"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

20091023 --73

ユイは手渡された首飾りに視線を落とし、怪訝な表情で女に向き直った。「わたし、に?」女が微笑む。《あなたが独りじゃない証……》心に直接響く声は優しさを帯びていた。だがその後女から聞かされる話に、ユイは衝撃を受けることになる。女が消えても、暫く…

20091022 --72

荒れた墓地の奥に男が一人、無名の小さな墓標の前で、膝をつき泣いている。諸国を巡る十年の旅から戻ってみれば、王朝は倒れ軍も無くなっていた。彼女は、民衆から魔女将軍と怨まれていたかつての恋人は、城門前で百人斬った末に力尽きたらしい。「独りで………

20091021 --71

宇宙は酷い緊張感に包まれていた。そんな時、とある会合でのトップの諍いが、そのまま双方の星をも巻き込む事態になった。彼らはソレに必要な具について熱く語り合い過ぎたのだ。Octopus Daikon Nerimono。のちにODN戦争と呼ばれた紛争の勃発である。 #twnov…

20091021 --70

駄洒落大将という、人の言葉を悉く駄洒落にしてしまう妖怪がいる。駄洒落連発で葬式の雰囲気をぶち壊し、婚礼でも駄洒落が過ぎて迷惑ばかりかけていた。弱点ではないが駄洒落大将より先に駄洒落を言うと去る性質がある。駄洒落を先に言わされる事に伴う心労…

20091021 --69

王の傀儡。魔女将軍。それが彼女につけられた渾名だ。王の命令あらば自軍を率いて女子供一切関係なく殺し、町をいくつも滅した。炎に照らされた無表情の内で何を思い感じていたか、後に発見される彼女の日記には懺悔と悔恨ばかり綴られていたが、終ぞ世に公…

20091021 --68

「今更善人ぶっても過去に踏み躙られた者らは納得せぬ」返り血も凄絶な顔に笑みを浮かべ、女将軍は剣を構えた。「王をお諌めできなんだ我も同罪なれば、民の手にかかり死ぬべき」圧政の末の、民衆の蜂起。「さあ歴史に悪名を刻みつけよう。再び同じ間違いが…

20091020 --67

夜空をオリオンが横切っていく。その足下から一筋、流星が零れた。深夜。風もなく、視界を遮る雲もなく、空は星で満たされていた。それはまるで底の見えぬ無音の星海。刹那、吸い込まれそうな錯覚。と同時にオリオンの左肩から流星一つ。静の中に動を見い出…

20091019 --66

先日センとロジェがいた待月堂に、今夜はユイが一人。縁側に座り、堂の管理人が煎れてくれたお茶を飲む。気象予言士によれば今夜は雲もなく素晴らしい天体ショーが見られるそうだ。丁度首都にいたユイは、ならば眺めの良いここでと足を運んだ。静かな夜に、…

20091019 --65

新月を過ぎ、途絶えた月光が僅かに溢れ出す。光流がゆっくりと反転して地球への月光路が現われ始めた。ハレは空を見上げる。視線の先には並んだ星が三つ。「お、住吉三神だな」「この季節はあの近くで流星雨が起こるの。月光路に影響するかもしれない」隣に…

20091019 --64

このたび東京23区を舞台に宝探しゲームが開催されることとなりました。使用可能アイテムは「東京フリーきっぷ」、iPhone(充電は各自で対策。充電器持込可)のみとなります。23区内に散らばるヒント用エアタグを頼りに宝を探し出してください。 #twnovel #se…

20091018 --63

その柿の旬は冬。日常生活に深く食い込む柿で、寒い地域では毎日という所も少なくなかった。草木芽吹く春までの間、昼夜問わず用いられる。特に早朝、多く必要とされた。儚いが容赦なく襲いかかってくる白い魔物と戦うその雄姿に、人々は尊敬の念を込めてこ…

20091018 --62

男にとって世界とは渡るものだった。更に言えば捲るものだった。空間を捲ると現われる別の世界。今と違う今に辿り着く。事象の変化率は捲る深度に比例した。そして、男は世界を渡るたびに楔を一つ残した。時間を渡る女が、いつかその世界の時間にやってきた…

20091017 --61

リュートの音が閉店間際の酒場に響く。最後に彼と会った日も、吟遊詩人が奏でていたのは今日みたいな物悲しい旋律だった。守護者フィガロがカウンターの端で静かに呑んでいる。隣席には水割りが一つ。しかし席には誰もいない。「再会叶わず、か」別れの歌が…

20091017 --60

《人の内に生きる闇》、イネビリア。ごく稀に人間の体に闇の者の魂が宿る事があった。神の体より創られたとされる人間の体は、人間以外の魂が宿ると驚異的な力を発揮する。イネビリアはその力の強大さから、人間と闇の者双方より忌み嫌われている種族(とし…

20091016 --59

少年は鏡の向こうに別の世界があるのを知っていた。周囲の人は懐疑的だったが、少年だけは知っていた。毎日鏡の向こうの自分が話しかけてくる。面白がってマネをしていたけど、悪戯心でやめてみた。いつ気がつくか。少年は興味津々な顔で鏡の向こうで話に夢…

20091016 --58

少年は鏡の向こうに別の世界があると信じていた。周囲の人は馬鹿にしたが、少年は大真面目だ。毎日鏡の向こうの自分に話しかけた。鏡の向こうの彼は、当然無言。いつしか少年は話に夢中になってしまい、気づけなかった。数分前から鏡の向こうの自分が動かず…

20091015 --57

今日、初仕事。死んだ人の魂を天国に連れて行くんだ。上手く連れて行けるかな。ドキドキだよ。あ、現場着いた。って、この人? うわ私覚えてるよ。見習いの時に下界で迷った私を教会に連れてってくれた少年だ。大きくなったねってもう死ぬんだっけ。えー初仕…

20091015 --56

あー俺死ぬな。くそ、やっぱこっちに敵待ち伏せてたじゃねーか。あのヘボ参謀。何がぼぼ僕は大学でトップの成績で、だ。机の上と実戦を一緒にすんなっつーの。戻ったら文句の一つでも言いたいが、ちと無理か。あー空青いな。お、天使さん、お迎えか。んだよ…

20091015 --55

ここにはあの人がいるけど わたしの「時」のあの人じゃない でも あの子を見つけた ……そう あなたはまた一人ぼっちなのね 大じょう夫 一人じゃないよ これあげる わたしがそばにいるあかし あなたがまただれかと歩き出すまで これを持っててね わたしが守っ…

20091014 --54

拾い集められ まとめられたわたしは 少しわたしを思い出した そしてまず 「時」を知ることから始めた どのくらいさまよっていたのか 今はどの「時」なのか この「時」に わたしのあの人の生きる時間はあるのか そして知った ここにわたしのあの人の時間は そ…

20091014 --53

歩奏(あるきかなで)と呼ばれる奏侶がいる。都から飛び出し、諸国を念律を唱え廻り、狂弦退治や五穀豊穣の奉奏等を行なう者達だ。嘗て奏皇の落胤と噂された歩奏がいた。その力はなるほど噂されるに相応しいもので、長らく拍州で暴れていた狂弦を一夜で倒し…

20091014 --52

ユイは息を飲んだ。彼女の行く手に、黒いドレスを纏った女が立っていた。腰まである黒髪が壁の灯に照らし出されて美しい。「どうやって……」ここは連邦政府の首都、その中枢である大聖堂の地下回廊、《大結界》の源がもう目の前という位置。なのに、何故ここ…

20091013 --51

幼い頃「扉」を開けるのが怖かった。向こうが透けて見えていようが怖かった。開けた途端別の世界になるかも。誰かがいてどこかに連れて行かれるかも。そんな恐怖に苛まれていた。……で、今、帰ってきて自宅の扉を開けたら、玄関に黒い翼の天使が微笑みながら…

20091013 --50

背に翼を広げた人間達が、空飛ぶ巨大要塞に花弁のように舞い降りていく。悪魔どもめ、我らが世界でもう好き勝手はさせぬ。天使のような力もなく神のように奇跡を起こせずとも、我らにはそれを補う知性と科学がある。蹂躙されてから三千年。漸く追いついた。…

20091013 --49

「ぐああ! 目が! 目が!」「ど、どうした」「手を蚊に刺されたんだ」「目、関係ないじゃん」「話はここからだ。クール系の痒み止めを塗ったんだ」「うん」「運悪く目も痒くなった」「あ」「手で目頭を擦ったんだ」「待て、まさか」「痒み止め塗った手で擦…

20091013 --48

《月のない闇》をご存知か。神に仕えし四神竜、その一がヴェンテーラの血に連なる者にして次元の狭間に住まう邪悪なる闇の者、重き運命を背負いし二人の男女を。長く離ればなれだった彼らが漸く再会した時、苛烈な運命は二人を再び引き離した。彼らは今も、…

20091012 --47

「すぐ帰ってきて」出し抜けに妻の切迫した声が電話から飛び出した。まだ昼休み前だぞ。「突然どうした。電話じゃダメなのか?」そうよと告げる妻。苛々している。「貴方のせいよ」え? 「貴方が朝トイレの便座戻さなかったから嵌って抜けないの!」御免なさ…

20091012 --46

三度遭遇した時、男は遂に声をかけた。依頼で出向いてみれば騎士が既に倒してしまっていたし、彼に害意があるなら前2回の何れかで殺されている。それに。「儂は守護者ルドルフだ」声をかけずにはいられない。最初に遭遇してから70年は経っているのに、騎士は…

20091012 --45

「地震が来るぞー」震度3。「地震が来るぞー」震度2。「地震が来るぞー」震度4。「地震が来るぞー(涙)」震度2。彼は皆から『自身速報』と呼ばれた男。一度でいいから「嘘つき!」と呼ばれたかった。 #twnovel posted at 12:22:14

20091012 --44

次に遭遇したのは、図書館の分館。地下第13層の最奥だった。ここには極少数の者しか入れない。にも関わらず漆黒の騎士は壁に飾られた古い肖像画の前に悠然と立っていた。肖像画に描かれた騎士と同じ姿で。驚いた男が口を開こうとした瞬間、今度は闇に溶け込…