"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2012-01-01から1年間の記事一覧

20120517 --552

力を失った星の神子は次代の指名すらできなくなっていた。これで教団の覇権も風前の灯かと思われたその時、それまで教団内では見向きもされなかった論理と実験に没頭していたとある研究者が幹部会に乗り込み、一説ぶち上げた。「神子の占星通りに、星を動か…

20120515 --551

その、肉が原因だとわかったのは、地方での蜂起が落ち着いた頃だった。神子の近習に、昔教団に捕縛され内々に消された者の親族がいつの間にか紛れ込んでいた。その者が神子の毎日の食事に、わからぬように少しずつ、初めは肉汁、次に肉ひと欠片といった具合…

20120515 --550

星の神子はその力を保つ為、動物の肉を一切食べない。肉が内包する生命の残滓──穢れが占星を狂わせてしまうのだ。神子の交代は前任者からの指名を以って行なわれるが、指名以前に肉を食べていた者は神子の座に就くにあたって一週間以上、人によっては一年近…

20120515 --549

東の五地域を襲った大災害。多くの民が死んだ。これにより長年教団の圧政に苦しんだ民に溜まっていた不満や憎悪が、各地で蜂起という形で噴出したのも当然と言えた。教団も応戦するが、一部の地域は教団の支配から解放されることになる。何故、神子達はそれ…

20120515 --548

一人の神子だけが読み誤るなら能力の消失が他者より早く来たとして挿げ替えれば済む。だが七人全員が読み誤るとなれば、それは異常事態だ。あらゆる科学的神秘的方法で原因を探ったが終ぞ見つけられなかった。読み解きの当たりはずれを繰り返すこと数ヶ月、…

20120514 --547

星辰が全てを支配する。異を唱える者は悉く教団に捕らわれ消息を絶った。やがて逆らう者もいなくなり、教団の栄華は千年続くと言われるまでになった。が、それは恐らく叶わぬ。何故なら、教団の権威が揺らぎ始めているからだ。今代の星の神子が、時折、未来…

20120514 --546

星辰崇拝を基とした教団が治める星がある。星の神子と呼ばれる七人の童女が占星術により天の星から未来を読み、教団幹部がそれをもとに世界を動かした。教団は元々地方国家に発足した極小さなものだったが、星の神子の占星により規模は瞬く間に拡大し、遂に…

20120514 --545

空から恋石が落ちてきた。 #twnvday いや、落ちてきたはずだった。「え、ちょ、お、おおおい!」落ちてくる恋石を手で受け止めようと差し出したら手のひらに収まる寸前にカクッと90度カーブしてどこかビルの向こうに大急ぎで飛んでいった。俺の恋は始まりも…

20120507 --544

こんな夜中にドライブに誘ったのも柄にもなく饒舌だったのも近所を回るはずが勢いで海まで車を走らせたのも浜辺で防波堤に並んで座って波の音を聞いたのもあんまりにも綺麗な横顔に見とれちゃったのもカミカミで君に告白しちゃったのも全部今夜の月がいつも…

20120506 --543

のしかかってきそうな大きな月が窓枠の向こうで幾万の星を従えて往く。手をのばせば掴み取れそうなそれは、しかし、結局は誰のものにもなりはしないのだ。ふと視線を転じて、この胸でうたた寝する君を見る。月光に淡く浮かび上がる白肌は、いっそ触れえざる…

20120505 --542

森の奥。そこだけ、まるで誰かが誂えた舞台のように、ぽっかりと土が剥き出している場所がある。真ん中に古い切り株が一つ。そしてそこには少女が一人、軽く腰掛け歌っている。聞くは物言わぬ木と空を往く月。彼女は言う。ここは舞台ではない、と。木々に閉…

20120505 --541

荒野のど真ん中に、ただただ真直ぐのびる一本道があった。見渡せば草木無く、ここが常世である証は、人工的に作られただろうその道のみ。空にはいつもより重そうな月が我が物顔で浮かび、地の果てまでも映し出すかと思えるほどに煌々と輝いている。そんな月…

20120501 --540

時間とは「時間軸の法則によって定められた一方に、一定の速度で絶え間なく流れる(例外有り)概念」だ。よく川や風の流れに譬えられている。時を渡る際に未来に進むが易く過去に戻るが難い理由? 川や風の中で流れに沿って進むのと、それに逆らおうとする様…

20120501 --539

四月よ、前半の寒さにはこちらも肝を冷やしたが、後半で鮮やかに春に復帰したな。むしろ夏をフライングさせた気がするぞ? ……まあいい。見事な桜を咲かせた功績に免じてこれ以上の追求はすまい。ほら、五月が来ている。引継ぎが終わったら旅立つんだろう? …

20120426 --538

夜光貝に彩られた月が星の海に浮かぶ。僕はその下で、ただじっと、ただじっと、気ままな風の歌を聞く。これから辿り着くはずのたくさんの分岐点と、その先にある未来を思い描きながら。大丈夫。踏み出す一歩はきっと力強い。進む為に必要な希望を、この手に…

20120421 --537

大英博物館に展示されているロゼッタ・ストーンを見てインド人のコックが叫んだ。「これ、カレーの作り方じゃね?」 謎はすべて解かれた。世界は幸せの味を手に入れたのだ。 #twnovelposted at 00:16:56

20120416 --536

今年は仕事が忙しくて花見にいけなかった。そんな僕に実家から小包が届く。旬の食べ物の他にはやけに軽いがぱんぱんに膨れた紙袋。不思議に思って封を切るとぱぁん! と破裂した。僕の部屋と視界は、一瞬にして薄紅色に支配された。やられた。そうだよ故郷の…

20120410 --535

夜空に満てるは月の皓、受けて吼えるは天の狼。虚ろに照らす未知なる道先、兆し見ゆるは黄金道。地の果てに立つ、其は枝垂れて誰を待つ。終の運命に降り積もる花、月明かりの下断つ退路。朗々歌いて方々惑い、咆哮響いて滔々流る。流浪放浪幾星霜、独り往く…

20120405 --534

かつて栄華を極めし都ここにあり。天に届くが如き塔林立して空を埋め、地中深くに蜘蛛の巣の如く技術の奔流巡らせり。全生命の頂点に君臨せしその都、しかしとある剣士握る一振りの剣の、ただの一閃により瞬く間に滅びぬ。今はその存在示す遺構が僅かばかり…

20120329 --533

世界の果て、断崖の桜のつぼみがほころび始めた。ほのかに紅を混じらせた美しい花を今年も咲かせてくれるらしい。その根元近くに、いつかの老人が先刻より佇んでいる。「お前さんの種な、無事に芽が出たぞ。それだけじゃない。一年でひと一人をゆうに超すほ…

20120331

3月よ、お前は少し長めにいてくれたな。しかしもう時間だ。お前もいってしまう。たくさんの人の悲しみを背負ったお前と一年振りに再会したのが昨日のように思える。また来年だな。お前を迎えるまでの1年で、何かが変わり、進み、誰かが笑えるように、わたし…

20120301

2月、2月よ。お前も逝ってしまうのか。29日という残り香を漂わせながら、逝ってしまうのか。posted at 00:01:11

20120201

やあ、2月。一年ぶりだな。……うん、1月は一人で行っちまったよ。何度か思い留まるように、俺も俺以外の奴も言ったんだがな。説得し切れなかった。お前は大丈夫だよな、2月。去年より一日でも長く一緒にいてくれよ?posted at 06:30:22

20120131

1月よ、また来年、、、!posted at 23:59:30

20111130

俺が12月を食い止める! お前らは逃げるんだ!!posted at 23:58:38

20120315 --532

花が降る。雲厚き空より花が降る。風が吹けばあっけなく、あれよあれよと飛ばされて、吹かねば吹かぬで思う通りに進めない。あな愛おしやと手に取れば音なく崩れ、運良く地面に落ちたとて、融けて消え往く悲しき運命。冬の名残のぼたん雪。春が来るまであと…

20120314 --531

花を咲かせるか、花を散らせるか、それが問題だ。 #twnovel #twnvdayposted at 01:06:52 今月のお題は「花」。

20120310 --530

あれからもう一年……いや、まだ一年だな。諦めなければ、立っているその場所がいつでもスタート地点になる。俺はこの一年でそれを知った。去年書いた日記を見直す。そこには俺の決意が色濃く残っていた。家に帰る。故郷に帰る。そして俺は俺の生活を取り戻す…

20120309 --529

目を開けた。見慣れた天井。閉められたカーテンとカーテンの間から陽光が射し込んでいる。「夢、か」夢というには、あの男の声がやけに耳に残っているが……。夢であったことに安堵し、さあ着替えようとして、ふと、寝衣の袖を見る。誰かに?まれたかのように、…

20120309 --528

ぎゅっと目を閉じた。口を開けた。肺が息を吸い込む。声となって外界に再び放たれた。「嫌だ! まだ昼の世界にいたい! 帰りたい!」声に重なるように多数の悲鳴がそこかしこで上がる。暗転。暗闇。 #twnovelposted at 02:59:41