"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

misc

20130614 --710

カップを覗くと、コーヒーとミルクが交互にぐるぐると渦を巻いている。やがて境界線は混ざり、溶け合い、新たな色に変わっていく。「わたし達みたいよね」唐突の呟きに隣で読書中の貴方が不思議そうに視線をこちらに向けた。わたしは笑って言う。「これから…

20130614 --709

気がつけばそこは始まりの場所。散々迷ってあちこちに行けども、結局はここに戻ってくる。どんなに足掻いてもどこにも辿り着けないのなら、最初から動かなければいい。動くだけ無駄じゃないか。だが。しかし。そう思いつつも、どうしても、歩き出す。手を伸…

20130514 --707

迷えば失い、惑えば飲み込まれる。そこには普遍的な正しさなどなく、強引にでも掴み取り、躊躇なく辿り着いた者だけに絶対の選択の中から望むものを得るチャンスが与えられる。そう、与えられるのはチャンスのみなのだ。最後の最後まで全ては不確定。運命は…

20130425 --704

それは命を賭してまで叶えるべき願いではない、と? 何を言うか。それに如何なる価値があるかを定めるは汝ではなく我なり。理解できぬのなら口を噤んで下がっているがいい。笑いたければ我が消え去りし後に高らかに嘲りたまえ。存分にな。ただ今は、どうか今…

20130412 --701

ギターとヴァイオリンの音を纏い、女は踊る。名うてのダンサー、ではない。恐らくより優れた者は確実にいる。踊り自体はその程度のものだ。だが、その一心不乱に踊る様は、燃え上がるような真紅に色づいた薔薇を思い起こさせる情熱さを持ち、それを以って観…

20130412 --700

夕暮れ。世界が鮮やかな橙色に染まった。水平線に沈みゆく太陽を背に男がひとり立っている。まるで絵画のような風景が背後に広がっているのに、気に留めた様子はない。波が彼の踝までを何度も洗うが、それすらも意識の外のようだった。彼は待っていた。冬の…

20130410 --699

終わらぬ思いも終わらぬ命もないのだと、受け入れられるまでどれほど心を強くせねばならぬのか。まだまだ手放すつもりもなかったものを、もしかしたらひょっとしてと、油断すれば心押し潰さんとする深い疑念と暗い恐怖に、一体いつまで耐え忍べば良い? 確か…

20130410 --698

手放すまいとみっともなく縋りつく。構うものか。失うことに比べたら、恥辱など毛ほどの影響もない。時間よ、奪いたもうな。絶望よ、道をあけよ。光よ、指し示したまえ。答えはいずこにやあらむ。奇跡はいずこにやあらむ。泣けば良いか。叫べば良いか。見つ…

20130410 --697

わたくしは恐ろしいのだ。失いたくないと心底願ったもののはずなのに、いつしか色も褪せ、遠く離れ、煩わしくなっていくことが。そして、失ってしまうことが。行くな行くな。まだ行くな。まだこの手の中に。まだこの心の中に。何故もっと強く、もっと強く、…

20130410 --696

永遠に続くものなどないのだと、時間は理想ではなく現実を無慈悲に突きつける。失いたくないものを易々と奪い去っていく。覚悟も何も決められずにいるこの瞬間にも、それは、確実に、着実に、近づいてくる。見えているはずなのに見えぬものが、突然世界を覆…

20130330 --694

風が吹くたび視界を埋め尽くす桜の花びら。手を差し出せばすぐに何枚も積もる、それほどの花吹雪。先を歩くあなたの腕を慌てて追いかけて掴んだのは、不意に花びらに遮られた視界のせい。あなたは一瞬驚いた顔をして、それから、ふわりと、笑った。「大丈夫…

20130323 --692

描き出されたのは空を覆いつくすかと見紛うほどの巨大な魔法陣。彼らがその存在に気づいた時には、もう遅かった。「まさかっ、発動にはあと、少なくとも三日はかかると」恐慌状態の敵軍を見下ろしながら、塔の頂上で彼女は呟いた。「見くびられたものだな。…

20130319 --690

諦めろ。呼べど叫べど、誰も来やしない。見張りも格子もない代わりにどこにも繋がっていないのだから。ここは夜の牢獄。月と星だけが知らぬ顔して通り過ぎていく。もうじき、朝になる。昼日中生きるを許されぬ我らは、あの山から一条でも太陽の光が差したら…

20130319 --689

おかしなものだね。拒絶してきたのは君のほうじゃないか。今更なんだい? 己の意のままにならぬ、そぐわぬと言って去っていったのは君だ。どうして再びここに現われて、一緒に歩こうと言うのだね? ほう。覚えていない、とな。それはまた随分と都合のいい記…

20130319 --688

救いがない? そんなの当たり前だ。あらかじめ誰かが準備してそこかしこに仕掛けでもしない限り、打開などできるものか。孤独な者には無縁の言葉だよ。ああ、例外もいることにはいるが、それを知ってどうする? ひとりきりでも揺るがずにいられるなんて、お…

20130319 --687

叶わぬ思いに身を焦がし、望むものに手を伸ばせども一向に掴めず、挙句、絶望の果てに墜ちる先が地獄なのだとしたら、今まさに生きているこの世界そのものが、わたしにとっての地獄。願い? 希望? そんなものは慟哭と共にとうの昔に消え去った。今ここには…

20130315 --686

出会わなければ、いいえ、あなたという存在を一切知らずにいられたならば、こんなに焦がれることもなかっただろうに。無明の闇を漂い、彷徨い続けながら、それでも刹那の邂逅を求めて、這い蹲り、足掻き、繰り返す。何度も何度も。それに一体何の意味がある…

20130312 --682

あの日から、その研究者の世界は大学の研究室とトイレと購買だけになった。家に帰らず、トイレの洗面台で頭と体を洗い、食事といえば購買の野菜サンドと焼きそばパンを交互に食べるのみ。何故そんな生活をと問われ研究者は言った。「一刻も早く、完成させた…

20130311 --681

海に祈る。静かなれ。幾久しく穏やかなれ、と。大地に祈る。震えるなかれ。豊穣なれ、と。空に祈る。暖かなれ。冷たき雪疾く持ち去れ、と。それはこれまでとこれからを繋ぐ大切な今、誰の為でもなく、歩き続ける己が為なれば。人に祈る。手を差しのべるを臆…

20130306 --679

心ない人が水槽に毒をたらした。毒は瞬く間に広がって魚を苦しめた。水を換えても体の中に残って命を追いつめる。沢山の人達が必死に声をかけた。すると、底に沈んだ魚が再び泳ぎ始めた。だけではない。魚は、なんとピラニアに生まれ変わっていた。鋭い牙と…

20130228 --677

十六夜の月が綺麗だったので君を飲みに誘ってみた。そしたらまあ飲みなよってどんどんお酒を注いでくる。ごめんなさい、もう飲めません。これ以上飲むとうっぷ。いや、もう、ほんとに。ほんと勘弁。ごめんなさい。酔わせてあわよくばとか思ってごめんなさい…

20130225 --676

携帯抱えて横になる。両手で包んで顔の前。まるで何かに祈るカタチと、気がつきひとり苦笑い。声が聞きたい、そう願うけど、そこに特別理由なく。思い出したように望む番号表示させては、思い直して終了ボタンをそっと押す。どうやら今夜も眠れない。毛布の…

20130225 --675

望むものは手に入らず、うつろばかりを掴み取る。そこを無理矢理得ようと握れば、砂の如く指の隙間からはらはら落ちる。良かれと思うて動いてみれば、事態は裏目。運命恨め。肥大する渇望ひた隠し、画して心鈍くなり。断つは縁か。立つは淵か。知れ。すべて…

20130223 --673

月を背に黒猫が鳴く。人皆寝静まる深夜、厳かにすら感じられる雰囲気を纏い、まるで王が城下を睥睨するかのように、一際高い屋根の上から黒猫は街を見下ろしている。「実際、夜の街は、彼の支配下にあった。」といっても過言ではない迫力に、わたしは無意識…

20130215 --672

東の夜空に天狼が躍り出る。その遥か下、西へ翔ける竜騎三百。ひと塊で飛ぶ様はさながら一匹の巨大な竜だ。爪のような細い月を追いかけ、目指すは彼の地、魔物蠢く奇岩島。魔法院が総力を以ってしてようやく探し当てた『最も罪深きもの』がそこにいる。魔物…

20130212 --668

「探せ、まだその辺にいるはずだ!」「見つけ次第確保、抵抗するなら発砲も許可する。相手はソースコードメーカーだ。油断すんな!」完全武装した男達の怒号と足音が過ぎて数分後、積み重なったガラクタの奥からノートPCを抱えた少女が這い出してきた。「ど…

20130209 --667

白ヤギさんからお手紙着いた。黒ヤギさんたら読まずに食べた。仕方がないのでお手紙書いた。『さっきの手紙の御用事なに?』黒ヤギさんからお手紙着いた。白ヤギさんたらうっかり食べた。仕方がないのでお手紙書いた。『ごめんね、もう一度聞くけど、今日の…

20130207 --659

寒い夜、冴えた空気が見事な星空を作り出す。じっと眺めていると空に溶けてしまうのではないかと不安になる。今こそここに、いて欲しい、貴方が必要なのだ。と、それはきっと願うことすら罪深い。先に手を離したのは、自分なのだから。しかし。それでも。赦…

20130204 --656

「ならば人よ、物語れ。汝の内に秘めたる世界こそ真に世の求めるものと知れ。口の端にのぼるも、紙片の隅に書き殴るも、電網でさえずるも良し。問題は手段ではない。その、あらわされる世界なのだ!」「……なあこいつ寝ながら力説してるぞ」「ほっとけ、そん…

20130118 --651

お前さんが生まれ育った国、そうそう、西方のあの大国な。つい先日王様が亡くなって、王太子の、長男だっけ? 王位を継承したんだと。だけど、まあひどい悪政っぷりで、見る間に国力落としてるって噂がな、昨日うちに来た行商が伝えてくれたんだよ。っておい…