"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

20141025 --772

わたしは月に祈る。その光が照らす先にいるはずの貴方が、道に迷うことのないように、と。運命という重い足枷によりこの夜の底から動けないわたしの許に、鎖を断ち切る剣を携えた貴方が、無事に辿り着けますように、と。わたしは月に願う。それがすべての、終焉を告げるように、と。 #twnovel

posted at 13:21:00

20140623 --771

獲物に向かって急降下する妖鳥に横殴りの突風が襲いかかる。いや、実際には風など吹いていなかった。そう感じさせる何かが起きたのだ。驚いた妖鳥は体勢を整えようと羽ばたいた──羽ばたこうとした。軽過ぎる手応えに周囲を見渡す。なんと右翼が付け根から失われているではないか。 #twnovel

posted at 03:50:54

20140615 --770

彼らのはるか頭上で妖鳥は緩やかな弧を描く。豪雨や雷鳴もむしろ自らを引き立てる演出と思っていそうな、優雅ささえ見出せる飛び方だ。人間二人と馬二頭、その気になればひと呑みで終わる。あとは気分とタイミングの一致を待つだけだった。そして、その「時」は案外早くやってきた。 #twnovel

posted at 05:49:58

20140610 --769

緋岩街道上空に立ちこめる暗雲は彼らの上に容赦なく雨を叩きつけた。轟く雷鳴にかぶさるように、何某か、生き物の鳴き声が耳に届く。空腹が過ぎると山をも飲み込むと言われている伝説の、隊商も遭遇したら運の悪さを呪うしかないといわれる巨大な妖鳥が近づいているに違いなかった。 #twnovel
posted at 01:58:24

20140607 --768

かの者は過去を糧に立つという。己がこれまで歩んできた枝に咲く花、実る何某を確かめ自信へと変える。たとえば、人は高く跳ぼうとする時、自然踏み込みを深くする。それと同じように、より強く立つ為に深く過去を浚う必要が(それが多大な痛みを伴なうとしても)、恐らくあるのだ。 #twnovel
posted at 02:22:02

20140604 --767

注連縄の手前で術師は忌々しそうにそれを見上げた。『向こう側』では封印札を全身に貼られた者が、壁に四肢を打ちつけられている。「何か用かね」壁の者は自身の状況など全く気にしていないといった風情で、いっそ楽しげに訊いてきた。「適応者──生贄でも、見つけてきたのかね?」 #twnovel
posted at 03:24:23

20140517 --766

『緋岩は彼岸と悲願に通ず』。街道手前にある街での、古老の語りを思い出す。この街道では魔物の襲撃によって死ぬ者が多く、金がなくて隊商に入れぬ単独または少人数での移動を余儀なくされる者らは生還の悲願を胸に街道を走らねばならない。これはそれを由来に生まれた言葉らしい。 #twnovel
posted at 04:13:19