"twinovels" di senzaluna

自分が書いたtwnovelなどのまとめ

亡国と復国

20110722 --405

固唾を呑んで見守る群衆を見渡す。「今はただひたすら喜びましょう。これまでの歩みとこれからの希望を、細胞の一片にまで、それこそDNAに深く刻みつける勢いで。今日という日を決して忘れない為にも」一息、間をあけた。腹の底から声を出す。「ここに、──の…

20110722 --404

「……戦いは終わりました。最早我々を迫害しようとする者はいません。本来の、まさしく我々が造られた目的に、随分と遠回りした感はありますが、やっと辿り着きました。決めなければならないことがたくさんあります。やらなければならないことも、たくさんあ…

20110722 --403

銃を構えた青年が言う。「我々は、ただ、何者にも怯えずに幸せに暮らせる国が欲しいだけだ」銃口を向けられながら、所長は苦笑した。「まさか廃棄したはずの、システムが無効化された第3世代が死なずにいたとはな。久し振りだな、プロトタイプC。……いや、ヒ…

20110722 --402

「クローンが武装解除に応じない場合はアレを使え」「所長、しかしアレは反乱分子だけでなく他のクローンにも影響が」「構わん、見せしめも兼ねる。予見されていたクローン反乱の為に仕込んだのだ。奴らのDNAにイザナミシステムを。そう、君の発案でな」「確…

20110721 --401

「総理、クローン特区総督府から面談要請がありました」「大方こないだ出た独立議案についてだろ。クローンのみの国など到底認められるものではない。多忙だの何だの理由をつけてはぐらかせ」「しかし、元々クローンによる復国構想から作られた特区ではあり…

20110721 --400

目が覚めたかい? プロトタイプB。今日から君を『イザナミ』と呼ぶことにしたよ。うん、君と読んだあの創世神話に出てきた名前だね。パートナーのAは既に起きている。彼にも名前をつけてあげたんだ。君の名前がイザナミだから、言わずともわかるとは思うけど…

20110721 --399

やあ、おはよう。プロトタイプA。わたしは今日から君を『イザナギ』と呼ぶことにしよう。もう既に失われて久しいあの島国の創世神話に出てくる神様の名前だ。こないだ見た文献に書かれていたんだ。これから国を作っていく君に相応しい名前だと思ってね。よろ…

20110721 --398

廃墟と思われていた研究所に、恐らく運用されていた時と変わらぬ状態で保管されている大量の細胞片。資料によればこの細胞片は全て、滅びたとされる純血種の物だという。「教授、これだけの数と種類の細胞があれば、あるいは」「クローンによる国の復活を考…

20110721 --397

「そっちに逃げたぞ!」「早く捕まえろ! 純血種は高値で売れるんだ!」「こないだ捕まえたのは50億円で研究所が買ったらしいな」「ああ。報酬貰った奴はその金持って海外に行っちまった」「羨ましいぜ。早く俺もこの国から逃げてえ」「いたぞ。麻酔銃寄こせ…

20110721 --396

「うわ、お前、純血種かよ!? 移民奨励法が発効されたあと、子供を増やして国を残す為だからって移民と結婚するのほとんど義務だったらしいじゃん。なのにお前の両親、原住って。よく今まで非国民呼ばわりされなかったな……」政府の移民奨励から40年後の、あ…

20110721 --395

「超々々高齢化社会からの脱却策を多々打って参りましたが、多数の有識者が出した研究結果によれば、残念ながら数年後この国の出生率は0%となります」首相が苦々しい顔で演説する。国民の平均年齢が49歳。もはや単一民族で国を維持するのは不可能とされ、移…