黒白にゃんこはベランダの隅。雨粒叩く庇の下。ぽんぽん。かんっ。ぽんぽん。かんっ。あとからあとから降る雨が、雨樋伝ってバケツに当たる。強く弱く、早く遅く、リズミカル。暗いお空を見上げつつ、にゃんこは小さく鳴いてみる。もうすぐ帰るよ僕の家。待…

黒白にゃんこは堤防の上。ざざんざざんと海のそば。聞き覚えのある波の音。あの日はこんなじゃなかったけれど、今はいつもの波の音。この音がするって事は、僕のおうちはすぐ近く。少し急いで歩き出す。どうやら明日から雨のよう、濡れるとさすがに寒いから…

黒白にゃんこは塀の上。どこかの出窓の斜め下。窓の向こうに白にゃんこ、威嚇もせずにこっちを見てる。こんばんは、星がきれいですね。僕は家に帰るところです。聞こえているかはわからないけど、ちゃーんと挨拶しなくちゃね。返事のように一声。ありがとう…

とある外国人旅行者は言う。「日本は色々すごかった。特に鉄道事情。あんなに複雑な路線図見た事がない。5日間いたのに結局理解できなかった。しかし日本人はあれを見て容易く目的地に辿り着く。俺は確信した。いずれあの路線図は大英博物館のロゼッタストー…

「うおあああああ」「どうした！？」「ロゼッタ洗顔パスタで顔を洗おうと手に取ったらストーンとおt」「わかったからもうそれ以上言うな」 #twnovel #twnvdayposted at 00:44:36 お題は「ロゼッタストーン」です。実は、ロゼット洗顔パスタだったりするんだ…

黒白にゃんこは橋の上。迷わず歩く十六夜の下。昼は暑くて歩けない。そういや誰か撫でながら、暦の上ではもう秋だけど日差しはまだまだ夏だわねってため息混じりに呟いた。風が吹いたらそれなりに涼しさ感じられるけど、今年の残暑は居座るよと流れる雲が歌…

待月堂縁側。酒器を傍らに、ロジェが月を見上げる。一緒に酒を飲んでいたセンは先ほど、彼にしては珍しく一瞬驚いたような表情を浮かべ、急いで桜月館に向かった。センのことだから案ずる必要もなかろうが。「しかし、ひとりで飲むのもつまらんな……」雲ひと…

桜月館、肖像画前。フランス窓越しに月光が優しく差し込み肖像画を照らす。ほのかに浮かび上がる少女の絵を、黒衣の騎士は無言で眺めていた。逆光のせいでその表情は見えない。「……一人なのか」そこへ、そう声をかけた者がいる。センだ。黒衣の騎士は答えな…

月の下でカエルが鳴くよ。ゲッコーゲッコー #twnovelposted at 23:18:09

黒白にゃんこは屋根の上。ぷかぷかまん丸月の下。ねえねえお願い満月さん。月を見上げてにゃんこは祈る。照らしておくれ満月さん。大好きなあの人に、僕はここだと知らせる為に。教えておくれ満月さん。僕が住んでた家までの道を。眩しいくらいの月明かり、…

そうか。忘れられないんじゃなくて、忘れたくないんだ。だから無理に忘れようとしても忘れられなかったんだな。本当に忘れたければ、きっと忘れたいという思いすら忘れているだろう。そうか。僕は忘れたくないんだ。だったら、無理矢理忘れないで、それを抱…

黒白にゃんこは道の上。鐘鳴り響く教会の前。オルガンの音色、鐘に重なり、人の歌声その上に。楽しい歌ではないけれど、悲しそうな声だけど、にゃんこは綺麗と耳澄ます。今日は街中いろんな所で聞こえてる。願いのような祈りのような。にゃんこも一声、大好…

黒白にゃんこは土の上。大きなケヤキの枝の下。お日様かんかん道路はあちち。だから日陰でまぁるくなって涼しくなるまで夢の中。時々うにゃうにゃ尻尾はパタパタ。鼻とおひげがピクピク動く。美味しかったあのご飯、優しく撫でてくれたあの子供、にゃんこの…

大切にし過ぎて壊した。傍に置き過ぎて見失った。伸ばした手は虚しさしか掴めず、欲しいものはするりとすり抜けていく。泣き喚いてもこの声は届かず流した涙は拭われずにただ乾いていくのみ。それでもどうしても求めてしまう。大切な何かを。傍に置きたい何…

黒白にゃんこは歩道橋の上。たったか歩く雲の下。くらーい雲は雨の予告。もうすぐしとしと降り出すよ。ざんざか降ってくる前に、どこかに早く潜らなきゃ。じめじめ空気はおひげの天敵、何度も何度も直すけど、必ず一本くるんと回る。そろそろ雨のあの匂い。…

黒白にゃんこは道の上。時々瞬く街灯の下。あれからいっぱい歩いたよ。けれどおうちがわからない。あちこち探してみたけれど匂いも音も違ってる。ご飯をくれた人がいた。居心地悪くなかったけれど、やっぱりおうちに帰りたい。さよならごめんね優しい人。お…

黒白にゃんこは道の上。キラキラ輝く星の下。にゃんこは昔、家の中。大好きな人と家の中。とてもとっても幸せだった。だけど突然失った。がくがくどんどん。怖かった。壊れた窓から飛び出して、わけもわからず逃げ出した。大好きな人は、わからない。どこに…

黒白にゃんこ塀の上。そよそよ揺れる枝の下。吹き抜けるごとに風涼し。夏の名残りも少しずつ、また来年ねと去っていく。代わりに秋さん久し振り。だんだん元気にそこかしこ。虫の歌声引き連れて、葉っぱのパレット用意中。もうすぐまんまるお月様。にゃんこ…

ノックの音がした。間髪いれず言葉が続く。「すみませ〜ん、**便で〜す」あ、はーい。ドアを開けたが誰もいない。辺りを見回す。三つ隣の部屋の前にダンボールを抱えた宅配業者のお兄さんが、笑いたいのに笑えない、あの一種独特などっちつかずの表情を浮か…

ノックの音がした。いやまあ俺がさせたのだが。しかしこれをノックと呼ぶにはだいぶ違和感を覚えなくてはならない。「やあ、来たか」ノックからきっかり十秒。部屋の主がドアを開けた。「お前な、防音処理された部屋だからって、いくらなんでもノックとして…

ノックの音がした。読んでいた本を閉じながら入室を促すと、そろりと扉が開き訪問者が入ってくる。「……」会釈しつつ入ってきた訪問者は顔を上げると、軽く部屋を見回した。「あの……」訪問者は複雑な表情で言い辛そうだ。私が首を傾げると遂に口を開いた。「…

ノックノック。「はーい」ガチャ。 #twnovel 「はーっははー！ 扉を開けてしまったな！ わしがかの有名ｎ」バタン。「あ、こら！ 台詞の途中で閉めるな！ ウケてもウケなくてもいいから台詞を最後まで言わせないか！ おい、こら！ ……。あのすみません、開け…

黒白にゃんこ膝の上。にこにこ顔の少し下。たりらり公園歩いていたらベンチのご婦人手を招き。招くはにゃんこのお仕事だいと思うもほいほい近づけば膝の上に座れと合図。ではではお言葉ありがたく、でんとお座りむしろごろん。やがて撫でる手ふと止まりしば…

黒白にゃんこは道の上。てくてく歩く月の下。街のざわめき行進曲に、1・2・1・2、リズム良く。つんとおすまし品良くね。手を振る誰かににゃあと鳴き、撫でる誰かに喉鳴らす。だけどいい事ばかりじゃなくて、時たま嫌な事もあり。そういう時は一眠り。起きた…