れている。驚いて声を上げ…

20121216 --620

自室に戻ると、窓際の机の上に原稿用紙が数枚置かれていた。先程までなかったはずだ。傍らには黒軸に金のペン先の万年筆が無造作に転がっている。何が書かれているのか確かめようとしたところで鈍い音が響いた。頭に強かな痛みが走る。勢い、どうっと床に倒…