"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

黒白にゃんこ

20111006 --459

黒白にゃんこは腕の中。大好きな人の腕の中。僕は泣けないから、精一杯鳴いた。いろんなことがあったよ。優しい人にもいっぱい会えた。大変なこともあったけど、それ以上に嬉しかったことがたくさんあった。迎えに来てくれてありがとう。大好き。……伝わった…

20111006 --458

黒白にゃんこは腕の中。たった今やってきた車の前。夢じゃない。夢じゃなかった。家が壊れたあと少し遠くに家族で避難。餌をくれてた近所の人から僕を見つけた連絡がきて、時間かかったけど迎えに来たって大好きな人が泣きながら教えてくれた。僕の声、僕の…

20111006 --457

黒白にゃんこは夢の中。ひと時ゆらゆら夢の中。まるで誰かの膝の上。そっと撫でてくれる手と、優しい歌声思い出す。歌に合わせてごろごろと喉を鳴らしてデュエットを。見上げれば大好きなあの人の笑顔。ああ、僕、忘れてないよ。ちゃんと覚えているよ。会い…

20111004 --456

黒白にゃんこは毛布の上。月光そそぐ木箱の中。冷たい夜空を半分の月が泳いでる。時折雲でかくれんぼ。大好きなあの人もかくれんぼしてるのかな。お月様ならわかるかな。僕の家まで照らしてくれたお月様、今度は僕を照らしてください。どうかあの人に、僕が…

20111004 --455

黒白にゃんこは木箱の上。北風冷たい空の下。風さん吹く吹く駆け足で。そんなに急いでどうするの? 秋をおいこし冬が来る? 不安なにゃんこの問いかけに北風答える、歌のよう。寒いさむーい冬来るよ。白いしろーい雪ふるよ。遠くとおくのお山から、びゅんび…

20111003 --454

黒白にゃんこは毛布の上。口が横向く木箱の中。ご飯をくれる近所の人が、そのままだったら寒かろと、毛布を敷いた小さな木箱の家をくれた。ここ数日急に寒くなってきたからね。この中に入って風邪を引かないようにしなよ? 頭をぐりぐり。にっこり笑い、ご近…

20111003 --453

黒白にゃんこは瓦礫の上。少しずつ人の往来増す道の前。声をかけてくれる人がいる。撫でてくれる人がいる。ありがとね。ありがとね。お礼に鳴いたり、すねこすり。だけど一緒には行けません。僕は待ってる人がいます。腕からするり。瓦礫に隠れる。すみませ…

20110930 --449

黒白にゃんこは土の上。近所の人がくれた餌の前。これからのことでしょんぼりしてても、あの人いなくてショックでも、おなかは勝手に減るらしい。お心遣いありがたく、まずは食べよう。むしゃむしゃと。今はいないだけかもしれない。そう思って待とう。大好…

20110930 --448

黒白にゃんこは土の上。空き地の隅の瓦礫横。まだ家あったあの頃に何度か見た人、前通る。僕に気づいて声かけてきた。まあまあ猫さん、今まで何処に行ってたの。おなかは空いてないかしら? けれど僕は返事せず、これからのこと考える。これから? 家もない…

20110929 --447

黒白にゃんこは瓦礫の上。埃巻き上げる風の中。空き地のいたるところに大きな車のタイヤ痕。壊れた何かを片づけた跡。瓦礫にわずかに見える傷。あれは僕がつけたもの。バリバリいたずら、とくとくお叱り。ああ、ああ、間違いない。ここは僕の家。壊れてしま…

20110928 --446

黒白にゃんこは道の上。瓦礫が残る空き地の前。振り返る。赤い三角屋根はあそこ。そして家の中から見えていたのはあの形。とすれば家はこの場所。向き直る。だけどここには家がない。あるのは少しの瓦礫。隅っこにまとめて置いてあるだけで。誰もいない。大…

20110926 --445

黒白にゃんこは屋根の上。赤い三角屋根の傍。この方角にあるはずと目印の屋根振り返る。そうだそうだ、こんな形に見えていた。ならばこのまままっすぐに進んでいけばあるはずさ。目の前の塀跳び越して、次の屋根に飛び移る。時々目印振り返り、進む方向を間…

20110926 --444

黒白にゃんこは屋根の上。赤い三角屋根の上。ここから家が見えるはず。どこだどこだと目を凝らす。瓦礫の残る空き地がある。半分崩れた家がある。そのまま残ってる家がある。僕の家はどこ? 僕の大好きなあの人はどこ? 身を乗り出して周囲を見渡す。大事な…

20110924 --443

黒白にゃんこは道の上。吹く風ゆるゆる草原の傍。台風過ぎたら朝晩涼し。いつかのご婦人呟いた、暑さ寒さも彼岸まで。これからじわじわ冬が来る。寒いは苦手。一匹も苦手。僕は大好きなあの人と一緒がいいなあ。迷っても立ち止まらない。進む。前へ。少しで…

20110924 --442

黒白にゃんこはガレージの上。風に雲舞う青空の下。赤い三角あのお屋根、家の窓から見えていた。ちゃんと帰ってこれてると自分を励まし歩み出す。ちりちりりん。眼下の道行く自転車のベル。がんばれにゃんこと励ました。音に背中を押されるようにドキドキし…

20110922 --441

黒白にゃんこは道の上。台風一過の空の下。倉庫で一晩雨宿り、恩は忘れずネズミ捕り。風はまだまだ強いけど、水たまりもまだ広いけど、嵐は必ず終わるんだ。だから会えるよ大好きな人。だから帰るよ僕の家。いつか終わるよこの旅も。進みながら僕は知る。風…

20110922 --440

黒白にゃんこは棚の上。雨風凌げる倉庫の中。塀の上を走っていたら、倉庫の中からおじさんが呼ぶ。おさまるまでの雨宿り、この中だったら安全だからと棚に毛布を敷いてくれた。連れて帰ってやりたいが仮の住まいじゃ飼えないと、しょんぼり謝るおじさんにお…

20110920 --439

黒白にゃんこは塀の上、天使の梯子の遥か下。今日は雨晴れ忙しい。雨が降ったと思ったらお日様かっと顔を出す。雲がぐんぐん空泳ぎ、天から光がいく筋も。じめじめ空気がおひげにいたずら、風の匂いがいつもと違う。これからひどい嵐が来るよとにゃんこの上…

20110920 --438

黒白にゃんこはベンチの上、どこかの庭の東屋の中。気づけばセミの声は消え、秋の虫が歌い出す。今日は雨でいまいちだけど、きっと晴れたら大合唱。お星様を観客にしていっせいに歌うんだろう。その時は一緒に歌おかな。思いを馳せながら、にゃんこは次の晴…

20110918 --436

黒白にゃんこは堤防の上。夏みたいな陽気の空の下。雨から一転お日様さんさん。だけど明日のお天気はまたもや怪しいようだから、せっせせっせと距離稼ぐ。にゃんこの横を車が抜いていく。中から男の子が手を振ってくれた。僕は尻尾をぶんぶんと振り返す。帰…

20110917 --435

黒白にゃんこは箱の中。道路脇に積まれている瓦礫の上。雨まだ止まず、しばらく足止め。きっともう少し。僕の家まであと少し。この辺も多分僕が知ってる街。だけどあれからあちこちに瓦礫があって何かが腐った匂いが風に乗る。これでも片づいたほうらしいけ…

20110917 --434

黒白にゃんこはベランダの隅。雨粒叩く庇の下。ぽんぽん。かんっ。ぽんぽん。かんっ。あとからあとから降る雨が、雨樋伝ってバケツに当たる。強く弱く、早く遅く、リズミカル。暗いお空を見上げつつ、にゃんこは小さく鳴いてみる。もうすぐ帰るよ僕の家。待…

20110915 --433

黒白にゃんこは堤防の上。ざざんざざんと海のそば。聞き覚えのある波の音。あの日はこんなじゃなかったけれど、今はいつもの波の音。この音がするって事は、僕のおうちはすぐ近く。少し急いで歩き出す。どうやら明日から雨のよう、濡れるとさすがに寒いから…

20111914 --432

黒白にゃんこは塀の上。どこかの出窓の斜め下。窓の向こうに白にゃんこ、威嚇もせずにこっちを見てる。こんばんは、星がきれいですね。僕は家に帰るところです。聞こえているかはわからないけど、ちゃーんと挨拶しなくちゃね。返事のように一声。ありがとう…

20110914 --429

黒白にゃんこは橋の上。迷わず歩く十六夜の下。昼は暑くて歩けない。そういや誰か撫でながら、暦の上ではもう秋だけど日差しはまだまだ夏だわねってため息混じりに呟いた。風が吹いたらそれなりに涼しさ感じられるけど、今年の残暑は居座るよと流れる雲が歌…

20110912 --425

黒白にゃんこは屋根の上。ぷかぷかまん丸月の下。ねえねえお願い満月さん。月を見上げてにゃんこは祈る。照らしておくれ満月さん。大好きなあの人に、僕はここだと知らせる為に。教えておくれ満月さん。僕が住んでた家までの道を。眩しいくらいの月明かり、…

20110912 --423

黒白にゃんこは道の上。鐘鳴り響く教会の前。オルガンの音色、鐘に重なり、人の歌声その上に。楽しい歌ではないけれど、悲しそうな声だけど、にゃんこは綺麗と耳澄ます。今日は街中いろんな所で聞こえてる。願いのような祈りのような。にゃんこも一声、大好…

20110910 --422

黒白にゃんこは土の上。大きなケヤキの枝の下。お日様かんかん道路はあちち。だから日陰でまぁるくなって涼しくなるまで夢の中。時々うにゃうにゃ尻尾はパタパタ。鼻とおひげがピクピク動く。美味しかったあのご飯、優しく撫でてくれたあの子供、にゃんこの…

20110910 --420

黒白にゃんこは歩道橋の上。たったか歩く雲の下。くらーい雲は雨の予告。もうすぐしとしと降り出すよ。ざんざか降ってくる前に、どこかに早く潜らなきゃ。じめじめ空気はおひげの天敵、何度も何度も直すけど、必ず一本くるんと回る。そろそろ雨のあの匂い。…

20110908 --419

黒白にゃんこは道の上。時々瞬く街灯の下。あれからいっぱい歩いたよ。けれどおうちがわからない。あちこち探してみたけれど匂いも音も違ってる。ご飯をくれた人がいた。居心地悪くなかったけれど、やっぱりおうちに帰りたい。さよならごめんね優しい人。お…