"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

2009-10-29から1日間の記事一覧

20091029 --100

馬鹿な。アレが神の祝福なものか。作ったモノが意にそぐわぬからと、その力を奪った挙句人間に魂を封じ込めやがった。ヴェンテーラなど、かわいそうに、魂を2つに裂かれた上でだぞ。この世界を創った狂ったヤツの行為が、神聖なる《創世記》として伝えられて…

20091029 --99

神様が去った世界で、人間達はよく信仰し、教えをよく守り、力を合わせて生きていきました。別の世界から攻めてきた魔物妖物とは《四神竜の血に連なる者》を中心に戦って追い返しもしました。幾多の困難を乗り越えつつ、人間はついに世界で一番幸福で繁栄し…

20091029 --98

神様は帰ります。神様が生まれた原始世界に。そこは個が融け全になる、謂わば存在自体がひとつの世界。稀にある外部からの刺激によって飛び出した泡が神様になる、孤独であって孤独ではない場所。今融けた神様の経験は世界に蓄積され、原始大綱に何らかの変…

20091029 --97

神様が去っても世界が闇に包まれぬよう、昼に太陽を、夜に月を作りました。更に四神竜の力を4つの大きな石柱に宿して世界の要に据え、その力を引き出せる人間を《四神竜の血に連なる者》としました。そして神様は言いました。「幾久しい幸福と繁栄があなた達…

20091029 --96

当初の目的から離れてしまって残念に思いましたが、神様は人間も四神竜も咎めませんでした。作ったものが創造主の意を超える経験など滅多に得られないからです。そう、残念に思う以上に嬉しかったのです。神様は、世界を四神竜と人間達に託し、元いた世界に…

20091029 --95

人間はもう、ただ神様だけを慕い愛すことはしなくなりました。信仰厚き善き者達ではありましたが、人間同士で愛し合い、語り合い、生きるようになりました。それは人間が「自由」を手に入れたからです。神様は思いました。「どうしてだろう。独りの時より、…

20091029 --94

月を見ていた。耳にかかる熱い吐息も、普段なら嫌悪する太い指の感触も、どうでも良かった。見上げた窓に浮かぶ月の蒼さが気になって仕方がない。何一つ反応しない事に苛立つ男が余計激しくしてきても気にならない。興を殺がれた男がその場から立ち去っても…

20091029 --93

おはよう。おはよう。今日も張り切っていきましょう。ビジネス街の往来で、彼女は道行く人に声をかける。おはよう。おはよう。そこのあなた、今日は車に気をつけて。あなたは電車に気をつけて。おはよう。おはよう。未知行く人に天使は声をかける。今日も張…

20091029 --92

戦場に雨が降る。壮絶な戦いの果ての、見渡す限りの死屍累々。折れた旗。地面に突き刺さったままの刀。力尽きた馬。先刻まで聞こえていた怒号も、今はない。攻め手も守り手も壊滅状態に陥り、生き残った者は死者を連れ帰ることもできずに撤退した。そんな戦…

20091029 --91

幸せそうな一家の傍に猫がいた。路地裏で寒さに震えるストリートチルドレンの傍に猫がいた。恋人達の甘い語らいの傍に猫がいた。別れに咽び泣く女の傍に猫がいた。乳母車を押す優しげな母の傍に猫がいた。葬列の傍に猫がいた。あなたの傍に猫がいた。わたし…

20091028 --90

ざっざっ。荒野を貫く一本の道を、列を成して軍隊が往く。黒い軍帽、黒い軍服を着込み、黒い軍靴の音も高らかに、往く。肩に銃をかけ、手足振り上げる角度も揃え、往く。誰もが無言、誰もが無表情、足許に咲く花に目もくれず、往く。東方で恐れられた死神軍…